buttonBloodest Saxophone
@ Shibuya O-Crest (5th Nov '05)

なんともな甘味処
Bloodest Saxophone
 『Blood-est!』、『Back Drop Swing』に続く3rdアルバム『Sweetest Music』リリースに伴うツアーのファイナル。だんだん柔らかく、優しくなってくるアルバムタイトルに安心してはいけない。矢継ぎ早に繰り出されるホーンのうねりが切迫し、自然と半開きとなった口には、シャープな甘味が飛び込んでくる。大舞台では、必ずと言っていいほどスーツで登場する彼ら。今回もそうだった。知る人ぞ知る自主企画イベント『Snuck宇宙』で着るツナギとはまた別の威圧感がある。でも、簡単に変われるもんじゃあないだろう、人ってのは。そんなこんなでざわついてる時に発せられた「今夜は二部構成です」の言葉。ほらきた、きっと何かあるぞ。

Bloodest Saxophone  リズム隊が不良大人の色香を付け、車のノッキングにも似た、予想だにしないタイミングで音を転がすホーンが面白い"Bophiology"は、大人しいフロアを追い立てるには十分。ノッてきたところですかさず、"Swingin' In The Kitchen"へと繋ぐ。キッチンでスウィングするって発想が、何ともブラサキらしい。 メンバー全員の興味の矛先「スウィング」と甲田"ヤングコーン"伸太郎の趣味「料理」がうまい具合にブレンドされている。もちろん、旧き良きジャズというダシもばっちり効きている。

 ブラサキの場合、大抵近い距離でライブを見ることが出来る。複雑なサックスが操られたときに発する「カコン、カコン」と響く音も聞こえる。それは"CHASER"で、マニュアルのギアチェンジに聞こえたりもする。ギターのカッティングは流れていく白い破線(センターライン)のようで、サックス2台は先っちょの朝顔管から排気をまき散らしてカーチェイスを繰り広げていた。ともかく、ヴォーカルというガイドラインがほとんどないにも関わらず、タイトルと楽曲を照らし合わせてみると、不思議なほど納得してしまうのがブラサキ。本当に面白い。

Bloodest Saxophone  ワルツのリズム(3拍子)をベースとした"Chelsea 10 A.M.(日曜のチェルシー)"でしっぽりまったりベルベットにくるまれた後は、"あの娘はイデオロギー"でストリップ小屋の情景を映し出し、今年のフジでみた Big Willie's Burlesqueへと、ほんの一瞬だけ意識が飛んだ。じんわりと熱くなったところで、社交ダンスにピッタリなラテンのリズムへとリレー。"Tonos & Himeros"…スペイン語? イメージからして「殿と姫」をもじった和製外来語だろうか。彼らなら、それもあり得るか。

 "Back Drop Swing"をかました後、噂のブレイクタイムがとうとう来てしまった。どうやらブラサキの傾向を知っているお客さんは対策もしっかりできているようで、アルコールを注文し、受け取ったらばすぐさまフロアへと舞い戻る。案の定ステージには何かをたくらむユキサマがいる。メモ帳らしきものを睨みつけ、優しげな口調で淡々と、淡々と…

Bloodest Saxophone 「……遅い車は登坂車線__体言止め。
   止まれ__命令形。
   二輪__名詞。
   カーブ多し__終止形。
   P(ピー)__アルファベット。
   80(はちじゅう)__数字………」

 あぁ、何言ってんだろう、この人は。僕も凡人なりに考えてみた。おそらく、おそらくだ、今回のツアーにおいて、移動中の車内から標識を眺め、思いつくままに一言コメントを付け加えていったのだろう。単調なリズムは、東京五輪マラソンの銅メダリスト・円谷幸吉の遺書「美味しゅうございました」にも似ているが、戦慄が走る円谷の詩とは真逆で、真面目に読みふける姿と詩のギャップがおかしな方向に作用し、面白い。面白すぎる!

 和んだところで、第二部の幕開けだ。フロアには先ほどの余韻が残っているのに、ブラサキはポーカーフェイスだった。当のユキサマもそしらぬ顔でバリトンサックスを吹いていた。"Jump To A Swallow"では、トロンボーンをミュートしたり、スキャットを織り交ぜたりして、テクニックの宝庫だったが、それよりもトロンボーンの先から、煙が出ていたのが驚きだった。コウが息とともに吹き込んだ唾液は、3つのストレートと2つのヘアピンカーブを抜ける間、ずっと微振動にさらされて、ラッパの先に到達するころには煙となって舞い上がっていた。そんなの見たことないだろって!

Bloodest Saxophone  偉大な先人(ジャズ界では巨人と呼ぶらしい)をリスペクトしカバーするのは、ライブ毎の恒例行事。今回は"Moody's Mood"だった。この曲を誰よりも愛しているコウがマイクをとり、ゲストヴォーカルの川又麗美を迎えたスペシャルバージョンで展開された。細くしなやかな川又のヴォーカルは気持ちよく伸び、コウが太い声でそれに応えていく。バックでメロディを生むこと自体がエスコートとなっていて、スーツもポマードもグラサンもスキンヘッドもキラリと光っていた。アイツにばっかりいいかっこさせられねぇ、と"Moody's Mood"を打ち消すかのように続いた"Talk of The 52nd"では、いつもの女房役である甲田が歌い、ユキサマまで参戦して、パ行の破裂音を一心不乱に唱えていた。

Bloodest Saxophone  用心棒たちが無事にステージ脇へ川又を送り届けた後は、馴染みのナンバーで畳み掛けに入った。"Unexpectedly Morocco(以外とモロッコ)"ではラテンのスパイシーな香りを振りまき、"暗がりでツイスト"のギターは"C'mon Everybody"に似たコード進行で、毎回ニヤリ。一度でいいから「キャロルは好きですか?」などと聞いてみたいものである。深い時間になったらいつもの流れ "愛、そして英雄伝説"でくぼみへと落とされて、"Pork Chop Chip"で再び狂騒に引き戻される。わかっていても、まんまと踊らされる…いったい何回目だろうか?

 アンコールは、コウが歌う、石原裕次郎の"夜霧よ今夜もありがとう"(フランス語)だった。バリトンサックスとウッドベースの低音は船の汽笛のように響き、ハイハットとスネアはブラッシュスティックのおかげでサワサワと鳴っていた。"りんご追分"がスカならば、"夜霧〜"はジャズである、と言わんばかりのハマりようだった。

■Set List(原文のまま)

1. Bophiology(バフィオロジー) / 2. Swingin' In The Kitchen / 3. Spin Around / 4. CHASER / 5. Chelsea 10 A.M / 6. あの娘はイデオロギー / 7. Tonos & Himeros / 8. Back Drop Swing

〜ブレイクタイム ユキサマショータイム

9. In Walked BUD. / 10. Hee-Jah Burger / 11. Jump To A Swallow / 12. Hiasobi / 13. Moodies' Mood / 14. Talk of The 52nd. / 15. Unexpectedly Morocco(以外とモロッコ) / 16. 暗がりでツイスト / 17. 愛、そして英雄伝説 / 18. Pork Chop Chip

ENCORE
1. 夜霧よ今夜もありがとう / 2. Bop Corn
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