button ドノヴァン・フランケンレイター
@ リキッドルーム恵比寿 (1st Sept. '05)

少しだけ味わうスローでフリーなスタイル


 まず最初にお断りを。日本の公式サイトでも書かれているように、彼の名前は正確には"ドナヴォン"。でも私も含め、日本の多くの人の間で彼の名前は"ドノヴァン"と認知されているので、ここでも"ドノヴァン"と呼ばせてもらうことにする。

 しばらく猛暑から解放された日が何日か続いていたのに、この日はまた真夏日復活。ドノヴァンは、また湘南あたりに波乗りに行ってるんだろうなんて、仕事中にアルバム『Donavon Frankenreiter』を聴きながら思った。彼が日本に来てから、太陽が照りつける暑い日が続いてる。晴れ男なのか、ドノヴァン。

 恵比寿のリキッドルーム内は、みるからに年季の入ったサーファーと思しき人、ジャム系バンドを愛聴しているような風貌の人が多く目についた。熱気というよりも、ビール片手にのんびりとした空気が漂っていた。ボナルーはこんなユルい雰囲気なのかなと、行ったこともないそのフェスを想像してみた。19時に、まさにそのボナルーにぴったりなかんじのTHE WHITE BUFFALOが登場。ドノヴァンの仲間というからには、ジャック・ジョンソンやG. Loveのようなスタイリッシュな人が来るのかと思いきや、出てきた彼はカントリーベア・ジャンボリー。大きな体に貫禄のヒゲ。ギター片手に歌うのは、砂埃やサボテンをイメージさせるカントリー・ミュージックに近いものだ。オフィシャル・サイトを覗いてみると、どうやら彼の音楽のベースになっているのが、ウェイロン・ジェニングスだったりするようだから、そのサウンドに納得。観客の少しずつ大きくなるおしゃべりの声や、酔った客の騒音にも微動だにせず、始終にこやかな笑顔を振りまいて45分ほどのステージを終えた。

 さて、いよいよフリーを地でいく男、ドノヴァンの登場。観客のアツイ歓迎モードとは対照的に、ずいぶんと落ち着いた雰囲気で静かにステージ中央に着席し、ギターを抱える。キーボード、ベース、ドラムのバンド編成だ。ライヴで聴く曲は、どれもCDよりも音が厚みを帯び、勢いがプラスされて、まるで違う曲のように聴こえる。CDに忠実じゃないのが、ライヴの醍醐味なんだけど。いやはや、一曲目の"Butterfly"から驚かされた。穏やかでアコギの絃がキュッキュと弾け、静かに波が打ち寄せる音が聞こえる、そんなユルユルな音を想像して行ったからだ。"Day Dream"も、曲調が微妙にアレンジされていて、ピアノのサウンドが前面に出てよりポップなサウンドになって、弾んだ調子に拍車がかかっていた。いいな、太陽の匂いを感じさせるこの曲。

 ドノヴァンの周りを囲むように構える、バンド・メンバーと一つ一つ呼吸を合わせ、アイコンタクトを取りながら、演奏は黙々と進められていく。"So Far Away"が終わった頃、ようやくドノヴァンは立ち上がり、観客に向って「カンパーイ!エヴリバティ、カンパーイ!」とカップを掲げた。それまで、まるで一人(とバンド)の世界の中に深く入り込んでいた彼の笑顔をようやく見ることができた。

 立ち上がってギターをかき鳴らすドノヴァンはとても気持ち良さそうだ。目を閉じながら、そしてなぜか口をパクパクさせながらプレイに没頭する。何を思いながら、何を見ながらそこでプレイしているんだろうと、ドノヴァンのイメージを覗き見たくなる。歌いながら、何を見てるんだろう。そのドノヴァンは、髪の毛は伸びて無造作(ボサボサ)、口の回りにしっかりヒゲを蓄え、アルバム・ジャケットのイメージからより野生的になっていた。ちょっとジム・モリソンみたい。サーフィンで鍛えられた身体には無駄な肉がついていない。ベルボトムのジーンズが良く似合う真っ直ぐ伸びた足、ハムストリングス(太ももですね)にはしっかりと筋肉。これもサーフィンの賜物だ。そしてよれたTシャツの左の肩は故意にかデザインなのか破れていて、肩のタトゥーがチラリと覗いていた。飾り立てている感じが一切ない。観客からしきりと飛ぶ「カッコイイー!」の声(しかも男性の声)。そう、寡黙で飾らない男はカッコイイのだ。"Byron Jam"の間奏でギターを一心不乱にかき鳴らす姿は、シビれるくらいに格好が様になってるし、無造作スタイルと超自然体が、またクールなのだ。

 ハスキー・ボイスはフラットに優しく、淡々と歌を紡いでいく。その歌声を聴いているとすごく心地よくなってくる。海を思わせるターコイズ色の照明で照らされたなか聴いたレゲエ調にアレンジされた"Bend In The Road"、彼の愛する息子への歌の"Call Me Papa"、愛するもの、感動したものを歌に込めるドノヴァンの曲は、温かさがジワジワと愛情がシミジミと伝わってきて、ほのぼのとした気分にさせてくれる。"Our Love"頃から盛り上がりも佳境に入ってきて、THE WHITE BUFFALOをステージに迎えての"Stay Young"は、ビーチサイドのパーティみたいだ。ビールを片手に歌うTHE WHITE BUFFALOとそれを見ながらプレイするドノヴァンは、本当に楽しそうだった。その盛り上がりを留めたまま突入したのが、"What'cha Know About"、そして"Free"。文句なしに盛り上がるこの2曲。特に"Free"では観客も飛び跳ねて大合唱。青空の下で聴いたら、もっと気持ちいいんだろうな、この曲は。そして、アンコールの"It Don't Matter"でも、観客の大合唱はひと際大きく響き、そこを離れるのが惜しいかのように、ドノヴァンは何度も観客に歌わせていた。ライヴ終了後は、ステージ前方でたくさんの観客とずっと握手をしていた。ありがとう、ドノヴァン。なんだかライヴを見て、温かくて穏やかな気持ちになれた気がした。そしてちょっとだけスロー・ライフの気分を味わえた。

 ドノヴァン・フランケンレイターという人は、「フリー」を全身と音楽と雰囲気とフィーリング、すべてで表現している人。ガツガツしていない音楽のスタイルとライフ・スタイル。すごく和んだ空気満載であり、そして何よりシンプル。スロー・ミュージックとスロー・ライフ、そしてフリー。そんな生活できたらいいよなと憧れと希望は膨らむ。もっと自分の生活や気持ちのスピードを落としてみようかな、と通勤ラッシュの駅のホームで思ってみる。ドノヴァンは、優雅に音を奏で、自然の波に乗る。私は騒音の中、電車に詰め込まれ人の波に揉まれる。これが現実なんだよな・・・。


-- set list -- (原文のまま)

BUTTERFLY / HEADING HOME / DREAM ON / SWING ON DOWN / SO FAR AWAY / SPANISH HARLEM / BEND IN THE ROAD / CALL ME PAPA / ON MY MIND / LOVE / STAY YOUNG / WHAT'CHA KNOW / FREE / FOOL / MAKE YOU MINE / BYRON JAM

-- encore --

IT DON'T MATTER
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"Donavon Frankenreiter"

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"ブルー・パラダイス~ドライヴィン・トゥ・ザ・サマー・オーシャン!"(国内盤)
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