ECD @ 渋谷O-nest (1st July '05)
HIPHOP苦手でもいらっしゃい
なにもそこまで変わることないじゃん。いま渋谷を歩いてたら何が聴こえてくるだろう。ヒットチャートに必ずと言っていいほど上がってくるHIPHOPと言われる音楽。これがちょっとやっかいで、聴けばすぐ分かる歴然とした差、差、差。特にラップの場合、日本で90年代に頑張っていたひと達のコトバを聴いてみて欲しい。もっとダラダラ・ハキハキと、そして何より自分の言葉で。だから、ラップはもっと耳障りな音楽だと思うんだ。
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マイク一本だけ渡したとき、その表情ひとつで空気を変えられるECD。素晴らしいラッパーのひとりだと思う。しかしながら、彼の支持者はいわゆるHIPHOP層にとどまらず、それを遥かに凌駕するロック層から多くの支持を獲得している。最近は実際ハードコア連中や関西アンダーグラウンド連中と対バンを組まれることが多く、ボクもそこから知ったクチ。違和感なく楽しめる理由のひとつやふたつ、今日は紹介したいと思う。
この日はECDのワンマンで、ゲストとしてイルリメが招かれている。どうなることかとワクワクして会場に向かうと、ステージにはなんとECDが既にスタンバイ!? いや、DJやっとるやんけ。オープニングDJを自ら担当。流す曲はというと、これはなんと言えばいいんだろう……歌謡曲?? テクノ歌謡?? カルトGS?? そのあたりの一癖二癖効いた時代錯誤な日本語歌が次々と。ふとカラオケ大臣こと秘密博士が頭をよぎったが、また違った趣き。自分はこのへんの音楽事情に暗くて上手く伝えられないのが悔しい。でも、ノスタルジーのなかの新感覚。ザクザク発見があり、ECDさんのDJは素晴らしく楽しい。
DJが終わったらもちろんライヴ本番。さぁ来い! と思ったらECD、サックス持ってチョコンと現る。「前座のECDソロでーす」と。あぁそうなのね。そうなのだ。ECDはソロもあって、サックス、サンプラー、そしてマイクロフォンを駆使したひとり漫才ならぬひとりラップをするときがある。今日はそれも見せてくれると。
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このソロがまたスリリングで、サンプラー音と声だけでライヴをするわけだから、それはみなさん想像に難くないでしょう。ちょっとした間は全くの無音になり、観客側としてはソワソワしてくるもの。しかし逆手にとって静寂を破る鋭利なリリック! そしてサンプラーから発せられる攻撃的な衝撃音! 痺れるデス。日本のオールドスクールを体感した、ECDさんならではの業だ。
ソロが終わるとゲストのイルリメが登場。「あいあい。よろしくおねがいしますね、ええ」といつも軽いノリのイルリメですが、このふたりの相性はほんと抜群ですって。ECDは淡々と熱いものがこみ上げてくるラップ、反面イルリメは軽快なラップで扇動的なアジテートも欠かせない。近々、ふたり共同で作ったニューアルバムも発売予定。仲の良い師弟関係のようで微笑ましい。
イルリメはずっと残ったまま。ここでやっと現れた……ボクの大好きなターンテーブリスト生物、イリシット・ツボイ!! うぉぉぉーーー! 最高なんですよツボイさんのターンテーブル捌き。このひとが登場するとECDのライヴは一気にロック的要素を帯び始める。
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ターンテーブルが2台あることに頭を垂れたくなる程のありがたさ。行ったり来たりの右往左往で機材を巧みに操るツボイさんは、ターンテーブルに乗ったり針をレコードに押し付けたり、奇抜ながらも誠実にダンスのリズムを投げかける。本物の匠とはこのひとを言うんだろう、見事なまでに視線は釘付けだ。
釘付けになった自分の分身はちと置いて視界を広げてみると、もっと引き込まれる風景がそこにある。奔放に振舞うツボイさんの状況をうかがい、サンプラーやラップのタイミングを見計らってジーっと凝視のECDさんだ。この空気はヘタに"緊迫感"などと形容したくない。切迫した音楽がそこで奏でられている。"行間を読め"と言うが、"ツボイECD間を聴け"と。それくらい"信頼・闘い・爆発"といった要素がステージに仁王立つ。1MC&1DJのHIPHOPはやはり革命だったのだ。
終盤は二階堂和美まで現れ、豪華インプロヴィゼーションがポストロックバンドのように続き本編は終了した。アンコールにも応えたECDだったが、ボクはその時点で半分放心。長時間にわたったワンマンライヴは感動的な拍手のノイズで幕を閉じた。
知らないところでうごめいている生半可でない音楽。HIPHOP、ROCK、JAZZ、なんだってそうだ。枠を取り払えば出会える素晴らしい音楽があるし素晴らしい人間もいる。もちろん、ボクにもダレにも全て把握できるものではない。ただ、知っておいて損しないことがひとつあるとしたら、『底辺は豊かなのだ!』(ECDIARYより)これに尽きるんじゃないかな。
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report by toddy and photos by sama
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HIPHOP苦手でもいらっしゃい : (05/07/01 @ Shibuya O-nest) : review by toddy,photos by sama
photo report : (05/07/01 @ Shibuya O-nest) : photos by sama
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