Shinjuku Folk @ Shinjuku Red Cloth (9th Sep. '04)
あの素晴らしい歌詞をもう一度
新宿red clothは新宿といっても賑わっているところから外れたところにある。新宿3丁目の伊勢丹から花園神社の裏を通り、明治通りを歩いて10分くらい。周りはオフィスとかガソリンスタンドとかで、強いて言えば明治通りの向こうがラブホテル街であるくらいで別に歌舞伎町みたく危ないところではない。新宿フォークというバンドも新宿のどの辺りの空気が似合うだろうか。でも、バンドを始めたころのことは知らないけど、今では「新宿」と「フォーク」がバンド名から外れていって、どんどんファンキーになっていく、その「黒さ」が濃くなっていく様子がとても面白い。
この日は、まず"好きです"から始まる。大久保のプロコル・ハルム風のキーボードに導かれて「僕に必要なのは熱いコーヒーと君の微笑み」と素直に語りかけるラヴソングで歌詞はいかにもフォークぽいのだけど、歌う小田切の気合いの入り方、そしてアクションは、ソウル/R&Bシンガーのようだ。マイクスタンドを持ち上げたり、跳んだり、狭いステージの上を走り回ったりと、全身で歌を届けようとしている。"夏が来た"はシャーラタンズの"The Only One I Know"を思わせるグルーヴィーなオルガンの音色をバックにしたファンキーな曲。新宿フォークには季節を歌った曲が多い。この日に歌われた歌の中に春、夏、秋、冬がそれぞれ登場したのだった・・・"春夏秋冬"と言えば泉谷しげるなわけで、やっぱりフォーク的な季節感をきちんと受け継いでいるということなんだろう。
"ベイビーソーキュート"は「君に子供が出来たんだってね、BABY」という歌い出しで「たまたま近くに来たから寄ってみたけど、いやぁ母子ともに元気で良かった。君とは一年前まで付き合ってた・・・って、オレの子供!?」というような展開が笑える、これまたファンキーな曲。このバンドは、コミカルにしてもシリアスなラヴソングにしても、一曲の中に物語を織り込むのが上手い。歌詞の中にドラマをつくることでは"27番地"が素晴らしくて、切なく澄んだピアノをバックに、今まさに彼女の部屋から出ていこうとする男が感傷に浸る歌なのだけれど、場面がどんなところか、季節はいつなのか、彼女はどんな人だったのかが歌詞を聴いているだけで、ちゃんと浮かんでくるのだ。丁寧に描いているおかげで、歌の中の悲しさに自分を重ね合わせることができる。この曲がすごいのは、後半になるにつれて演奏が激しくなっていき、ついにはキーボードにディスクグラインダーを当てて火花が飛び散ってしまうまで一気に展開することだ。いつ観ても素晴らしい。ポップな"会えたね"を挟んで、この日ラストの"冬が終る頃に
僕は"は"27番地"のハッピーエンド版という感じ。"27番地"〜"会えたね"〜"冬が終る頃に僕は"というこの日の流れは別れから出会いを経て、悲しみをくぐり抜けてトンネルの先に明かりを見つけたような喜びが伝わってくる。
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report by nob and photo by keco
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