button グレン・ティルブルック
@ 吉祥寺スター・パインズ・カフェ (7th Aug '05)

『ONE FOR THE ROAD』上映会 / 弾き語りで2時間以上歌いまくり


glenn tilbrook
 日曜日の午後、吉祥寺の通りからひとつ入った路地にあるスターパインズカフェの前には20人くらいだろうか、入場を待っている。みんなカジュアルな格好なんだけど、そんなに若くはない。元スクイーズのグレン・ティルブルックのドキュメンタリー映画『ONE FOR THE ROAD』の上映会に集まった人なのだ。

glenn tilbrook  映画は、パンク/ニューウェーブのブームの中からデビューして、アメリカでも成功を収め、マジソンスクエアガーデンでライヴするまでに上りつめたスクイーズが解散し、アコースティックギターの弾き語りでアメリカをツアーしようとするところから始まる。着いた空港で借りれるはずの車が借りれなくて呆然とする姿や、ようやくRV車を手に入れて、キャンプサイトで寝泊まりしながらツアーを続けるも、操作の方法が分からなかったり、故障したりで苦労する姿が収められている。

 そして行く先々で温かいファンに迎えられる。演奏する場所は、いわゆるライヴハウスとは限らない。911のベネフィットでは、ニューヨークのグランド・セントラル・ステーションで駅構内をお客さんたちと歌いながら一周したり、見知らぬ車に飛び乗り演奏を続けたり、ファンの家でスクイーズの曲を演奏したりと、「(走り回って演奏するのは)周りの人たちの反応が見たいのさ」気さくにどんどんお客さんとの交流の場を作っていく。

 こうしてツアーを続けながら、地元のラジオやテレビ局にも出て精力的にツアーをする間に出演する。そして、ところどころに挿入されるインタビューでは、子供の頃の音楽体験や今の音楽業界の状況やスクイーズについて語る。「音楽業界は、今も若者を搾取する」と批判的な見方をしているけども、愚痴とかぼやきではなく、表情は、あくまでも前向きで明るいし、今は幸せだと語る。基本的には、ほのぼのとしたトーンだし、グレン・ティルブルックの知名度から言って「全ロックファン必見!」と騒ぎ立てるのも無理があるけど、グレンやスクイーズのファンだけのものにするには非常にもったいない。グレンが人々の温かさをもたらし、アメリカにはこういう面もまだ残されているのだなと思えるのだった。

glenn tilbrook  上映が終わったあと、グレン・ティルブルック本人が登場して質問大会。映画に関することや、スクイーズに関することなど、まるでファンの集いみたいなんだけど、笑みを絶やさずに答える。最近何を聴いていますか? という問いには、「コーラル、ズートンズ、ミッシーエリオット、エミネム、アウトキャスト。ヒップホップのユーモアと実験的なところに惹かれる」とのこと。スクイーズで好きなアルバムとして挙げられたのは、『squeeze』『argybargy』『east side story』『some fantastic place』の4枚。日本の印象は「自販機を誰も壊してないのがすごい」「好きな食べ物はチーズとウニ。もしできることならウニの上で死にたい」など、ユーモアを交えて質問に答えていった。
glenn tilbrook
 そして、約1時間半のセットチェンジを経て、グレン・ティルブルックのライヴが始まる。ステージには、アコースティックギターが2本。1本は普通の6弦で、もう一本は12弦ギターだ。小さなテーブルには、汗拭き用のタオルとジョッキに注がれたビールが置かれている。軽やかな足取りで登場したグレンは、12弦ギターの方を取り、演奏を始める。まずは、"Piccadilly"だ。早速、お客さんたちにリフを歌わせて掴みはOK。それからスクイーズの名曲や自身のソロの曲を次々と演奏していく。クリアで甘い声とちょっとノスタルジックで印象的なメロディラインは、スクイーズもソロの曲も変らない。お客さんたちは、基本的に椅子に座って耳を傾けるんだけども、スクイーズの曲では手拍子にサビのコーラスやリフを歌ったり、ステージとフロアが一緒にライヴを作りあげていく。そりゃ、アメリカやイギリスだったら、もっとシンガロング大会になっていただろうけど(映画でもそんな場面が多く収められている)、日本のこの年齢層のお客さんにしては、よく反応している方でしょう。

glenn tilbrook  休憩を挟んだ2部構成になっているんだけど、前半は"Take Me I'm Yours"あたりがピークポイント。ギターソロがめちゃくちゃ上手い。グレンをソングライターとしては、すごい人だと思っていたけど、ギタリストとしては考えたことがなかったんで驚かされた。そして、モンキーズの"Last Train to Clarksville"が演奏された。

 20分くらいのインターバルを置いて始まった2部が圧巻だった。グレンは2階席で"Goodbye Girl"を歌いながら登場し、そのまま1階まで歌いながら降りていって、フロアを練り歩く。当然、お客さんたちは「Goodbye Girl!」の大合唱だ。そしてステージに上がると、マイクを通さずに「トゥトゥルール、トゥルルルールル」というリフをお客さんたちに歌わせながら"Black Coffee In Bed"を歌う。そして一転して、6弦ギターに持ち替えて、しっとりと歌われた"Vanity Fair"という一連の流れが最高だった。バックコーラスをお客さんに歌わせた"Tempted"も素晴らしかったし、ウィリー・ネルソンの"Always on My Mind"エルヴィス・プレスリーのヴァージョンで有名。おれがよく聴いたのは、ペット・ショップ・ボーイズのヴァージョン)、そして、ジミ・ヘンドリックスの"Voodoo Child (Slight Return)"のカヴァーを披露。アコースティックギターを激しく弾きまくり、頭の後ろで弾きながら歌い続ける。そんでもって、ファウンテンズ・オブ・ウエインの"Red Dragon Tattoo"をやる。おれは何故か気付かなくて、終ってからカメラマンに指摘されたんだけど、この曲ってスクイーズやグレンのソロの曲の合い間に演奏されても何の違和感もなく、溶け込んでいるのだった。本編は、確か"Another Nail For My Heart"で終ったと思う。とにかく、ヴォリュームたっぷりのライヴなのだ。

glenn tilbrook  そして、本編が終ってもアンコールを求める拍手は大きく、"Parallel World"と"Hourglass"。"Hourglass"では、「ここでサンジューニカイ(32回)叩くんだよ」と間奏の拍手のやり方を指導する。もう一度のアンコールでは、"Pulling Mussels (From the Shell)"。この曲が終っても拍手が5分くらい止まなかった。

 でもって、あんまり良すぎたので、翌日も行ってしまいました。関係者席がやたら豪華だったのにも驚きだったけど、前日とセットリストが全く違うのにも驚いた。同じだったのは第2部始まりの"Goodbye Girl"〜"Black Coffee In Bed"のところだけ。『east side story』から前日に演奏された曲に加えて、"Is That Love?"や"Mumbo Jumbo"や"Messed Around"までやったのだ。どうせなら、おれが一番好きな"Labelled With Love"をやって欲しかったのだが……。さらに前座のミッシェル・ショックトのサポートした日本人ギタリスト(この人も非常に上手かった)とギターバトルをやったりと盛りだくさん。こういうライヴなのだから堪らない。2日連続で行って本当に良かったと思えた。
report by nob and photos by izumikuma

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