moe. @ Ebisu Liquidroom (23rd Apr '05)
最後の予期せぬサプライズに、パンクスは燃えた
先日のLiquid Heavenで羽を伸ばしていた天国の住人達が再び集まり、まるで同窓会の様相。もちろん彼らが最もくつろげる場所は、苗場の奥地・Field Of Heavenである。
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GRATEFUL DEADに倣い、この日は特別にテーパーズ・セクション(自由に録音できるエリア)が設けられていた。デッドヘッズの、DEADと共にツアーをまわり、オフィシャル海賊盤をトレードする楽しみをmoe.で味わえるわけだ。さらに、長丁場のライブを見越し、インターバルを入れた二部構成となっていたことで、アルコールの補給も確実にでき、再度『イージーライダー』のようにロングツーリングができるってもの。どうにもジャムバンドってのは、酔っぱらって「みたい」気にさせるのだ。
メンバーの牧場主のような出で立ちが庶民的かつファニー。加えて期待を裏切らない、THE BANDの影響が感じられる物悲しくも壮大な広がりを見せつけるサウンドが、ゆったりと余裕のある空間を作っていく。ドラムスはタムのタッチが柔らかく、抜けた音を生んでギター同士が繰り広げる即興のバトルを支える。しばらく裏方に徹していたが、促されるままソロをやってみれば、ここぞとばかりに主張して、アグレッシブな一面を垣間見せていた。思えば、moe.はまるでジグソウパズルの名人だった。迷いなど一切見せずに、ワン・アンド・オンリーの細かい音のピースをはめ込んでいった。
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それまで類い稀なるテクニックを用いてはセッションを彩り豊かに引き延ばし、インプロの最上級を見せつけていた彼らは、アンコールで突如変貌を遂げ、オーディエンスを驚かせた。ラッパズボンから破れたジーパンと革ジャンへ、草が香る野外から紫煙が充満したCBGBへ。折り重なった音で惹き込んできたバンドの急な方向転換は、ゲリラの様相を呈していた。なんとシンプルな3コードのみで疾走するRAMONESの"I Wanna Be Sedated"をかき鳴らし、「パーパーパパパー」っと3分間ヒーローになってしまったのだ。NYパンクが勃発し、THE BANDが『ラスト・ワルツ』で解散したのが76年だったことを考えると、ひとえにジャムバンドでくくるより、USにおける60年代〜70年代音楽の語り部としての位置づけが妥当だろう。それをすんなりとやってのける彼らに垣間見るのは、昔を懐かしむいち音楽ファンの姿である。時系列の流れにひたすら悶え、過去にひたすら思いを馳せた夜でもあった。 |
report by taik and photos by yusuke
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