矢野沙織 with ALEX CUBA BAND @ Shinsaibashi Club Quattro (28th Oct '04)
日本とキューバ、新しい才能の共演
part1
矢野沙織 with アレックス・キューバ・バンド〉と銘打たれた今回の来日ツアー。18歳になったばかりのジャズ・サクソフォニストと、やはり10代からベーシストとしてハバナの質の高い現場を経験してきたアレクシス・プエンテスとの共演は、なるほど、新鮮な興味に尽きないものだ。この日のヴェニューである心斎橋クラブクアトロに詰めかた、真摯なジャズファンといった趣きのやや年齢層の高い観客にしても、似たような思いなのだろうか。アレクシスのベースにピアノとドラムス、パーカッションを加えたリズム隊中心の編成は、どんなステージになるのかとますます興味を掻きたてられる。今回の来日メンバーのなかでもピアノのヒラーリオ・デュランは、ディジー・ガレスピーやソニー・ロリンズ、ブエナ・ビスタのオリジナルメンバーとも共演歴のある、職人肌の実力派だ。
まずアレクシスたちクァルテートで、アルバム『ウモ・デ・タバコ 』のなかでもとりわけダンサブルなマンボ“ピローポ”を名刺代わりに演奏すると、続いては矢野沙織を迎え入れての“砂とスカート”。
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狭いクラブクアトロのステージの下手に鎮座したグランドを迂回するように、遠慮がちに、視線を伏せたまま自分の立ち位置まで辿り着いた彼女。緊張からか、自作曲にもかかわらず出だしからタンギングすら定まらない。東京で高校の授業を終えて新幹線に飛び乗り、制服姿のまま開演直前に会場入りして、着替える時間が取れただけでもよかった方だった。もちろんサウンドチェックはおろか、場の空気に慣れる時間などないままステージに上がったのだ。
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それでも、『ウモ・デ・タバコ』のなかでも珠玉のバラード“ダニエルズ・ララバイ”、そしてアレクシスが矢野沙織のために書き下ろした新曲と続くセットで、まるでテナーのような、丸みを帯びたリリカルな音色のアルトを聴かせてくれた。いい音色だ。曲間で緊張と焦りの表情を隠そうともしない無防備さ、それが18歳のありのままの姿なのだと思う。ステージではその人の人間性がとてもよく現れる。素直な感性をもつアーティストなのだろう。
photo and report by ken
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日本とキューバ、新しい才能の共演 : 矢野沙織 with ALEX CUBA BAND (18th Oct @ Shinsaibashi Club Quattro ) : review and photo by ken
CD review : 『Humo De Tabaco』 : ALEX CUBA BAND (19th Oct) : review by ken
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