button The Fiery Furnaces @ Daikanyama Unit (24th Mar. '05)

エレノア嬢に萌え、の話ではない

「エレノアがいいんだ、エレノアが。」最近の私の話題といったらそればっかりだ。エレノアっていうのは、NY出身の兄妹デュオ、ファイアリー・ファーナセズのヴォーカル、エレノア嬢のことである。で、「いい」とは、なにも小難しい意味を含んでいるわけではなく、素直に「かわいい」という意味だ。そこらのセレブさんたちとは一味違う気品と知性を感じさせる美貌、まるで『ホーセズ』のころのパティ・スミスを100倍女っぽくしたような感じ…。なんかこの調子だと、ライブレポでそんな個人的な萌え話を書いてるんじゃないと言われそうなので無理矢理ライブレポにつなげてみるが、ステージ上でのエレノアは、本当にパティ・スミスが憑依したみたいな迫力があった。とってつけたみたいな書き方をしているが、これは本当なのだ。先日、他媒体で彼らのインタビューに同席させてもらったときは、話している間ずっとうつむきがちだったのでとてもシャイな印象を受けたが、ステージに立つと彼女はまるで別人になってしまう。髪を振り乱し、声を張り上げ、聴く者の背筋をしゃんと伸ばさせるような歌をうたう。普段心の中にためているものが、歌うと、どっと出てくる人なんだろうなと思った。こういう人の歌は上手い下手関係なく、聴かせる(上手かったけど)。アンコールでは、兄のマットが弾くギターだけをバックに歌う曲が幾つかあったが、歌を聴くという視点から見るとあれが一番よかった。

 しかし、この人たちのライブの場合、アンコールは本当におまけといった感じだ。ファイアリーズは、アンコールといった短い時間でその本領を発揮するタイプじゃないからだ。たぶん時間が長くなればなるほど、雪だるま式にライブも凄くなっていくタイプだ。なにしろ彼ら、曲が終わらないのだ。一曲目が始まったと思ったら、もうそれがライブの最後まで終わらない。いや、正確には曲はどんどん終わっていく。後でセットリストを数えてみたら、本編だけで34曲やっていた。時間は40分ほどだったろうか。一曲一分強の計算だ。――どういうことかというと、要するに、曲と曲の間に切れ目がないのである。いや、つまらないタネ明かしだとがっかりしないで欲しい。もちろん、ただ切れ目がないだけだったら大した話ではない。しかし、彼らの場合、34曲をつなげて「ひとつの曲」として聴かせようとしているのである。スタジオ録音の作品を、全ていったんバラバラに解体して、またつなぎ合わせる。しかも、元々なんの関連もないはずの34個の小さなパーツを、である。こんなバンド他にいただろうか。まさか。一体どうしてこんなパフォーマンスを思いついたのだろうという素朴な疑問と、しかもよくそのアイデアを実現できたなという驚きが頭の中をグルグルと回る。きっと奇才とはこういう人たちのことをいうのだろう。

 こういう組曲的なスタイルについて質問されると、ザ・フーのロック・オペラを引き合いに出すマットだが、ザ・フーのロック・オペラは、アルバムを最初から最後まで順に聴くことでひとつの物語が浮かび上がってくるという仕組みだし、曲と曲がつながってるわけではないので、あまり正確な答えとはいえない。ファイアリーズのやっていることはむしろ、ザ・フーのロック・オペラの原型といわれる"a quick one"という曲に近いと思う。"a quick one"は、2分程度の短い曲をいくつもつないでひとつにしている曲だ。ザ・フーはこれをロック・オペラというスタイルに発展させていったが、もしもうひとつの発展形が考えられるとしたら、それはこのファイアリーズのスタイルなのかもしれない、などと考えた。そういう頭で聴いてみると、メロディにもザ・フーの影響が見え隠れしてくる。いや、ザ・フーというより、60年代にロック・クラシック全般の影響かもしれない。ときおり甘酢ぱいバブルガム・ポップ調のメロディも混じり、相当なポップおたくぶりが顔をのぞかせる。最近ニューウェイブづいていた自分だけど、高校生の頃を思い出して久しぶりに60年代の音楽を聴きたくなった。そういえばドラムの人の、前髪が短い髪型とか、フリルのついたシャツなんて、凄い60年代っぽい。やたらめったら叩きまくって最高にハッピーで騒がしいノリはまるでキース・ムーン。なんか話が脱線しそうな雰囲気になっているが、ほんとはこの日、ライブの後にこういう時代の話がわかる人と延々と朝まで語りたい気分になっていたのである(残念ながら、実際は、とあるミーティングがライブ後の私を待ち受けていた)。

 この間、ブライアン・ウィルソンのライブを観たが、その後ビーチ・ボーイズを聴きたくはならなかった。でも、今こうして00年代の、回顧的どころか、まだ誰もやったことのない(であろう)スタイルに挑戦しているバンドの音を聴いて60年代の音楽が聴きたくなっている。変な話だが、でも音楽ってそんなものだよなと思いながら、アンコールのエレノアの歌の見せ場に聴き入っていた。ああ、やっぱりいい…。


-- setlist --

Wolf notes / Leaky tunnel / Crystal clear / Worry worry / Blueberry boat / Worry worry / Smelling cigarettes / My dog was lost but now he's found / Wolf notes / Two fat feet / Straight street / Two fat feet / Mason city Name game / Chief inspector blanche flower / Quay cur / Tropical ice land / Up in the north / Mason city / South is only a home / Blueberry boat / Bow wow / Bird brain / Inca rag / Astuma attack / Don't dance her down / Mason city / Evergreen / Chris Michaels / Mason city / Span located / Chris Michaels / Wolf notes quay cur / Wolf notes

-- encore --

I'm gonna run / Here comes the summer / Pub alcohol blues / Bright blue tie / Single again
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