ザ・ラーズ @ 幕張メッセ (14th Aug '05) / @ 渋谷AX (15th Aug. '05)
ノスタルジーでなく、現実として
本当に来るのか、来ても、ちゃんと演奏をするのか。全く予測不能であって、演奏したところで、それがグダグダじゃないのかという不安もある。今年のサマーソニック2日目、ソニックステージのトリを務めるThe La'sの登場を待つ間は、ずっとそんな気持ちだった。La'sの復活は、去年のフジロックでのルースターズや今年のライヴ8でのピンクフロイドに匹敵する事件なのである。ひとつ前のティーンエイジファンクラブが、いつも通りに素晴らしかっただけに、余計にLa'sがどんなライヴをするのか気になる。SEは、スティーヴィー・ワンダーやダフトパンクとか、謎の選曲で、デヴィッド・ボウイの"ヒーローズ"が流れてメンバーは登場する……ちゃんとリー・メイヴァースがいる。それだけで盛り上がってくるのだ。アコースティック・ギターをかき鳴らし、"Son Of A Gun"を歌い始める。ベースのジョン・パワーがリーにめちゃくちゃ気を使っているのが手に取るように分かる。
「ちゃんとしている」。リーの歌もギターもブランクを感じさせないくらい、しっかりとしているのだ。いや、ダミ声だったリーは、クリアになったんじゃないかという感じさえする。再結成とか再始動にまつわる経年劣化という感じで、ガッカリさせる要素は何ひとつないのだ。昔の曲も瑞々しく、年と共に衰えている感じがない。
ブランクを感じさせないリー・メイヴァースをずっと気を使いながら、彼を支えるジョン・パワーの様子を見ていると、ジョン・パワーが、いかにリーの才能に惚れ込み、その復活を心待ちにして、今一緒にステージに立っていることを喜んでいるのが分かる。意外にもあっさりと演奏された"There She Goes"は、マリンスタジアムでやっているオアシスを観に行かずに幕張メッセに残っているお客さんたちが期待していたものだった。自分を含め、多くのお客さんはノスタルジーな気持ちで、その曲を待っていたのだろうけど、リー・メイヴァースは明らかに、今、この曲を歌うことが彼自身との闘いであったのだと思えるのだ。彼の表情にはノスタルジーというものが一切なかった。何も引きずってないし、CDが出たときと同じようにちゃんと歌うこと、何の甘えも媚もなく演奏することが、"There She Goes"を際立たせていたのである。
続く"Feelin'"も、躍動感はそのままで、"Timeless Melody"の美しさも初めて聴いたときの新鮮さがあったのだ。ずっとそのまま? 進歩がない? でもLa'sって、ロックの進歩や進化とかの概念を持たないバンドだったわけで、彼らが90年代初頭に、60年代そのまんまの音で現れたとき、音の作り方に古いも新しいもない、その音を鳴らす必然があるのかないのか、その音で闘えているかが大事なんだということを示したのだ。そして、2005年の8月にLa'sをやるのは、甘いノスタルジーではなく、リー・メイヴァースの現実的な闘いだったのである。
新曲も過去の名曲と比べて違和感なく、リー・メイヴァースには、(10年間の沈黙なんて存在しない)or(この感覚を保つために10年間も沈黙していたのではないか)と思えるほど、通常の時の流れとリー・メイヴァースの持つ時間との違いに驚くのだ。そして、ラストの"Looking Glass"の美しさには震えた。
翌日も、ということで、渋谷AXの単独ライヴにも行く。仕事のため頭の数曲を逃したけど、人がいっぱいで全く前に進めない会場で"There She Goes"が鳴った瞬間の盛り上がりは素晴らしかった。ステージ前からは合唱が聞こえてきた。基本的には、前日のサマーソニックのときのセットリストと同じであるけれども、この日はアンコールがあった。アンコールは、もう一度"There She Goes"。何度聴いたって名曲なのだから、と再びの盛り上がり。そして、リー・メイヴァースが「オアシスに捧げる」という一言でThe Whoの"My Generation"。この日は、オアシスのメンバーも観に来ていて(終演後、ロビーにメンバーが現れてパニック状態になったのだが)、前日はティーンエイジ・ファンクラブのメンバーが観ていて、やっぱりミュージシャンにも気になる存在なんであるのだ。この選曲にお客さんも大受けして、盛り上がりまくって終ったのであった。
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The La's
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