button Taeko Onuki @ 鎌倉芸術館 (23th Dec '04)

妙子、たゆたう姿


 年末はみんな忙しそうにしていて、みんな「音楽なんて聴く暇ないんだよね〜」と口をそろえて言う。確かにやることは多いし、時間もない。街にはクリスマスソングが時間・場所はばからず流れているから、家ではゆっくりしたいという気持ちもわかる。ボクみたいな音楽ジャンキーならともかく、一般的にはそうらしい。そういった流れを汲んで落ち着いて音楽を聴くなら、ボクの場合日本のポップスに手を伸ばす。特に小沢健二や大貫妙子は神で、これらのアーティストの音楽を聴きながら、歌詞カード片手にベットへ座ってふわっとする。これがボクにとってヒーリングのようで、12月は特によく聴いた。

 という導入から、なんのことはないボクは大貫妙子のコンサートに行って来た。しかも諸々の事情で2回も観た。彼女は去年、シュガーベイブ結成から数えて30周年を迎え、今年で31年。すごいキャリアだ。ボクのヘタな説明をするまでもなく、「"Shall we dance?"やNHKみんなのうた"メトロポリタン美術館"を歌っているひとなんですよ」と言えば「あっ、そのひとなんだ」と皆言うに違いない。しかし、歌っているひとがどんな人なのか皆知らない。"知曲度"はあるが知名度は無い。なので紹介しよう。

 ボクは東京国際フォーラムと鎌倉芸術館に行ったのですが、2回ともほぼ同じセットリスト&同じようなMCだったので鎌倉を中心にレポートさせてもらいます。この"同じ"という所が"コンサート"って感じで、ロックンロールのライヴばかり行っているボクには懐かしくすらあった。

 鎌倉芸術館は、横浜からJR東海道線でちょっと行った大船という駅から10分ほどで着く所なんですが、大船という駅がいかにも庶民の街で面白い。駅から商店街沿いにアーケードがあって、アーケードを抜けると目立った店はなくなる。あとはポツポツと洒落たカフェやレストランがあるといった感じで、これから妙子を聴きに行く人間としては非常に和むというか、落ち着いて会場へ向かうことができた。

 会場内はしっとりとしたホールで、ステージとの距離もあまりなく、落ち着いた印象。ステージは、背後にアシンメトリーに垂れ下がった白いカーテンのような幕があるだけで、いたってシンプルな様子。ステージ上にはピアノやコントラバス、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが並んでいて、中央にバラの花だろうか、赤い花が付いたマイクスタンドが一本立っている。この日は大貫妙子恒例のアコースティックツアーで、「アコースティックは80年代からずっとやってきているんですよ」とMCで豪語していた。「昔はクラシックとポップスは全く別物という考えがあって、コンサートでストリングスを入れることは大変だったんです。入ってもらっても(ストリングスの人達が)退屈そうにしてるし(笑)」という話からもわかるように、今では当然のように行われているアコースティックコンサートも当時は珍しかったという話だ。日本でその垣根を壊したのは大貫妙子そのひとで、その根本たる原動力は彼女の歌だったであろうことは言うまでもないと思う。

 コンサートは大貫妙子を抜いたインスト曲でしっとり始まった。豊かなバックの演奏に導かれ、ワインレッドのドレスを纏った妙子が、ステージ脇からそっと歩いてくる。1曲目は"黒のクレール"。イントロから弦の美しさに圧倒され鳥肌が立ったのを覚えている。そしてそれ以上に鳥肌が立ったのは妙子の第一声である。あの澄んだ歌声を生で聴けるとは思わなかったので、『白い光の海を…』という歌詞が聴こえたとき、想像を絶する感動を覚えた。第一声に賭ける意気込みと、その声の美しさに震えないわけがなかった。

 序盤は坂本龍一が作曲した曲に歌詞を付けたという"TANGO"という曲が特に印象的だった。森の中で道に迷い、夜を彷徨い歩くような感覚。旋律美とはこういうものなのか。目をつぶると次々と風景が浮かぶ。物語のような音楽だった。また、"彼と彼女のソネット"や鎌倉ではスペシャルで演奏された"イパネマの娘"などの印象的な楽曲が次々と胸を打ち、荒んだ気持ちが洗われる。特に"彼と彼女のソネット"の最後『愛を諦めないで…』という歌詞なんて、まともな顔して聴けなかったです。いつも破壊だのカオスだの言ってるバンドばかりチェックしてるもんだから。

 コンサートならではというか、1曲もしくは2曲ごとに毎回MCを入れる感じというのも非常に懐かしかった。彼女のMCはちょっとすっとぼけたことを言ったり、音楽に対する真摯な姿勢をうかがわせる真面目なことを言ったり、素敵なMCが多い。「今度日本で公開される映画『Shall we dance』のハリウッド版では私の曲が使われていないんで、今から歌います(笑)」というMCから始まった"Shall we dance?"をはさみ、ラスト"星の奇跡"では星の煌きのような照明効果と相まって会場全体が幸せに包まれた。

 東京のとき、アンコールで出てきた第一声が「アンコールをありがとう」とかじゃなくて「このドレス可愛いでしょ!」というとぼけっぷりだったのが可笑しかったけど、アンコールで幼少時代に聴いて大好きだった"メトロポリタン美術館"が聴けて感無量であった。小学生の頃テレビに流れていた曲が、今も新鮮に聴ける素晴らしさ!感動しないわけがなかった。

 コンサートが終わって会場を後にし、また大船の街を歩いた。そのときの豊かな気持ちは忘れられない。シティ・ポップとはよく言ったものだ。街の風景の一つ一つがどれも美しくみえる。カッコイイ音楽もいいけど、やはりずっと聴いていけるような素敵なポップスを自分のなかで持ち続けることは、ボクにとってとても重要で、これからも大事にしていきたい。今年のライヴは大貫妙子で締め。ううぅ、感無量。

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