button Vermilion Sands @ Shinjuku D.O.M (30th OCt. '04)

「空前絶後のアウトサイダー・ミュージック」


 Vermilion Sands
 某日深夜、ヘロヘロになりがら帰宅してふと玄関脇のポストを見やると、中に少し厚みのある郵便物が入っていた。「はて?」と思いつつ手に取った瞬間、すぐにその中身が何であるのか了解できた。ヴァーミリオン・サンズのCD-Rだ。

 この丁度1ヶ月前、大阪のバンドであるヴァーミリオン・サンズのワンマン・ライブに行った。ヴァーミリオン・サンズは、ex.ハナタラシ/ex.ZENIGEVAの竹谷郁夫氏を中心に、SOLMANIAの大野氏、SOLMANIA/ex.OUTOの菅原氏、TAG RAGの前川氏、DOROROの森山氏、XOYOの今北&ホンジョウ両氏という、関西の凶悪そうなオッチャン達がわんさと集結したハードコア・ダブ・バンドだ。東京では初となるライブで、しかもワンマン。おまけにこのライブを収録した音源がCD-Rとなって、後日入場者全員のもとに郵送されるという、あまりに太っ腹な企画。台風が関東に接近し雨がそぼ降る中、向かった先は西新宿のD.O.Mというライブハウス。
 開演時間の8時を十数分過ぎた頃、ステージに現れたヴァーミリオン・サンズの面々。各々の刻んできた歴史が常人には全く想像が及ばぬほど深く濃いものであることは、その佇まいからも如実に伝わってくる。なんかもう平伏してしまってもいいぐらい、存在感がデカ過ぎるのだ。言うまでもなく、こっちが完全に負けであることは明白だ。さっきまで尻尾をブンブン振りまくっていた犬が、急に両足の間に尻尾を挟んで怯えまくっている図を想像してしまった。


 Vermilion Sands  ステージ中央にはスタンディング・ドラム、後方にツイン・ドラムが配置されたステージは、登場したメンバーでみるみるうちに埋め尽くされた。ライブ開始前の浮き足立ったムードから一変、はちきれんばかりの緊張感と静寂に被われた会場。演奏開始と同時に、ゆっくりと溢れ出た音が一気に空間を支配する。圧倒的な、あまりに圧倒的な音の塊。自分の足が痺れグラついているのが分かる。2台のドラムのヘヴィーなリズムと、菅原氏の特異な棒状のベース、歪みまくったギターの音が、激しく身体を貫く。リアルタイムでミキシングが行われる演奏に、竹谷氏の腹からふりしぼるような野太い声。初めて体感するその強烈な音像を前に、現実と非現実との境界線までも見失ってしまいそうな感覚に陥る。ラッパーのECDが著書「 ECDIARY 」で彼らの音を「重い」と評していたが、まさにそう。重すぎて、身体が地中深くにズブズブと沈み込んでいくようだ。
 今より遡る事6、7年ぐらい前に1度だけ、ヴァーミリオン・サンズの前身バンド、ホワイト・ゴスペリアンズのライブを見た事がある。大阪のFandangoというライブハウスで、対バンなどは全く覚えてないがそのライブを見終わった後「密林みたいな音やなぁ…。」と思ったことだけは、記憶に残っている。ダブが現在ほどメジャーな音楽ジャンルではなく、私にとっても殆ど未知の存在だった頃。全く無防備な状態でその演奏を目の当たりにし、率直に得体の知れぬ魑魅魍魎が潜む音だと感じた。その記憶が突然フラッシュ・バックのように蘇り、進行中のヴァーミリオン・サンズの演奏と繋がった。音の持つ恐ろしいぐらいの根源的な力を感じ、やおら大声で泣きわめきだしたくなる衝動に駆られる。


 Vermilion Sands  突如フロアからステージに乱入する金髪の男性。「誰やねん!?」と問う隙も与えんとばかりにすっくとマイクの前に立ちはだかり、物凄い形相で詩を読み上げる。読むというよりがなり立てる、と言った方が近いかもしれない。不明瞭な部分が多かったのだが「これが音である!」「だから君らはアホなのだ!」という部分ははっきりと聞き取れた。最初は正直ちょっと戸惑ってしまったのだが、ポエトリー・リーディングなんて洒落た物言いはできかねる、己の全てを吐き出すような壮絶な叫声に、知らず知らずのうちに惹き込まれていってしまった。詩を読み終えると一目散でステージを降り立ち去っていった男性に気を取られている間にも、徐々に音圧を増しながら演奏は加速し続ける。

 蠢くベース音、ズシリと腹に響くドラムスと奔放なリズムを描くパーカッション、その上にかぶさってゆくトランペット、キーボード、轟音ギター…。個々としては突出した音像を築きながら、全てが一緒くたになって底なしの混沌世界へと誘ってゆく。俄かに信じられぬほどの重厚な音の渦に飲み込まれ、快楽と空恐ろしさが交互に襲いかかる。ダブという手法は取り入れながらも、これはもはやダブではない。ハードコアでもノイズでもない。もはや音「楽」でもないのかもしれない。重層にして巨大な音の塊。私は今、とんでもないものを体験しているのだ。意識がブッ飛びそうになるほどの快感に身を打ち震わせつつも、幾度もそう感じ激しく戦慄した。


 Vermilion Sands   驚くべきことにこんなに濃密な音を構築しながらも、それを演奏するメンバーの表情に殆ど変化はない。MCもなければメンバー間のコンタクトも一切なし。ただ淡々とストイックに自分だけの音を出しているといった風情。にもかかわらずまるで言わずもがな、の暗黙の了解であるかの様に、唯一絶大のとんでもない音世界を現出させている。そこには理屈では計り知れない、何か霊的なものすら感じてしまう。
 最後には照明が落とされ、真っ暗闇の中で演奏していたヴァーミリオン・サンズ。漆黒の闇の中でただ音だけが轟々と吹き荒れるその情景はゾクゾクするほど官能的で、まるで涅槃に片足突っ込んでいるかのように意識が混濁していくのを感じた。「…ありがとうございました。」という竹谷氏の声でハッと我に返るも、暫くは身動きがとれず茫然と立ちつくしてしまったほどだった。

 今、手元に届いたこの日のライブが収録されたCD-Rを聴いている。薄れかけていた当日の記憶が蘇り、本当に本気で半端なくものっ凄い音に再び戦慄を覚えているところだ。狂気と幻想が入り乱れた、実に凄まじいライブだった。もしヴァーミリオン・サンズに興味を持った方がいれば、オフィシャル・サイトに行ってみてほしい。そこにはあの詩を叫んでいた金髪男性・ポルナレフ氏(ライブのときは分からなかったが氏もメンバーの一人)の、詩の全文が掲載されている。私の拙文など足元にも及ばないような、これぞヴァーミリオン・サンズの本質と言える深い内容なので、是非チェックして頂きたい。


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