LOS LOBOS @ LIQUIDROOM EBISU (7th Oct. '04)
テキーラ・ショットガン!
本音を言うと、野外で、朝霧で見たかったLOS LOBOS。夕暮れがたまらなく似合うだろう。2日目は雨が振りっ放しで、夕暮れどころではないと聞いているが、雨の中で歌う彼らも、見てみたかった。
見た目に関しては、間違いなくおっさんである。どこの国でも、当然日本でも、自分の田舎を愛し、祭になれば豹変し、ハッピや半纏を着て「えっさーほいさー」と神輿をかつぐようなおっさんがいる。うかつに「田舎はどこですか」と聞くと、スイッチが入るような人。LOS LOBOSもノリはなんら変わらないと思う。腹が出ていようが何だろうが、ステージに立って音を合わせれば、間違いなく「別格」「かっこいい」と言い切れるステージングとなるのはわかっているし、「ラテンもロックもすばらしいってぇーの!」と故郷を見せつけて、ステージ上から祭の高揚感を振りまいていくはずだ。もっとも、僕らはそれが欲しくて会場に足を運んでいるし、何よりも彼ら自体が好きでたまらないのだから、しつこいなどとは微塵も思わずに、ただただ楽しい気分に浸っていた。
スペイン語というのは巻き舌のせいか、ケンカ腰かと思わせるのだが「ムーチョ、グラシアス、アミーゴス!」の言葉は、テンションが上がる。
ロックンロールとラテンを絶妙な割合で調合し、陽気でありながら重さを兼ね備えた音世界は、トム・モレロ(AUDIOSLAVE)の地獄のようなヘヴィネスに通じているのではないか? と思わせるほど。さらにブルージーなリフをかき鳴らし、渋さまでもを醸し出すため、年齢層高めのフロアは歳を忘れて盛り上がる。
アコーディオンを持ち出してのラテンナンバーでは、エイトビートに合わせ、ある者は8回手拍子を打ち、すぐそばでは4回、前方の方では2回…とオーディエンスそれぞれが自分にあったリズムを刻んでいる。テキーラでやけた声なのかは知らないが、ハスキーで味わい深い声を持った2人のフロントマンが生み出すハーモニーとユニゾンが、ゆらぎや倍音のなかで光り、LOS LOBOSのヒーリング・ミュージックとしての一面を惜しげもなくさらしてみせ、パーカッションはドラムと意地を張り合いながら、変則的なリズムを刻む。
さて、一方のドラムなんだが、スネアのスナッピー(裏についているバネみたいな、ジャラジャラしたやつ)を生かした、さざ波のような音が心地よかったりする。3人のギターはいつ誰がソロをやりだすのかわからないので、目が離せない。しかも、とんでもない泣きのリフが不意に襲ってくるわ、キーボードの、音の粒が粗い「あいの手」は絶妙なタイミングで絡んでくるわ、バリトンサックスは重く引きずるような音を発し、体を共振させてきたりと、様々なアンテナに働きかけてくるので、たまらない。音をあげることもままならず、ひたすら陶酔していくしか術がなかったのだ。どうせだったら音圧がもうちょい欲しかったが、それはバンドのせいではないし。

アンコール後の客電点灯&退場SEが流れてもなお、手拍子をやめないオーディエンスにメンバーは応えてくれた。それもLOS LOBOSの楽曲の中で、最も狂い、弾けとんでいる"MAS Y MAS"で! 明らかに体力使う曲だから、予定調和のアンコールではやらなかったのだろう。本当に、熱いファンの前でしかやらないのだろう。そう考えると、無性に嬉しくなった。今度はショットグラスに注いだテキーラをクイッと飲んで、レモンにかぶりついてから乗り込もうかね!
|
report by taiki and photo by yusuke
|
|
|