button二階堂和美 + 渋谷毅、外山明
@ 吉祥寺スターパインズ・カフェ (18th Sep '05)

その日は近い

二階堂和美
 幼少の記憶にかかったカーテンをブワッと開ける快感、それはオトナだけが楽しめる遊びのひとつじゃないだろうか。知識と体験を積む報酬にしてはささやかな気もするが、そもそも報酬を得るために体験を重ねているわけではないから、ボーナスのような楽しみだと思えばそれは増して愛おしくなる。

二階堂和美 そんな体験は挙げ出したらきりがないけど、音楽に関して言えば、歌でもリズムでもメロディでも「ちっちゃいころ聴いたことがある!」と興奮状態に入ることが多々ある。最近では笠置シヅ子の"買物ブギー"を聴いた瞬間がそれに当たり、『わてほんまによう言わんわ』のフレーズにどれだけ鳥肌が立ったことか! ボクは今いつどこでそれを耳にしたのか記憶を探っている最中。その道すがら知識の副産物まで拾い上げてしまい、音楽の楽しさを存分に謳歌しているところだ。そして、そんな出会いのきっかけになったひとが今回紹介する二階堂和美というシンガーソングライター。この場を借りて彼女には「ありがとう」と言っておきますね。

 二階堂さんが笠置シヅ子さんのことを好きなのはどっかのインタヴューで読んでいたので「ヨシ! 聴いてみよう」となるのは早かったけど、"アイレ可愛や"が笠置さんの曲だったとは。二階堂和美のライヴで聴いたこの曲は、南方の島々を思わせるメロディが美しい幸せそうな歌で、本人の曲じゃないと直感で分かったものの、同時に彼女らしい歌だとも感じていた。それは、幸せを運んでくるような歌、感情剥き出しにして歌われる歌、それこそ彼女の歌が持つ魅力そのものだとボクは思うからだ。

二階堂和美  9月18日、吉祥寺スターパインズ・カフェで行われた彼女のライヴは、渋さ知らズオーケストラなどにも参加するピアニスト渋谷毅さんを中心に展開された『月下楽遊』というオールナイト・ジャズ・イヴェントの中のひとつ。これは『横浜プロムナード』のゲーテ座というところで渋谷さんがプロデュースしてきたイヴェント(今はやっていないらしい)をごっそり吉祥寺にもってきたものらしく、小川美潮さんや金子マリさんなど素晴らしい歌い手さんや、古澤良治郎さんのような愉快なおじさん(おじいさん?)まで出演する非常に楽しい企画でした。

 こうやっていろんな音楽に触れることができるのも二階堂さんがジャンルレスに活動しているからこそというもので、ECDやイルリメなどヒップホップのアーティスト、サケロックや赤犬などアホウで楽しいアーティスト、ズイノシンやあふりらんぽなど関西のアーティスト、etc... 交流の幅が広くて本当に驚く。それも彼女の声が持つエネルギーあってのことで、ふわふわした存在感もまた人懐っこさを感じさせる。そして今回はジャズのアーティストと共演。ピアニストの渋谷毅さんとドラマーの外山明さん、そうそうたる感じですがどうなることやら。ワクワクして出番を待った。

 現れた彼女の服装は、黒のスッとしたワンピースにワンポイントで赤い花の髪飾り。ここ最近行ったライヴのなかでも年齢層がグッと高い印象のあったオーディエンスのなか、彼女の姿はひとり少女のようで目立つ。彼女のことを知るひとはほとんどいないはずが、歌の始まりに呼応して観客の視線は途端に釘付け状態。えぐり出されるような声はひとの感覚にピリピリくるのだね、やはり。  あとオモシロかったのが、渋谷さんも外山さんも立って演奏してるから、おとなしい曲でも3人そろって立ちながら演奏している点。変なの〜と思いながらも演奏するふたりの彼女に向かう視線とまっすぐ前を向いて歌う二階堂さんの凛とした姿は壮観で、ソロの演奏とは違った緊張感が漂う。ジャズ・シンガーのようだ!
ドラびでお
 ものスゴい勢いで捲し立てる"今日を問うpart2"はイルリメの"今日を問う"を二階堂和美風に変換したものだと思うのだけど、この曲を聴くたび彼女が持つ表現力の力強さを痛感する。彼女を紹介するときはこの曲から聴いてもらおうかと思っているくらいインパクトがあり、力強く繊細な歌。最後、"買物ブギー"の二階堂和美バージョン(?)"ショッピン・ブル"で観客の拍手喝采を浴び、豊かなライヴは幕を閉じた。ソロのときに比べてステージをいっぱいに使った奔放な感じはなかったけど、上品な今日のライヴもとても楽しいもの。万華鏡のような彼女のライヴに飽きがくることは当分なさそう。

 冒頭に挙げた笠置シヅ子さんであったり、最近チェックして大いにビビった弘田三枝子さん(アルバム『日本民謡を唱う』と『スタンダードを唱う』は激ヤバ)であったり、二階堂和美に入れ込んでいくたび勝手に出会う音楽がコレほんとに凄い。しかし、リアルタイムで見ているだけあってボクにとっては他のどんなシンガーより彼女の活き活きした音楽が一番良い。

 若い世代で言っても今いちばんの歌い手は二階堂和美ですよ。もっと知られるようになったら、近い将来「記憶の引き金を引いたのは二階堂和美の曲だった」なんてことが起こるかも知れませんね。

二階堂和美
【セットリスト】

1. いてもたってもいられないわ / 2. あの子のあの頃 / 3. いくつもの花 / 4. 今日を問うpart2 / 5. レールのその向こう / 6. ショッピン・ブル
report and photos by toddy

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