buttonBRAHMAN @ Shibuya AX (1st Oct. '04)

Show your Show! 生き様を提示しろ


 「なぜ」私は「何」を求めて「いつ」どこへ向かって動き「始める」のか。道標を指し示す光はどこにあるのか。探すのは己の意志、それだけが全てなのか。それとも…?

 BRAHMANのツアーが幕を開けた。3年振りのNEWアルバム『THE MIDDLE WAY』が発売されてまだ4日。そして自己のツアーでこれ程大きな所でライブを行うのは久しぶりである。期待しないはずはない。誰もが始まりのその瞬間を目前に、胸を奮わせていた。ライブが始まる前、いつもの登場SEが流れただけで起きたダイブの波は、その証拠であったのだろう。

 そこで観たものは…。

 生身の人間の姿。恐ろしく、人間くさく、思わず微笑んでしまうほど真っ直ぐな、湧き出る音楽の泉で踊る、新しいBRAHMANの姿であった。

 度肝を抜かれるというよりも、面食らったことだろう。どうやって暴れてやろうかと意気込んで準備をしていた観客が、思わずそこで立ち竦んで、棒立ちになる。近い。あまりにもすぐ近くに彼らは居た。こんなにも彼らを近くに感じたことは、始めてだったかもしれない。張りつめた緊張感の中で蠢く鋭角的な鋭さは薄まり、静かに光る月の光のように、心の根に触れる旋律と『うた』が響き渡る。

 静かな感動が、そこに在った。4人の表現者と観客とが、共に創り上げていく未来への、次の扉を開ける瞬間。その、始まりの1時間に、幸運にも立ち合うことができた。

 オープニング。ドラムのRONZI、ギターのKOHKI、ベースのMAKOTOに続き、大きな歓声と共に、まるでピアノのように優しげなギターのイントロが奏でられる中、ヴォーカルのTOSHI-LOWがゆっくりとステージに現れた。そして始まった。NEWアルバムのリード・トラックでもある"A WHITE DEEP MORNING"。緩やかに始まり一気に爆発するサビへの展開は、正にライブのオープニングに相応しく、CDで聴く何倍も大きい、独自の世界観の強さを見せつけられた。おそらく、これからのライブのキーとなる曲だろう。

 定番曲ではないが、これまで所々でその威力を発揮してきた人気曲、"TONGFARR"同等のキー・ナンバーとなるのではないかと思う。続く"(a piece of)BLUE MOON"、"DOUBLE-BLIND DOCUMENTS"、前作から"deep"、合唱となった"BASIS"、そして"新作のラスト"SHOW "へと息つく暇なく駆け上がる。そう。一気に。何かを考える時間など、そこにはない。前方ではダイブとモッシュが繰り返されている。

 だが、歌詞を噛みしめるように歌い、聴く側にも十二分に伝わった"BY WAY"から、前作『A FORLORN HOPE』の1曲目"FOR ONE'S LIFE"。そして新作の1曲目"THE VOID"への流れ。ここがまず最初のハイライトであったと思う。

 潔く曲を引っ張る、凄味あるRONZIの貫禄のドラム。惚れ惚れするMAKOTOの激しいベース・プレイ。KOHKIのギターには深みが増し、おもしろいように音の隙間を遊んでいた。その上に乗る『うたうこと』に目覚めたTOSHI-LOWのヴォーカル。激しい曲ほど、その違いを痛感する。これまでとは違う聴こえ方をする。圧巻。これまで少し遠くから眺めていた、他者=オーディエンスとつながる覚悟のようなものを、その姿、その歌声に感じ、目頭が熱くなる。空間を包み込む音の存在感は、これまで時折語られた、TOSHI-LOWのカリスマ性の高さだけでなく、4人のバンドマン達が地の底から生み出した、新しい世界に勇み出る力。そのものだった。それは4人の繋がりの強さをも示すものでもあった。

 だからだろう。CDで聴いて、ここで暴れないでどうする?と多くの人が思ったであろうハードコア・ナンバー"CIRLE BACK"でも、不思議と聴き入る観客の姿の方が多く、フロアの最後列まで大暴れ、という状態にはならなかった。ステージで起きていること。その全てに、観客は集中していた。

 お馴染み"SEE OFF"、"Beyond The Mountain"から、第2のハイライト。それはその瞬発的な発火の眩しさにクラクラしたメロディーと、印象的な日本語詞を持つ"LOSE ALL"から、イングランド北部出身のフォーク/トラッド界の注目女性シンガー、BILL JONES(公式サイトはこちら)のカヴァー"FROM MY WINDOW"。そして"FAR FROM..."を歌いきった瞬間。作品の中ではコーラスをBILL本人に歌ってもらっているが、この時、居ないはずの彼女の声が、まるで聴こえたかのように思えた。

 そして"FAR FROM..."。ガラスのように、大切に、手の中でここに在ることをそっと確かめるように、歌をうたう。音を紡ぐ。すぐ近くで、語りかけるように、静かな感動を聴く側に起こさせる曲。まさか本編がこの曲で終わるとは。何という展開!! 皆、拍手をするタイミングなどわからずにいた。見とれているうちに終わってしまった。そんな感じだった。

 アンコールは "TREES LINING A STREET"から"ANSWER FOR…"。ラストは"PLACEBO"で終了。ラストに相応しい、"ROOTS OF TREE"に匹敵する名曲の完成である。「過ぎるすべての日々に背を向け 言葉もかけずにただ駆け抜けた」。そう、歌い終えた後、4人は深々と、おじぎをし、ステージを去った。名残惜しそうに。

 気がついてみれば、新作の曲は全て披露の1時間。とても人間味に溢れていた。今、この瞬間に4人が持つ、自然と湧き出る感情を、そのままの形で見せてくれた。嬉しかった。BRAHMANは、ここからこそがおもしろい。今日が始まりなのだ。そう、感じずにはいられなかった。包み隠さず、次の扉を、観客と共に、開けようとしている。道標を指し示す光を、己の意志、ただそれだけでなく、仲間と、これから仲間になり得るであろう、たくさんのオーディエンスと共に探す、新しい旅に出ていた。

 TOSHI-LOWから、静かな笑みが浮かんでいた。バンドがバンドとして、新しい場所へ、動き始めていた。現在発表されているだけでも来年2月までで56本。さらにその先、どこまで続くかわからないライブ。様々な場所で、日々体の一部として新作の1曲1曲が隅々にまで流れ落ちるまで、彼らはツアーを続ける。これはもう、行けるところまで行くしかない!

「Show your Show! さあ 生を提示しろ さあ姿を提示しろ さあ道を提示しろ」("SHOW")

彼らの生き様を、この目で、あなたの目で、確かめていくしかない。

report by oyumi

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