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@ Kagurazaka Dimension (22nd Mar. '05)

東京きらきら日誌 MORIB 電鉄1001秒音楽會 3月號

横寺町とあがた森魚〜12+3の秘密境〜

Morio Agata
 地下鉄の地上出口を抜けて、目の前を走るアスファルトの坂道を向こう側へ渡ると、音に聞く横寺町があるはずで、かわりに坂を少しのぼると、今夜の1001秒音楽会の舞台となる地下室へと続く道です。

 せっかくの音楽会だのに、私はあらかじめ小さな風邪を病む周到さで、微熱をもっての参加となりましたが、「アアしたことばかり歌っているあがた森魚もまた、微熱病みのようなものだ」と少し得意になって薄暗い階段を降りたのです。

 ミラーボールがニカニカとまわり、小さなサーチライトがあっちを向いたりこっちを向いたりしているうちに、アーミーグリーンのキャスケット帽をかむった、今夜の主人公の入場です。「まずやってみますかね…」と、続く奇妙な掛け声で「港のロキシー」が一斉に始まりました。
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 あがた森魚さんは「ロマンチックでないものは取るに足らない」ということを知っています。「今にしてみれば」では、茜色の空とひこうきとボクとの幸せな関係が軽快に歌われ、「サブマリン」には、低音弦の躍動に合わせて号令を発する船長のやぶれかぶれな酔狂があり、「春の嵐の夜の手品師」は宝石箱に詰められたお話を私たちの前にひろげて見せることで、あがた森魚の横顔を、より神秘的にステージの影へと浮かばせるのです。その横顔は、いつしか港の模型図をバックに差し換えられ、「第六惑星」をいとおしむ男が海月夜に向ける想いの影画へと繋がってゆきます。カリガリ博士やネモ船長たちが記憶のオブジェは、あがた森魚が幼心の完成を目指すにまかせて郷愁の匂いを立ち昇らせ、シャリシャリとしたコードストロークを補うように「佐藤敬子先生」のぐるりを衛星のしかたで廻るのです。

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 あがた森魚の声は、一度聞けば二度目からはすぐにそれとわかる特徴があります。大きな声の音符がだんだんと五線譜をのぼっていき、高音に達すると急にリミッターがかかったように、小さくプルプルとした音符となり、押し殺した感情の切なさを以って我々を魅了するのです。そんな有無をいわさぬ魅力は、一曲目が始まってより、音楽会のあいだ中ずっと私の耳元を熟しておいたのでした。

 二曲目の「陽は昇る星は降る」では、船端に立ち北極星を眺めやるセーラーの無邪気さで笑い声を上げ、次の「銀星」では夜空の秘密を謳う道化よろしく「ホッホーッ!」とおどけて見せます。そのあいだ、向かって右側にはカラクリ人形のように首を上下させつつベースをはじくはちみつぱいの和田博巳さんが、左側では三上敏視さんが見るたびに違う楽器をめまぐるしく弾いているのが、地味ながら楽しさを増します。


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 そうして、詩人めいたキーワードをまとい、次から次へと男のロマンチックを暴露していく短髪詩人が、ステージ中に突然「居合抜きのような長髪」に見えることがありました。「赤色エレジー」と「僕は天使ぢゃないよ」が演奏される前には、それぞれ長い前置きがあり、曰く「もののハズミはおそろしいな!」「二一世紀になっちゃったね」「懐かしみで云うんじゃないんだけど」「ホーッ!」エトセトラ。そうして始まった二つのお話は、今までの曲に比べて「下駄箱の匂いがする」という点で、その性質を違えていました。演者の頭髪が急にのびて見えた所以です。前世紀的ロマンスは、四畳半経由で届けられねばならなかったので、自然エクスキューズも長くされたのでしょう。しかしそれは、我々の耳によく馴染んでいる幸子と一郎の物語ほど哀切極まるものではなく、その歌い方は多少オーデコロンを振りかけ、さっぱりとした潔さも香るものでした。
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-- setlist --

1港のロキシー
2陽は昇る星は降る
3銀星
4オー・ド・ヴィ
5僕は天使ぢゃないよ
6今にしてみれば
7黄昏歌劇
8サブマリン
9春の嵐の夜の手品師
10いとしの第六惑星
11赤色エレジー
12佐藤敬子先生はザンコクな人ですけど

-- encore --

14幼きイエズスの春に(稲垣足穂の朗読)
15ジェットプレーン
16大寒町
 計一二曲が終わると本編が終了し、彼はピカピカの半袖シャツに着替えて再び登場することになります。アンコールでは、稲垣足穂の「幼きイエズスの春に」がぎこちなく朗読され、主人の胸にぶら下がったギターの常にポロロロロンッと爪弾かれて響いているのが、ふさわしい朗読風情で、天体を確認しながらソゾロ歩きする入道の足取りにはぴったりのように思われるのでした。その後、あがた少年は「ジェットプレーン」で「宙返りしたらわかるのかい?」と問い掛けたあと、「大寒町」で場末にしゃがみこんだ永遠の郷愁のコトを唄い、ロンサム・スージーの哀しさでステージを去りました。

 彼が一番最後に云った言葉は「ありがとう!」でした。その後わたしが「あがた森魚のステージを見た夜は…」といつもよりもロマンチックに見えなければならない夜空を仰ぎに外へ出たのは云うまでもありません。


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"ベスト・オブ・ベルウッド" (2 trax)
"B.Y.G. High School B1" (ムーンライダーズが2 traxをカバー)
"失われたボールをもとめて ~寺山修司トリビュート" (1 track)



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