button SION @ Ebisu Liquidroom (11th Mar '05)

若者よ、老舗の店に行こう


SION
 ちょっとくらいクセのある料理を出す店ほど、いったん常連客がつきはじめると、実はなかなかにしぶとく流行る。たとえば、そうだな、濃い味付けを好む人が『ブルース・スプリングスティーンの店』や『長渕剛の店』にハマるとなかなか抜けられないでしょう。何年も何年もなかなか店を開けやがらない『プリファブ・スプラウトの店』なんかにもちゃんとファンがいて、数年振りの料理を待っているもんだから、そう簡単に店は潰れない。かくいうぼく自身、ひねくれた店主が行く度にやたらと味付けを変えてくる『コステロの店』にもう10年も通い続けているしね。

 SIONの店は……なんだろう、決して青山あたりの小洒落た感じではなくて、いざ一口食うとおふくろの味みたく郷愁を思い出させてくれる、『狭いけどずっと味で勝負してる西新宿の店』って感じかなあ。店主は特別商売上手ってわけじゃないんだけど、なんだか憎めない迷い猫みたいでさ、ついついいつも立ち寄ってしまうという……その意味では『トム・ウェイツの店』にも似てるかな。おっと、決してしゃがれ声からこじつけてるわけじゃないぜ。だってロッド・スチュアートの店とはやっぱり趣が違うじゃん?
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 終演後、少しだけSIONに会って話ができた。「最近昔より歌詞が暖かくなりましたね」というと、「尖ったものより、丸いものの方が強い時もあるじゃん」と、作り置きじゃない答えがさらっと返ってきた。気さくに笑いながら。イカしてた。レコード会社も移籍して心機一転、今年はアコースティックでの全国ツアーも予定しているという。これを読んでるティーンネイジャー達よ、ファースト・フードに飽きたら、たまにはそんな所にふらっと遊びに行くっていうのもどうだい(なんとSIONのライブは学割があることだし!)。「こうなりたい」と思わされちまうオヤジがそこにはいて、飽きのこないその味に意外にハマっちまうかもしれないぜ。
 さてさて、そのSIONの店が久々に開くというので、今日も常連さんが沢山やってきた。客層は30代くらいが多い。カメラマンのQ太が「あんまり若すぎるとさ、やっぱちょっと難しいよね。この良さを理解するにはさ」と言ってたが、その話がまるで大根のほろ苦さはだんだんわかる、みたいに聞こえて可笑しかった。確かに、ぼくの場合でも10代の終わりにSIONを聴き始めて、真に“染みる”ようになったのはその数年後だ。だけど若いキッズにもぜひ聴いて欲しい音楽だと思う。聴くべきだ、とさえ思う。もしもいい歌を聴くことが自分を豊かにすると思うのなら。

 歌詞が染みるのだ。それも半端ではない。泣きたくなる。ライブ会場でもはっきりと聞きとれるその言葉のひとつひとつが、胸の中の理屈じゃない部分に遠慮なく飛び込んでくる。流行りの甘ったるい味じゃなく、でもどこか優しく、懐かしく、ほろっとさせられる味。忘れかけていた大切な風景が鮮やかに目の前に甦る。大袈裟じゃないぜ。どうだい、ハイ・スタンダードばかり聴いてた君も興味が出てきただろ?(おれもハイスタ大好きだけどさ)


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