Lemon Jelly @ Shibuya AX (29th Mar '05)
本当に「待ちに待った」
渋谷ax午後7時。ステージ後ろに大きく映し出された夕焼け色の海原と流れていく雲があった。ジャンルレス、だが軽やかなリズムのSEと共に、雲は太陽の横を通り過ぎる。太陽が段々と沈んでいくのを眺めながら、「なるほど日の入りと共にスタートとはニクい人たち」と奥ゆかしく思う。
いくらか時間が過ぎた後、その映像はブラックアウト。よもや?と思ったが、開演ではなく、会場内の人物探しゲーム(スクリーンとアナウンスによる情報から3人の人物を発見したらミックスCDプレゼントというもの)が始まった。実に和やか。それが終わってからは再び夕焼けである。少し長く思うが、雰囲気は悪くない。
それからまた10分少々。どうにもおかしい。スタッフが何人も集まって、ステージ上の機材を前に何やら相談を始める。まさか?いやいや、そんなことはあるまいて…
時間は午後8時を回った。機材のトラブルによって、開演は早くとも8時半になるとのことだ。スクリーンにはもうあのオレンジ色の海など映るはずも無くて、喫煙所は満員御礼となっていた。実に素晴らしい。オーディエンスにとって文句の付け所の無い、あのフジロック03の名演をもってして「不十分だった」と言った彼らの、昨年の朝霧JAMなどで雨天の中をものともしない踊りの空間を作ったフレッドの、そしてキュートな映像と音楽に確かなビートが乗った『64-95』を我々にぶつけてきたLemon Jellyの、待ちに待ったショウ…それはGuns&Rosesも驚きの90分強押しという、なんとも強烈なタイムスケジュールで行われたのである。
…と、まあ愚痴に終始しても始まらない。待ちに待ったスタートを切ったのは、最新アルバムの1曲目"88 AKA Come Down On Me"。ラウンジブレイクビートというセカンド以前の彼らのポジションを大きく裏切ったロッキンビーツ、その驚きにも近い豪快な音が会場中を包む。
派手なオープニングトラックとしては申し分の無い音ではあるが、ステージに目をやるとトラブルで映し出されないのだろうスクリーンが厭でも目に付く。黙って音に集中しようとするも、どうにも物足りなさを感じずに入られなくなってしまう。そんな調子でギクシャクした空気が流れ、最初の数曲で会場を後にする人も幾人かいた。
だが、劣悪な雰囲気かといえばそうでもないのである。ガイジンアクセントでのスタート遅延のお詫びをしたり、「sweetsをプレゼントするよ!」と言ってレモン味キャンディをばら撒いてみせたりと、彼らの人柄がうかがえるサービス精神があったからだ。半ば「しょうがないなあ」という笑顔がそこかしこに現れてきた。Lemon Jellyは遊び心がそのままプロフェッショナルになってしまったようなユニットである。どうやらそれはパッケージングされた商品だけではなくて、彼ら自身もまたファニーな側面をお持ちのようである。
"Spacewalk"あたりからは映像も無事に再生され始め、ショーはなんとか建て直しに成功していく。映し出された映像はDVDプレイヤーをダイレクトに繋いでしのいだものらしく、リズムとはチグハグでタイムコードや操作表示が時折スクリーンに映ってしまうというものだった。しかし、長きに渡ってこの場を待った我々には、とにかく出てくれただけでも嬉しいのである。
さて、そろそろサウンドにも目を向けよう。基本的にセカンドアルバムはアルバム通りの音を出し、ファーストからの曲は大体が何かしらのアレンジが加えられているというものであった。繊細に音が構築されている奥深いブレイクビーツ集のセカンドがステージ上でどう化けるか楽しみではあったが、ファーストを「現在形Lemon Jelly」に変換させ、一つのコンセプトとして形にしたステージはなかなか聴き応えのあるものであった。
フレッドとニックは何をしていたかと言うと、キーボード、ギター、末にはターンテーブルやチェロにまで手を出し、一曲変わるごとに手に持つ楽器を変えるという実に器用なところを披露した。随所に盛り込まれたフレッドのスクラッチはお世辞にも巧みの技と言えない代物ではあったが、そこは彼らの色によってむしろヘタウマとして認めてもよいものだったに違いない。
そんなステージで一番の喝采を集めたのが、やはりあの"Nice Weather For Ducks"だろう。牧歌的な「All the ducks are singin` in the water〜」のボイスサンプリング。それがターンテーブルの再生スイッチを押した時のように徐々にスピードを上げていき、そこにあの清々しいギターが乗れば会場はヤンヤ一直線。しかも四つ打ち、かつフィルターのタメと解放があるフロア仕様にリミックスがかけられているもんだから痛快である。肩車をされた子供が無邪気にはしゃいでいたのが実に印象的であった。
こんな具合に色々な慌しさを見せた一夜であるが、終えてからつくづく思う。彼らの人柄に触れた日だったなあと。他のバンド・ユニットであれば、諸々のトラブルを経て「散々なものだったよ」と言っているに違いない。だが不思議とそれを口にできないのは、自分達を楽しませてくれた彼らの魅力のせいだろう。 あのサウンドに助けられ、映像に助けられ、ステージ上のコミカルな二人のホスピタリティに助けられて満足できたわけである。
ライヴは音と人、それぞれの息遣いが相互に高め合っていくコミュニケーションのようなものと私は思う。今まで体験した演奏劇とは少し筋が異なるが、とにもかくにも我々はLemon Jellyを観た。そしてそれはいいものだった。結局、言うことは、それだけ。
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report by ryoji and photo by hiroqui
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2005
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