buttonThe Music @ Zepp Osaka (19th Jan. '05)

残像のプリンス


The Music
 マレーシアやインドネシアなどに伝わる影絵芝居がある。銅なのか鉄板なのか、艶めかしい音楽と共に、右にひっくり返したり左に振り向いたり、激しく上下を繰り替えして、ペラペラの黒いそれは時に激しく生命を映し出す。等身大より、悲しみの苦しみの喜びのその全てを肥大させ、姿に吸い込まれる影の存在を知る。

 9日の札幌を皮切りにスタートした日本8公演のラストとなるここ大阪。流されやしないだろうか、こなされやしないだろうか…CDをかち割りたくなるようなライブをただこなしやがったクソ口垂れるクソバンドに襲撃された後味の悪さが何ヶ月も引きずってるばかりに、期待に素直に心開けない自分が人で埋め尽くされた会場にぽつんと取れ残されたような悲しい気分だ。
 イモ洗い場と化したZeep大阪に発射寸前のオーディエンスが落ち着き無く沸き返る。聞かせてくれ君達の音を、心から躍れる君達の音楽をと胸の中に願い立ち尽くすしか出来ないでいる私。

 20分程押し、拍子抜けするほどルンルンと(Dr)のPhil Jordanと(G)Adam Nutterが出てきた。Adamのギターが掻き鳴らされ、Stuart Colemanのベース、Philのドラムと重なり合い始まる2ndアルバムからの1曲目"Welcome To The North" ボーカルのRobert Harveyの掲げる手と伸び渡る彼の歌声が、果てしなく高い天を覆う冬空まで駆け上がる。


The Music
The Music

 音楽によって一気に広げられる空間の光は、星が新たに生まれゆく為の儚くも力強いビックバンの輝きに似ていると思う。激しく広がり、その手持つ総てを吐き出し、そして訪れる静けさの中にやがて生まれくる新しい魂の鼓動を包み込む漂う欠片達。このちっぽけな水の惑星のほんの少し栄えた文明の中で、彼らが重なり連ねる音符は、楽しむ音となり、東の果ての小さな島に流れ着く奇跡のような幸運に素直に心ゆだねて居たい、そして揺さぶられるまま彼らの風に吹かれていた。
The Music
 "The Truth Is No Words"から"Freedom Fighters" "Cessation"続く"Human"と、そんなに古くはないが2ndを中心に新旧と織り交ざりながら、ボルテージもRobertと共に右に左に行ったり来たり。曲と曲のなにげな間にやはり、ルンルンと小躍りのRobert。そんなふとした隙間に、少年でも青年でも大人でもない彼らの芯が見える。偽りとか形とか本物とか、そんなもののもっともっと以前の「本当」が手の中にあるステージ。あまりの汗汁むせ返りの中で真冬に関わらずエアコンが最大に回された。

 "In To The Night"から"The People"へ。お〜、とうとう一旦幕締めかぁ!と思いきや、"Disco"へ続き"Bleed From Within" そして幕は閉じた。Roberの天高く掲げられたPeaceと共に。

 アンコールにヒット曲など持ってきて、引っ張ってハイ終わりと、クソ口叩く奴もいる中、何とも心地よく清清しく潔い退きようではないか。勿論、惜しむ空気に彼らを呼ぶ声は鳴り止まなかった。その中で皆満足の笑顔で引き波のように会場を後にする列ができる。
The Music  乾かぬ汗が服に染みた1月の風は冷たい。

ステージを見た目で今日も夜空を見上げる。宇宙の黒に重なる音楽の残像。耳にまだ響く楽しみの音が、いつのまにかポツンと取り残されたような悲しさを盗りさらわれていたことに気づかせてくれる。そしてまた笑顔が生まれる。そこに映るのは、光に包まれ肥大した吸い込まれる影だ。真上にある黒を見上げれば、目を閉じれば、フワリと現れる影を連れて、彼らの、長く続くであろうこれからと出会う道へと共に歩み出せた、私の新たな年のスタートである。

report by sora and photo by ikesan
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