button ありやまな夜だ!! 新春スペシャル
feat. 有山じゅんじ, リクオ, TOMOVSKY, 高田漣,
saigenji and ムーヤン
@ 神戸チキンジョージ(28th Jan.05)

世代を超えた贅沢な一夜


Junji Ariyama
Junji Ariyama  「いつまで音楽できるやろなぁ、ずっとできたらええなぁ、できるよな」と、「スラック」で、のんびりとしたアコギのアルペジオに乗せて、京都弁の柔らかなシラブルで文字通り弾き語りを始める。表情は終始、くつろいだ、人の良さそうな笑顔。そんな一見ラテンな容姿と雰囲気(エアー)を醸し出している人物が、今夜のイベントのホストである有山じゅんじ氏。40代、50代の音楽ファンには馴染み深いその名前も、MAG誌上では意外かもしれない。 今から30数年前、五つの赤い風船上田正樹とサウス・トゥ・サウスに名を連ねた関西フォーク〜ブルーズ界の重鎮なわけだが、上述のように権威的な風情は微塵もなくて、のっけから、のんびりゆったりとした、温かで穏やかな空気で会場を包む。

 人に歴史あり、だ。きっとマイペースに、でも真摯に、自身の音楽活動を追求されてきた証左なのだろう。昨年一年間『ありやまな夜だ!!』と銘打って、有山さんの他にゲストを一人迎えて東京にてマンスリーで行われたイベントの、今夜は新春スペシャル。昨年出演したゲストのなかから5人のソロ・アーティストをフィーチャーして、各々の弾き語りの後、ホストの有山さんが加わってセッションするという趣向で、「ほんとうは12人全員呼びたかったんやけどな」

muyan  そんな有山さんのくつろいだステージの後、まず「是非、覚えて帰って」と迎えられたのは、三重在住のシンガーソングライター、ムーヤン。恰幅のいい体型にサファリハットといういかにもな容姿とは裏腹に、透明感のある歌声が会場を静謐に包む。印象的だった「ZOOに行きたい」は、邦楽の呼称がニューミュージックからJ-POPへと変遷するちょうど中間緩衝地点、有名無名問わず、良質なシンガーソングライターが(普遍的なという意味で)良質な楽曲を生み出していた時代の雰囲気を彷彿とさせて、アコギの弾き語りではあるが、なんとなく連想したのはタイトルのせいもあってECHOES だったり、はたまた 大沢誉志幸だったり。

 続いてはsaigenji。音楽性を、ブラジルや南米の豊潤な音楽に深く根ざしたギタリスト/シンガーソングライターは、各方面からの注目と称賛を受けて、今や時の人の感もある。アルバムを聴けば、たしかに ジョイス ジャヴァンシコ・ブァルキミルトン・ナシメント などのブラジリアン・ポップスの魅力を凝縮したような、カラッと乾いた空気感に満ちているのだけれど、それは「模倣」だとかそういう域のことではなくて、saigenjiの音像を表現するフォームとして、ブラジルや南米の音楽と「出会ってしまった」。そんな感じがするのだ。なるほど、と思う。言葉の響きや、きめ細かな空気感、そこにコンパイルされる諸々の風景や情景を孕む音は、日本でしか生まれ得なかったと納得してしまう。もっとも、沖縄とシンガポールで生まれ育ったという彼の場合、日本性云々を論調すること自体ナンセンスなのだろうけど。

saigenji  ギター1本を手にしたこの日のステージでは、ヒューマン・ビートボックスというよりは、ヴォイス・パーカッションという俗っぽい言い方がぴったりのパフォーマンスも交えて、音数が少ないぶん、逆に彼の色鮮やかな音像が際立ち、圧倒的で、ほんとうに豊かな風景を奏でていた。そしてやはり、なるほど、と思わされるのだ。有山さんとのセッションでは「saigenjiの笛、好きやねん」と促されて、ケーナも披露してくれるおまけ付き。

takada ren  「漣くーん」と、まるで甥っ子のように有山さんに呼ばれてステージに現れた高田漣さんは、高田渡さんのご実息ということで、有山さんとは実際親戚のような付き合いなのだとか。古着をキッチュにコンビネーションした服装で、背中を丸めて、ペダルスティールの前に座する。繰り出される音色は、まるで時間までもが間延びしてゆっくりゆっくりと流れてゆくような、優しい癒しのハワイアン・スティールから、ポツン、ポツンと弦の摩擦音で奏でるビートをその場でサンプリングして、そのサンプル・ループに合わせたクラフトワーク「ネオン・ライツ」まで。時間軸と空間軸を脆くも逸脱した、モノクロームの極彩色。避暑地のような心地よい冷気。 例えばトミー・ゲレロのエフェクタブルなツイン・ベース・ユニット、 ジェット・ブラック・クレヨンや、東京発ダビーなカリブ海往き LITTLE TEMPOといった、ひんやりとした海岸線の音景に目がない人には、是非お薦め。

tomovsky  「歌う精神科医」と有山さんに紹介された、TOMOVSKYこと大木知之氏(ex. カステラ、ですね)。精神科医というよりは、どう見ても躁病か酔いどれたアルコール依存症の患者の側に見えてしまうのだけれど…ろれつの怪しい口調そのままの歌声と、トモフスキ−2号、トモフスキー3号がサンプラーで客演してのネタ…もとい宅録ジャム・セッションで、会場を笑いの渦とほのぼの感とで包む。まずは有山さんとのセッション、そしてソロ、ふたたびTOMOVSKYが「じゅんくんでーす!」と有山さんを迎え入れてのセッション。二人で「鯖、ジン」を歌ったのだが、 掛け合い漫才のような二人のトークの印象の方が強すぎて…えっと、〈BASEよしもと〉じゃないよな、ここ。実際、演奏していた時間よりも喋っていた時間の方が長く感じたくらいなのだが、ある意味これも癒しのオーラを放つステージ、ではある。

rikuo  そしてリクオさん。有山さんと同じ京都の出身ということで、系譜的には最後の直系、だろうか。91年にヒットした「雨上がり」は当時FM802でヘーヴィプレイされていたのだけれど、「でも今日は、そらしゃあないわ」という柔らかな京都弁のフレーズに、なんだか救われた気分にさせられた人はどれほど多いだろう。改めて思えば、リクオさんの「雨上がり」以降関西弁を歌ったアーティストといえば、「SO.YA.NA」と三木道三くらいか。ちょっと寂しい気もする。リクオさんの歌も実際はスラングにこだわらない、センシティヴで、深く、熱く、より普遍的なものだ。 有山さんとのセッションではトレスとピアノでの「Baby おまえが好きだよ」「ウーララ」。思わず吸い込まれそうなほど美しい、極上の瞬間は、間違いなくこの夜のクライマックスだった。

encore  ふたたび有山さんの弾き語りで「みんな歌えるかなぁ? 歌えるよな?」と、会場全体で「梅田からナンバまで」をほのぼのと唱歌した後は、出演者全員がステージに会してのアンコール・セッション。ジェイムス・テイラーの日本語意訳なども飛び出して、有山さんの笑顔にだれもが感化され、その人柄が滲み出たような、本当に楽しくて贅沢な一夜を締めくくったのだった。

report and photo by ken


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Junji Ariyama

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