The Chemical Brothers @ Shibuya AX (11th Feb. '05)
プログラマイズされたラブストーリーに感電しよう
今日も夜が訪れる。すると、ネオンとは一味違った色をもつものが産声を上げる。東京で、名古屋で、そして札幌や福岡でもそう。日本全国でスピーカーを通じ、ライヴハウスやホールから、その場限りの音の物語が生まれるのだ。
ロックからトランスにいたるまで、その物語を吐き出すスピーカーの先にはミキサーやケーブルといった機材がリンクしていき、終着点にいるのはそう、ギターやレコードに触れ、様々な思いを抱いてその夜を創り出すステージ上の主人公達だ。無数の機材、即ち無機物達はステージの上で初めてそれを動かしている音楽的表現者という名の有機体と出会う。結局ヒトを動かすものは、同じものであるヒトが仕掛けているのだ。
ケミカルブラザーズ、なんと不思議なユニットであろう。ROCKの名前を拝借した苗場の夏祭りに、彼らはロックンロールを用いずともステージの主人公となっている。もちろんジャンルの話をしたいわけじゃない、フジロックというものは皆さんご存知の通りに音楽全てを扱っているわけだし。
しかし、ケムズの連中にはダンスミュージックという枠組みを超越したエナジーがある。記号ではなく物語として在り、フロアの視線をステージに向けさせるダンスミュージック。本当に不思議なものである。
そんな彼らのライヴは、”Hey Boy Hey Girl”に始まり”The Private Psychedelic Reel”に終わる、彼らのキャリアを総結集し、リズムと言う名の一本線を辿っていく御馴染みのものだった。(内容に関してはノブユキ、トディー両氏のレポートに詳細が記されている。)
パーティーミュージックとして申し分の無いアルバム『Come With Us』のアンセムも、バウンシーな音楽の玉手箱である『Surrender』のトラックも使って彼らは踊らせてくれた。”Star Guitar”の導入部分で苗場の夜を思い出した人もきっと多いことだろう。
ただ、2時間弱という長い時間を使って彼らが心血を注いだものは果たして何だったのであろうか。きっと、あの日使われた新作『Push The Button』という即効性に欠ける地味なアルバムこそがまさにその答えに違いない。原点に経ち返った彼らだけの物語、それこそがあの夜のテーマだった。
数珠繋ぎに繰り出されるトラックの中に割り込まれた最新アルバム収録曲、“Galvanize”や”Come Inside”そして”Surface To Music”は「いつも通り」として平然とケムズのステージに上がり、そしてそれらはスピーカーからフロアのオーディエンス…もといダンサー達のカンフル剤として違和感無く染み込んでいった。彼らが時おりこちらに見せた笑顔はきっと、パーティーメイカーとしての感慨だけではない。
ニューアルバムはファン全員が待っていたキラートラック集では無かったわけだが、この大音量と一夜の出会いによって、きっと再びあの音とコンタクトしてみようと思った人間は多いだろう。「家に帰るまでが遠足ですよ」と同じく、こうして彼らの夜は更けていく。
彼らのことは、信じよう。プラスチックに詰め込まれ、パッケージングされたアルバムのトラックは彼らのほんの断片でしかない。毎晩生まれる無数の音楽達と同じく、ステージに彼らが立ってから初めて創られるものこそが、アーティストとしての本体であり、またダンスと言う冠をかぶったロックだ。そんなわけで、私が次に彼らと出会うのは苗場か東京か定かではないが、皆さん、次は会場でお会いしましょう。
|
|
report by ryoji and photo by ryota
|
|
2004
ジャジャジャジャジャー!ラスタファーラーイ! : The Skatalites (19th and 20th Sept @ Shibuya Club Quattro)
うつつに灯る夢心地 : Shang Shang Typhoon (7th July @ Hanazono Shrine)
「煌き」 : GAN-BAN NIGHT SPECIAL [BREAK ON THROUGH] VOL.1 SPACE COWBOY (28th May @ Nishiazabu SPACE LAB YELLOW)
「伝説」 : THE VINES (19th May @ Shibuya Club Quattro)
興奮はあった。パーティーは無かった。 : Squarepusher Japan Tour 2004 (15th May @ LAFORET MUSEUM ROPPONGI)
書籍 Review : -P2Pという冒険- : 『ナップスター狂騒曲』 ジョセフ・メン(著)/合原 弘子(訳)/ガリレオ翻訳チーム(訳) (20th Apr)
名レーベルが魅せたパーティーの真髄 : NINJA TUNE feat.Bonobo / Kid Koala / Coldcut / Hexstatic / Jason Swinscoe (2nd Apr @ Shibuya O-EAST)
例外的ヒーロー : IGGY POP & the stooges (22nd Mar @ Shibuya AX )
CD review : 『Somewhere Only We Know』 : Keane (2nd Mar @ Nagoya Diamond Hall)
愛と思い出の夜 : Ben Harper & The Innocent Crimiinals (2nd Mar @ Nagoya Diamond Hall)
熱帯雨林、そして野生のUAがクアトロに : AlayaVijana (20th Feb @ Shibuya Club Quattro)
「iPODロッカー」?さあ、どうでしょう : JET (2rd Feb @ Shibuya AX)
|
|