button CRAZY YOU-CO.PRESENTS GET WET vol.9
feat. HONESTY/CORNER/GROUP
@ Shimokitazawa Shelter (26th Oct '04)

新しい世界


 ものすごく久しぶりに、ライブを見てから即CDを買った。イベントで、たった数曲観ただけなのに、何だかちょっと、興奮してた。なのに、欲しい時に限って、なんで帰りに物販してないんだコノヤロウ、近所のユニオンは閉まってるしさっ! なんて子供みたいに内心イライラしながら渋谷のレコ屋に急いで寄って(しかも1件目はなかった)、手に入れた。HONESTY。アイゴンこと會田茂一と高桑圭のユニットである。CORNER目当てで会場に向かった自分にとって、言うなれば単なる偶然の賜物であったのかもしれない。しかし。これは何ともラッキーな偶然の出逢いだ。その筋では有名人だが、今までライブを観る機会を持たなかったことに、ほんと反省。凄いよアイゴン。此処ではない、どこか違う新しい世界に連れて行ってもらったみたいに、ドキドキしちゃったよ。

 この日はGROUPからスタート。ブレイクビーツ・シーンで知られているスープ・ディスクのTaichi&キリヒトのTakehisaと、仲間で結成されたユニットだそうだ。この日はギター、ベース、ドラムにトランペットという編成でかっこいいインストを聴かせてくれていた。が、残念ながら間に合わず、最後の曲の終わりしか聴くことができなかった。シェルター内は雨にも関わらずまずまずの入りで、全体的に落ち着いた雰囲気の観客が、じっとステージを見つめていた。

 続いてCORNER。9月に観た最高だったツアーラストも記憶に新しい、HUSKING BEEのVO.&G.磯部氏が、ソロ活動として、アコギ片手に気の合う仲間達と一緒に不定期に活動しているユニットである。基本メンバーはWATER CLOSETのG.伊東悦士くんで、一番最初にやったステージは2人きりであった。その頃はまだ音的にも不安定で、ISSONはこんなこともやりたいのかぁ。ハスキンと全然違うなぁ。なんて思う程度だったのだが、その後CORNERとしてソロアルバムを完成させ、ライブをポツポツとやるうちに、CORNERは短期間でもの凄く飛躍した音楽ユニットとなった。

 『新しい磯部正文の世界』を言葉でなく音で魅せてくれる、その場所を、磯部氏自らが生み出したという印象。しかもソロだからといって決して自己満足的なライブをやる訳ではなく、とても、外を向いたライブを見せてくれる。初期のハスキンで喉から声を出し、苦しそうに声を張り上げていた磯部氏とはまるで別人のように、現在の磯部正文は、『うたうこと』に目覚め、歌い手としての大きな自信と楽しさを噛みしめた歌声と演奏を聴かせてくれる。声の伸びもその軽やかな歌いまわしも、CORNERを経てハスキンに還元し、ハスキンで得たバンドサウンドの魅力をCORNERへ還元しているかのようである。どちらが欠けても今の磯部正文は居ない気がするし、どちらもあるから先へ進んでいける。今年4月に江田のオーガニックカフェ内にある、30人も入ればいっぱいになりそうな小さなライブスペースで観たワンマンでも、はっきりとCORNERとしての今後は明るいものであると実感できた。そしてその後観たHUSKING BEEのライブが素晴らしかったことに、さらに感動が増したものである。

 この日のCORNERはバンド編成。悦士くんに、打ち込みやピアノや隙間を埋める色々な音を創り出す『リベロ』と呼ばれていた今谷忠弘氏(HOTEL NEW TOKYO)。REACHやtoeのドラマーとして活躍中の柏倉隆史氏(相変わらずのイケメンだが、ドラムを叩いている時は凄い顔をしたりする(笑))。そして、おとといライブを観て「やっぱあなたのベースは最高です!!」と興奮して踊りまくった、smorgasのベーシスト、河辺真氏。先日の激しい演奏とはうってかわって、ここではウッドベースに持ち替えての参加である。前日にたまたまこの日のCORNERへの参加を知り、ますますライブが楽しみになったのだが、やはりウッドベースでも河辺くんは河辺くんだった。まろやか〜な音の中にもキラリンッとする鋭さを持っている。マジで凄い。smorgasのライブ後、弾けもしないのに思わずベースマガジンのインタビュー、読んじゃいました。

 ライブは"ビルの屋上で"からスタート。「会議室でふと思いついた ここの屋上に上がってみよう」から「会議室でまた思いついた ここの屋上でうたってみよう」と流れる、歌詞にもでてくるが気持ちいい秋の日射しの中では、ふとそんな気分になることもあるのかもしれないな、なんて思わされる、あったかい曲である。アルバム『走るナマケモノ』では1 曲目に収録の"あいさつ"から、言葉遊びのおもしろい"霧の浮舟"と続き、"気分屋ブブン"へ。この曲の低い声での歌い始めのところなどは、ハスキンの磯部氏しか知らない人には新鮮に響くのではないかと思う。

