buttonElvis Costello @ Tokyo Koseinenkin Kaikan (8th Dec. '04)

初めてだからこその感動と驚き

Elvis Costello
 私が初めてエルヴィス・コステロを知ったのは、ルイーズ・ヴォス著の『最後のリクエスト』という小説を読んだ時だった。主人公がバンドの練習の帰り道、大きな声で"Oliver's Army"を歌いながら歩く。「いっそどこかへ行ってしまおう。ここではない、どこかへ〜・・・。」そして、そのくだりがコステロに興味を持つきっかけとなった。「喜びに満ちたピアノのスタッカートと、エルヴィスの鼻にかかった甘いテノールが、頭の中で何重にも交差した。」"Oliver's Army"を聴くために、初めて手にしたアルバムが『Armed Forces』だった。そこで"Accidents Will Happen"のメロディに惚れ込み、"Peace, Love and Understanding?"という名曲と出会った。けれど、コステロのすべてのキャリアを知るには、とても長い歴史とたくさんの曲だった。今さら過去を一緒に歩んできたようにすべてを理解することは難しいし、無理にそれをする必要もないと感じた。シャープな顔で大きな眼鏡をかけた若き日の姿や、これまでの盟友との共演、さらには今回のツアーで彼と共に演奏をするジ・インポスターズとの関係、それらを何も知らないまま、2004年、今のエルヴィス・コステロを見に行った。
 今まで、耳と目と本能だけで楽しむライヴだったらいくらでも見てきた。飛んで汗を散らし、極度の筋肉痛と無数の痣を体に残し、一仕事終えた充実感と楽しさを満喫するライヴをこれまで多く経験してきた。今回はまったくそれとは違う体験だった。見終えた後もジーンと心と体が痺れ、その余韻の中であの「エルヴィスの鼻にかかった甘いテノール」が耳の奥で歌い続け、ライヴを反芻し、感動は薄れることなく続いていた。もっと前からライヴを見ていれば良かったという悔しさを心の隅に感じながらも、今見ることのできた喜びを噛み締める気持ちの方が勝っていた。 Elvis Costello
Elvis Costello

 乾いたスポンジが水を含んでいくように、曲が演奏されるごとに、自分でもわかるくらいにジワジワと歌声が体に染み込んできた。椅子に浅く座り少し身を乗り出しながら、食い入るようにコステロを見つめる私は、まるで大好きなアニメを無心に見入りその世界にはまり込んだ子供。夢中だった。周りの世界をすべてシャット・アウトして、そこに存在するのは、自分とステージ上のコステロとジ・インポスターズしかいないような錯覚すら覚えるほど、のめり込んでいた。あまりにもコステロの声が気持ち良くて、とても衝撃的で、心が震えるのを感じた。
 ステージ上のコステロの姿は、思っていたより温厚そうで、身体全体からそれが滲み出ていた。そして、その笑顔は愛嬌に溢れていて人懐こい。ライヴ一曲目は"Accidents Will Happen"。最もお気に入りの曲を初めてのライヴで一番最初に聞けた喜びで、すでに感動は最高潮に達した。覚えた歌詞を彼の生声に合わせて口ずさむ。エルヴィス・コステロが目の前にいる、それだけで目に熱いものが込み上げてきた。そこから続けて演奏される曲は、私にとっては知らない曲のオンパレード。イントロが流れた時の観客の歓声や手拍子の大きさが、唯一それがファンにとって馴染みの曲だとわかる手がかりだった。でも、初めての私も長年のファンも、同じように感動を味わっているのがわかる。

 Elvis Costello
Elvis Costello
 歌の上手さの感動と驚きは、この日初めてみた者ならではのものかもしれない。マイクから一歩ずつ後退しながらフェイド・アウトさせていく曲があったり、"I Can't Stand Up (For Falling Down)"では、アカペラで歌い始めたり、ヴォーカル・テクニックは初めて見る私を圧倒させた。その中でも声量は驚くべきものがあり、地声はマイクを通さなくても、十分に後方の席まで響き渡っていた。伸びやかな歌声が、会場をすっぽりと包み込んでいった。こういう光景は、普段見ているライヴでは余裕を持って感じることができないものだと思う。人の輪の中で前も後ろもわからなくなりながら飛び続け記憶も定かじゃない状態ではなく、コステロとは、真正面から向き合って一曲ずつをじっくりと感じ取る。そんな余裕の中で、圧巻の歌声が驚くほどの衝撃と感動を私に与えたのだった。
Elvis Costello

 何十年ものキャリアと多くのアルバムを出しているアーティストを知るのは、今さらという気持ちと、到底追いつけない諦めの思いがある。でも、そんなことは気にする必要はないのかもしれない。そう思えるのは、この日エルヴィス・コステロを初めて見ることができたのがとても嬉しくて、知って良かったと心の底から思えるライヴだったからだろう。
 バラードでは静寂の中で、優しさと穏やかさが会場に降り注ぐ。アップテンポの曲では、ロッカーの魂を奮い立たせて力強くシャウトを繰り返し、観客を総立ちにさせた。唸るコステロの声に私が一番はじけた瞬間は、数あるロック・ナンバーの中でも初めて聴いた"High Fidelity"と"Uncomlicated"だった。手拍子する手は今まで以上に強くリズムを刻んで、掌が痒くなるのも構わずに叩き続けた。飛んで跳ねてと激しく体を動かさなくても、充分な興奮が得られた。何よりもステージ上の本人たちが、そこにいる誰よりも演奏を楽しんでいるように見えた。

 Elvis Costello

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