buttonAstro B @ Yotsuya Live Gate (9th Oct '05)

許されたノスタルジー


Astro B
 お客さんたちを踊らせ、笑わせながら、ちょっと考えさせられるステージ。明るく楽しいだけじゃなくて、その裏にあるメッセージを読もうと思えば読める、でも単純に楽しめる、というのが優れた表現だと思うのだ。さまざまなパロディの積み重ねによるASTORO-Bのステージは、まさにそんな表現を楽しめる。

Astro B まず、電子音と共にドラムとキーボードが演奏を始め、忍者ボーイとJUDO-MANが空手の型のような踊りをして、そこにキヨミ・カークラッシュが元気に現れる。そして"FUTURE ROCK"へ。スクリーンには、アポロ11号などの月や宇宙の画像が次々と映し出される。つまりアメリカの宇宙開発の映像をバックにセックス・ピストルズ風に「ノーフューチャー」と歌われるわけで、20年後か30年後には宇宙で生活できると思われた輝かしい時代はとうに失われてしまったのだ、ということをデジタルなサウンドの洪水の中で感じさせるのだけれど、フロア前方のお客さんたちは楽しそうに踊っているわけで、アイロニーとエンターテイメントのブレンド具合が絶妙なのである。この曲はプロフェッサーサムによるヤマハキーボードのKX5かな?ショルダーキーボードを、忍者ボーイに抱えられながらソロを弾くところが見所でもある。

 ライヴ中盤には、カリスマ坊主ラマ様が登場して、ジーザス・ホリエサン、プロフェッサー・サムの3人でGS風の"恋の般若心経"、続いてソウル風の"般若ソウル"。この曲は「ゲラッパ!」とか「セックスマシーン」とかの合いの手を般若心経の合間に挿入する。そして、フォーク調の"般若だったね"は、日本の60年代フォークをパロディにしたもの「緊急動議」「異議なし」などのやり取りのバックには安保闘争の映像が映っている。すごいのは、この3曲とも般若心経の抜粋で歌詞は、途中で挟まる言葉を除けば、ほとんど同じなのだ。それをこのライヴの最後にやった"般若ボッサ"とあわせて、同じ歌詞のものをこんなにバラエティに富んだものにしている。そのうち般若メタルとかもできそうである。

Astro B "タイムスリップ岡本太郎"のイントロでは、VJも含めメンバー全員が集まり、ジーザス・ホリエサンを中心にダ・ヴィンチの『最後の晩餐』のパロディをやり、そこからポール・マッカートニー&ウイングスの『バンド・オン・ザ・ラン』、そして、マッドネスが出演したホンダの車のCMへ、一連のパロディ攻撃をおこなう。曲の方は、1970年の大阪万博『太陽の塔』で頂点となる、日本の高度成長時代岡本太郎の爆発する芸術に捧げられたもの。歌詞に岡本太郎先生のお言葉が引用されたり、60年代のキーワードが散りばめられている。"君はウルトラC"は、YMOやその周辺の曲をパッチワークのようにつなぎ合わせたような、YMOへのパロディをリスペクトとエンターテイメントまでに高めたものだ。

 そして"SAMURAI TRANCE"で、本来のASTORO-Bのサウンドに戻り、ハードでデジタルな音をバックに、オリエンタルな風味も味わい、アンダーワールドの"born slippy"を思わせるイントロの"TECHNO MANIAC COWBOY"、そして"YOGA DISCO"では、ラマ様と忍者ボーイがフロアに降りていって、文字通りフロアを熱狂の渦に巻き込んだ。そして、"般若ボッサ"をラマ様が歌いながらの撤収だった。

 昭和へのノスタルジー、それはすでに追体験でしかなかった60年代とリアルタイム世代だった80年代という両方のノスタルジーが混ざり合っている。かつて夢が見れた時代を懐かしみ、でも、今、夢が見れないのであれば、それらしいものを無理やりでも見てしまえ、それがどんなものでも、まずは楽しくあればそれでいい。

-- set list --
INTRO〜FUTURE ROCK / SPACE CAT / WELCOME TO ASTRO-B / 恋の般若心経 / 般若ソウル / 般若だったね / タイムスリップ岡本太郎 / 君はウルトラC / SAMURAI TRANCE / TECHNO MANIAC COWBOY / YOGA DISCO / 般若ボッサ

Astro B

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button2005

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buttonデジタルな昭和 : アストロ B (25th Sept @ 東高円寺UFOクラブ)
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button身も音もシャープに : ザ・キャプテンズ (16th Sept @ 渋谷Oウェスト)
buttonノスタルジーでなく、現実として : ザ・ラーズ (14th Aug @ 幕張メッセ / 15th Aug @ 渋谷AX)
button『ONE FOR THE ROAD』上映会 / 弾き語りで2時間以上歌いまくり : グレン・ティルブルック (7th Aug @ 吉祥寺スター・パインズ・カフェ)
button速報 : グレン・ティルブルック (7th Aug @ 吉祥寺スター・パインズ・カフェ)
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buttonCD review : The Incomplete Glenn Tilbrook : ポップ職人 : グレン・ティルブルック (22nd Jul)
buttonForever Changes : 新宿フォーク (8th Jul @ 渋谷PLUG)
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buttonそして千葉 : 東京ピンサロックス,キャプテンズ (10th Jun @ 千葉ルック)
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buttonダンスフロアで昇りつめろ! : BOOM BOOM SATELLITES (19th May @ Ebisu Liquid Room)
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buttonいつまでもいつまでも : The Captains (10th May @ Shibuya 0-West)
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