 ちなみにCORNERのライブには、休日には下北で雑貨屋廻りをしてそうな、かわいらしい10代ぐらいの女の子から、20代後半ぐらいの落ち着いた雰囲気の人まで、女性の観客が多い。ハスキンの暴れん坊KIDS達は、ほとんど見かけない。何故だろう?といつも思う。曲のタッチは全然違うし、もちろんダイブするような曲はないけれど、もし音楽だけでなく、それを作るミュージシャン・磯部氏の人となりに少しでも興味を持っている人は、ぜひ、CORNERのライブを1度は観てから、また、HUSKING BEEの曲も聴いてみてほしい。どちらにもそれぞれの良さがあって、どちらにも、それぞれの新しい曲の楽しみ方の秘密が、隠されているはずである。ライブを観ると、いつもそんなことを、ポヨンとした頭の中で、考える。朗らかなのだ。曲も人も空気も。

 "755℃"ではドラムとベースが入ったことで、曲のイメージがグンと拡がり、聴き応えが増していた。また、「完成度は…低いっちゅうか(笑)」と言いつつ披露された新曲、"角度の覚悟"(この漢字なのかは不明)は、物語性を感じさせる展開に、グ〜ッと引き寄せられるような曲。たぶん作品化されるまでにはまたアレンジや詞が足されたりするかもなー、と漠然とだが、感じた。一聴して良いと感じても、これからもっと良くなりそうな曲は、こんな風に感じるのかもしれない。

 ラストは10/2に発売されたオムニバス・アルバム『MY FAVORITE SONG WRITTERS』への参加曲(新曲)、"熱気球"。まだ未聴なのだが、eastern youthの吉野寿氏も参加の、おもしろそうなオムニバスである。海外のレコーディング・コーディネーターなどをしてきた人物(ケンジ氏)が始めたレーベルからのリリースで、アメリカのインディペンデントやオルタナティヴなロック好きにはニヤリのメンバーだそうだ。余談だが、HUSKING BEEで始めて日本語の歌を歌ったのは"後に跡"という曲で、吉野氏の「日本語詞で」というリクエストに応えたものだと、記憶している。あれから5年。思えば、あれが磯部氏が日本語で歌うことの面白さを発見した、第1歩だったのかもしれない。そう考えると、それぞれがいつものバンドなりユニットなりを離れたところで、自由に曲作りをしたというこのオムニバスに、磯部氏と吉野氏各々が2人揃って、磯部正文、吉野寿、として個人で参加しているのは興味深い。

 この日のCORNERはサクッとした感じで、7曲で終了。「そのうちエレキギターでも持って、もっとバンドバンドしようかな、と思ったり、このままでいいかな、と思ったりしてます」というようなことをMCで言っていたが、今の磯部氏は曲が次々湧いて出て仕方ない、といった感じさえ漂う、おそらく、ミュージシャンとして油が乗っているとてもいい時期なのではないかと思う。しつこいようですが、CORNERの活動は知っててもライブは観たことはない、なんてという人は、ぜひ1度、お試しあれ。

 と、最後はHONESTY。

 ライブを観るまで、アイゴンといえば音楽チャンネルで司会をしていたり、EL-MALOやFOEなどで活躍している人脈の広い人だということぐらいしか予備知識がなかったため、何とナシに見始めたのだが、いやぁ、軽い衝撃だった。この浮遊する音の心地よさ。さすがの演奏力。ソフトロックや音響系には弱い自分でも、うまく言葉に表せずとも、これが魅力的な音であり職人の成せる技(音)だということはわかる。

 ギターを持ってマイペースに歌うアイゴンと、始め髪を編み込んでないので今イチ顔が一致しなかったのだけど、あぁ、GREAT 3の! とすぐに気づいた、バリトン・ヴォイスの持ち主、ベースの高桑圭氏。ユニット名がここから由来しているのかはわからないが、ビリー・ジョエルの同名ヒット曲"HONESTY"が流れる中、ステージに登場した2人。真ん中に古い形のテレビを置いて、そこで流される60年代〜70年代ぐらいの古い映画のワンシーンが繰り返し繋がれた映像と共に、独特の空気感、そして歌詞というより言葉が音の一部として鳴り続けるような、五感を刺激される曲が、はっきりとした曲の区切りも感じさせぬまま演奏されていく。

 インストもあれば、ギター・フレーズが耳に残るスウィートなロック・ナンバーもあり。どの曲も、歌心に溢れ、合わさった2人の声は透明度が増していく。気がつけばCORNERのメンバーも観客に混じってフロアでステージを楽しみ、ハスキンのB.テッキンくんもにこやかにライブを見つめていた。そしてステージ袖には、ステージ降りてもお洒落番長・LOW IQ 01の姿も。そういえば、アイゴンとLOW IQ 01は昔アクロバット・バンチというSKA/PUNKバンドを一緒にやっていたんだった。確か15歳くらいからの知り合いだという話をどこかで聞いたことがある。

 この、アイゴンの空間の演出の上手さは、やはり長い音楽遍歴の中から自然と出てきた、観客にとっても自分たち自身にとっても気持ちいい部分を、四角じゃなくて丸く切り取って見せてくれようとするような、悠々とした、HONESTYとして持つ余裕みたいなものから生まれているのかもしれない。家に帰ってCDを繰り返し聴いて、そうか。まだ2人で始めて10カ月くらいなんだ。と思ったら不思議だった。とても馴染んでいたから。アイゴンにとっては、EL-MALOも、FOEも、このHONESTYも、どれも、會田茂一の一部なのだろう。気の向くまま。風の吹くまま。次はいつ観れるだろうか?どんな新しい世界に連れていってくれるのだろうか?とても、楽しみである。
report by oymi


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