String Cheese Incident @ Shibuya AX (28th Sep.'05)
空気を作り出すバンド(とお客さんたち)
仕事のため約30分遅れで渋谷AXに着いたら、ロビーはビールを買うための長蛇の列、演奏は始まっていて、満員のフロアはすでに温まっていた。大勢が体を揺らし腕を挙げて叫んでいる。お客さんたちで目立つのは、レイヴとかフジロックのフィールド・オブ・ヘヴンの住人のような服装をしている人たちだ。オーガニックでエスニックな感じのファッションである。といっても、会社帰りの人も多い。年齢はバラバラで若いやつが多かったけど、あんまり偏りがなく、敷居が低いのだ。それにしても、出入り口にいると、ひっきりなしにビールを求めてロビーに出ていく人、カップを2〜3個手にして入ってくる人たちが行き交う。多分、日本で最も一人当たりのビールの消費量が多いライヴだろう。PAのブースの隣りには録音OKのため何本もマイクスタンドが立ち並ぶ。この辺もジャム系バンドによくある光景だ。
カントリーをベースにファンクを経由してカリブ海を通ってブラジルに至るような音楽が混ぜ合わさり、派手さはないけど、適確な演奏とハーモニーで心地よく踊らせているのである。お客さんの中には演奏そっちのけでロビーで飲むことばかりを考えているような人もいて、会場全体にゆるい空気が流れている。といっても前回の来日ツアーと比べれば、そのゆるさが薄まり、音楽に向き合っている人が多いように思えた。
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ところで最新作『One Step Closer』の日本盤のボーナスCDについている2004年のボナルー・ミュージック・フェスティバルでのライヴを本編そっちのけで聴きまくっているのだが、やっぱりこのバンドはライヴはすごい。彼らはどこでもこういうライヴを繰り広げられているのかと感心してしまう。この日、アンコールを要求する盛り上がりを見ていると、このような空気を作り出せるバンドとお客さんの関係が何よりも素晴らしい。ライヴはバンドだけでも、お客さんだけでも成り立たず、その関係そのものがどうかということなんだなと改めて思う。バンドをやっている人はこのライヴを観て勉強して欲しい。アンコールが終って、客電が点いても猛烈な拍手はなかなか終らなかった。。 |
ライヴは1部と2部に分かれていて、1部が終わり、20分のインターバルを置いて、第2部は"Desrt Dowan"から始まる。間奏で延々と続くインプロビゼーションでは、ドラムのMichael Travisがテクノ風にバスドラを4つ打ちにして、パーカッションのJason Hannがサンプラーを叩きエレクトロな音を出すと、それはほとんどテクノのようだった。盛り上がったお客さんは、様々な色のルミカを宙にバラ撒いたり、大きな風船を飛ばしている。そしてテーマに戻ったときの歓声の大きさ! "Joyful Sound"での歓声もすごかったし、ドラムとパーカッションのソロ合戦もすごかった。普通、打楽器のソロなんて休憩時間になりそうなものなのに、そうならなかったのは、サンバのように打ち鳴らされたリズムで多く人たちが踊っていたからで、このバンドは基本に「踊ること」がある。それはバンドがお客さんとのつながりを重視していることに他ならない。独りよがりなテクニックを見せびらかすでもなく、カリスマ性をもって「俺の音楽を聴け」でもなく、ライヴの場で作り出す空気を大事にするというバンドの姿勢から、このような盛り上がりになったのだろう。
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report by nob and photos by nachi
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