buttonKemuri 10th Anniversary Event in Ebisu 3Days
feat. Kemuri, Cool wise men, King Django
@ Ebis MILK (18th Sep '05)

煙って10年「バースデイ」
Kemuri
 恵比寿みるくに列をなしたオーディエンスの腕には東京公演のチケット代わりとなったリストバンドが巻かれていて、リピーターもワンサカ。しかも同日行なわれた"Positive Mental Crew"で生まれた熱気をひきずって現れたハシゴ者もいて、スタート地点はかなり上がり気味。どうにも平静じゃいられないパーティーが幕を開ければ、夜明けはあっという間さ。

Cool wise men  まず、クール・ワイズ・メン。肩慣らしのダビーな展開で、これから再度煙ろうとしているキッズの酩訂度をやんわり上げる(と言ってもティーンではない)。一見若手に見えるが、結成は1993年とキャリアは十分。ジャマイカのありとあらゆる音を基本にしながらも、その裏側にやんわりとキューバやプエルトリコあたりのメロディを取り込み、残暑と熱気でむせ返るフロアをかき混ぜていく。浜田光風(Tp.)がダブ以降のDJ(ヒップホップで言うところのMC)スタイルを組み込んだ節回しを用いたり、リヴァーヴをかけたりで、境目のない音を担当しつつも、他のメンバーはカッティングなどで音を切っていく。
 中盤、違う曲をいっぺんに奏でてしまい、ストップする場面もあったが、それはどうやらセットリストを作らずに、その場で曲順を決めていたことが原因で、メンバーが曲名を聞き違えたらしい。まぁ、なんともクラブらしい力の抜け方じゃないか。

King Django  お次はキング・ジャンゴ。ウクレレをもったジャンゴはボヘミアンな衣装で、およそスカやレゲエとはほど遠い。メンバーの見た目は海外のフェスに集まるお客さんといった感じだ。持ち寄る楽器もフリースタイルまっしぐらで、スカやレゲエをやるからホーンがあって…という先入観をあっけなく破壊する。ホーンはジャンゴが傍らに置いたトロンボーンのみであり、数回しか使わない。手数の多さを感じさせるテクニックは、たとえ聞いたことがなくても巻き込んでいってしまう。ロンドンスカリバイバルとも、西海岸ロングビーチのパンクシーンとつながった感じでもない、人種の坩堝NYCで熟成されたスカやレゲエは、ジャムに通じるインプロの手法までもを吸収して、独自に発達したようだ。ジャンゴは、主に笛やウクレレ、ピアニカを使って演奏し、歌い、聞き取りやすい日本語で話しかけるから、入り込みやすい。都会のまったり空間"飲み屋"の片隅で演奏するジャンゴの日常を、みるくで感じてしまった。

Kemuri  いよいよ煙る時が来た。『2001年宇宙の旅』やボブサップのテーマ曲としても有名な"ツァラトゥストラはかく語りき"が流れ、ステージ後方には『スターウォーズ』のオープニングみたいな流れる星の映像が映し出される。音の盛り上がりを待っている間にも、ケムリのアメリカツアー時をはじめとしたスナップ写真が飛び出して、先走るオーディエンスは何かしら叫んでいる。そのどれもが「いつでも来いよ」と臨戦態勢にあることを物語っている。3回訪れるヤマ場のホーンに合わせ「KEMURI」「HAPPY BIRTHDAY」「KEMURI 10th ANNIVERSARY」と大写しになると、さらにボルテージを増した「おぉー!」だの「ウキャァー!!」だの、文字にしにくい叫びが飛び交う。そりゃ興奮するだろう、いつもは__メンバーは高い位置にいて、柵(隔たり)があって、遠い__ホールなのだが、ここはクラブだ。距離は近いし、柵などありゃしない。クラブにしてはしっかりとしたステージだが、ケムリにかかれば振り返ることも困難な人口密集地域となり、丸ごとモッシュピットになってしまう。その気になればステージに登ることもできるわけだ。

Kemuri  フミオは、赤ん坊が泣きわめく時のように顔をくしゃくしゃにして言った。「2次会へようこそ」と。確かにライブは本日2本目だ。しかし、メンバーはこれが久しぶりのライブであるかのように暴れ回った。押さえきれないエネルギーはステージだけでは収まりきらずに、フロアへ、そしてエントランスへと流れ込んでいった。愛をわからせてくれた悲しみ("kanashimiyo")は、今となっては故・亮介氏に捧げる曲となって違った意味を持ち出しているし、アニバーサリーとなると、先のスライドショーにもあったように、ケムリの記憶を振り返る時でもある。それを象徴するかのように、彼が亡くなってからのケムリのロゴは様変わりした。KEMURIのUや、Tシャツの袖口にあるPMAの文字にはトランペットがデザインされるようになった。悲しみをアップテンポで突き抜けることによって、肯定的精神を体現しているケムリを前にすると「ちぎられるかも」と痛みを覚悟しながらモッシュピットでもまれ、こちらはバカみたいに「愛を、愛を!」とシンガロングしてしまうんだけども、ふとした瞬間に涙が込み上げそうになる。思いっきり10周年と打ち出しているから、そう思うのだろうか。 いや、違う。ケムリに起こった出来事を忘れないために、トランペットは存在している。

Kemuri  パンクのビートを乱暴に叩きだすドラムス、底辺からググッと突き上げるベース、素早いカッティングで切り刻むのがギター、速射砲となるのがホーン隊、そしてことあるごとに飛んではシャウトするヴォーカル。解りやすい衝動、理念が絶え間なく循環し、オーディエンスとぶつかって打ち解けていくプラス思考の究極がそこにはあった。飛ばなくても盛り上がるのに、フミオは反り返って飛ぶ。笑みを絶やさずに、オーディエンスに語りかけ、言葉をぶつけていく。エントランスでもスカンクし、階下のサブフロアでも思いのままに踊っている状況は凄いとしか言いようがない。全員が向こう見ずなおかげで、みるくはちょっとした宇宙船みるく号。同じ目標に向かってズンズン突き進む。本編最後の、まだ演ってねぇゾの"PMA"まで衰えない心拍数と狂乱はヤバさすら感じるほどだった。ポジティブ・メンタル・アティチュードの叫びは、これからもケムリ・チルドレンによって受け継がれていくはずだ。

 直後に起こったおめでとう10周年のコールは、自然とアンコール代わりの"happy birthday to you"大合唱となり、再びケムリを迎え入れることとなる。何をやるんだろうかと思っていたけど、てっきり忘れていたのよ『77days』に収録されているあの曲、"Birthday"!  やっぱりパーティバンドだわ、あんたら! 自らの曲であっても大合唱がわき起こるから自己完結にはならないし、オーディエンスの顔には「よくぞ!」の言葉が浮かんでいる。煙りはじめた10年前と変わらないスタンスで、さらに狼煙は高みへと登ってゆくのだ。

 DJである谷中敦(東京スカパラダイスオーケストラ)、高橋浩司(ex.ピールアウト)、taisei(SA)、とそうそうたる面子がそれぞれの言葉で祝辞を述べた。ジャンルは違えど、影響を与え合うライバルの言葉と、オーディエンスの叫びは、たまらないだろうなぁ。階下のチルアウトフロアでも、スタイルズのメンバーが中心となったセッションが行なわれ、ソファに沈んだり、ゆらゆらと揺られながら盛り上がりをみせる。それぞれがふかした煙は夜明けまで立ちのぼっていた。

Kemuri
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〜2004.9.21 Tokyo〜
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