buttonPaunch Wheel @ Shimokitazawa Shelter (9th Nov. '04)

無名の新人
Paunch Wheel
 何気ない日常をリアルな言葉で表現し、それは光であったり、ときに影の部分であったりするが、誰もが感じていてでも忘れかけていたようなことをふと思い出させてくれる。そんな詩を70年代のフォークソング的な匂いのするメロディにのせて奏でるバンド、パウンチホイール。おそらく彼らの名を初めて聞くという人も多いだろう。そしてsmashing magの読者は洋楽を中心に聴くっていう人が結構いるのでは?という勝手な偏見をもっているが、そういう人にこそ聴いてもらいたい。彼らの歌詞を借りると「日本に生まれてよかった」そう心から思えてしまう歌を次々と生み出しているのだ。2000年に結成されてから、下北沢、渋谷などでライブ活動を行い、今年の10/23にファーストミニアルバム「リアル」が満を辞して発売された。そのCDのレコ発イベントが下北沢シェルターで行われたのだが、記念すべきこの日に彼らがどんなステージを観せてくれるのか非常に楽しみだ。

Paunch Wheel  シェルター入り口の階段まで溢れている会場は満員状態。彼らの登場に期待を膨らませながら待っていると、お馴染みの「巌流島の戦い」を渋〜い声で語るSEが流れ始めた。アルバムの一曲目でもある“イントロ”が鳴り響いた瞬間、会場中の全神経がステージに集中し、これから何か起こりそうな予感に包まれた。黒髪の一見マジメそうな見た目から発せられる最初の言葉は「僕は若者が嫌いです」というかなりインパクトの強いフレーズ。Vo.青木の詩は実にリアルで痛いトコロを突いてくるのだ。

 “walk”“5時半”とba.岸部がメインボーカルの曲が続く。この曲もvo.青木が作詞作曲をしているが、透明感があり伸びやかな歌声のba.岸部の雰囲気によくあっている。180cm以上ありそうな高身長の彼は、お客さんの頭の少し上を見つめながら歌っていて、その真っ直ぐ目線がなんだか見ていて気持ちよい。そしてこの上ない笑顔で歌う姿も会場の空気をより一層柔らかくしている。いい表情だなぁ。
Paunch Wheel

 数年前「声に出してよみたい日本語」という本が流行ったが彼らの曲はまさにそんな言葉を歌っている。特に“よるのうた”“リアル”は日本語詩の美しさが際立っている。何気ない日常も、日々考えていることもvo.青木の目から見ると美しい風景に様変わりして、ひとつひとつの場面がくっきりと浮かび上がり、それと同時にひとつひとつの言葉が心に刻み込まれいつまでも耳に残っている。「顔のわりにいい曲を歌う」(この日3バンド目に出演したガールハント某氏のMC)とまではいわないが、新しい曲を聴くたびに彼の日本語のセンスに脱帽してしまう。

Paunch Wheel

 人生で二度目といっていたアンコールは“まつりのあと”。「究極のフラれ唄」を作ることを目指す青木が自我自賛するのがこの曲。季節はずれのこの時期に聴いてしまうと妙にセンチメンタルになってしまい泣きそうだ。にしてもメンバー、なんて幸せそうに歌っているんだろう。満足そうにステージを終えた彼らの表情をみていたら今後がますます楽しみになってきた。レコ発というひとつの大きな区切りでもあるライブだったが、それと同時にこの日が新たなスタートとなるのだ。実はこのレポートのタイトル「無名の新人」というのも彼らの曲のひとつなのである。確かに今はそうかもしれないが「でっかいステージで/たくさんの人に見られてて/ドキドキしながら出番を待つ」そんな日がくるんじゃないかっていう予感をせずにはいられないのです。

 ライブハウスから徒歩20分の帰り道、立冬も過ぎ寒いはずなんだけど暖かく感じた。忘れかけていた大事なものを思い出したときのような。例えば昔の夢とか。こんな風に思えるバンドがもっと広まればいいなぁなんて思えるそんな夜であった。

Paunch Wheel
report by sleepy and photo by keco
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"リアル"
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