button Milkteath @ Takadanobaba Club Phase (30th Aug '04)

「リアルなものはこの瞬間に」

 今年、サマーソニックに出たJUNIOR SENIORを観ていて「打ち込み+ロックンロール+ノスタルジックな雰囲気」ということをやろうとしているバンドって日本とかデンマークとか区別なく、国を超えて同時進行的に発生しているんだなぁと感じた。それこそミルクティースとJUNIOR SENIORが対バンしたら面白いものになるんじゃないか、どうしても日本のインディーズバンドのファンと洋楽ファンが交わりにくいものだから、こういう対バンは実現して欲しいと願う。 milkteath

 この日の高田馬場CLUB PHASEはコンピレーション盤『聴視激エンターテイメント!2』の発売記念のイベント「聴視激エンターテイメントショー!〜エンタメ系祭り〜」で5バンド出て、そのうちキャプテンズとミルクティースが出るというので、仕事を終えるとすぐ駆け付けたのだけど、残念ながらキャプテンズは半分くらいしか観れなかった。トリにはミルクティース。いつものようにSEを駆使してラジオ番組のようにライヴは進んでいく。

 まずは大型台風のせいで都内も荒天ということもあるのかないのか"台風ベイビー"で始まる。音自体はマッドカプセル・マーケッツやブンブンサテライツのようにベーシックなトラックを打ち込み(テープか?)に入れておいて、4人の生楽器による演奏が加えられるのだけど、マッドやブンブンと比べるとよりポップで、メロディアスで、エンターテイメントで、それこそJUNIOR SENIORのようにパーティーバンドとして場を盛り上げるために何をすべきか、ということにこのバンドの努力が注がれている。ステージの上では、シャクシロッキン、Vicky、アサコジャパンの3人が暴れ飛び跳ね、ポップなのにノイジーでロックンロールなギターを鳴らしまくる。シャクシロッキンは、あまりの激しい動きにかけているサングラスがすぐふっ飛んでいく。するとポケットから次々と新しいサングラスを取り出してはかけ、またふっ飛ぶの繰り返し。要するに仕込みなんだけど、大ネタ小ネタ問わず仕込みにかける手間が半端じゃない。
milkteath

 ミルクティースの曲は一度聴いたらすぐ覚えられそうなキャッチーなところが最大の特徴である。そしてキャッチーなメロディにノスタルジックなものを忍び込ませている。打ち込みとか電子音とか取り除いて曲の素の部分を見れば、60年代、70年代、80年代の要素がノスタルジーの道具として絶妙に混ぜ合わさっている。"ニューウェーブ・ワルツ"は80年代のいかにもエレポップな電子音が飛び交う中、L⇔Rのようにポップミュージックの神様に愛されたメロディに乗せた歌詞に『ラバーソウル』とビートルズのアルバムタイトルを織り込み、リズムは3拍子のワルツであるという上手いバランスの上に成り立っている曲だし、アサコジャパンがちょっと調子外れに歌う"いとしのランブレッタ"は80年代のアイドル歌謡のパロディぽくもあり、その歌の振り付けを女のお客さんたちは真似をしているのだ。そんなお客さんたちは、男のメンバーに囲まれながらも自分の見せ場を確保するアサコに自分を投影しつつ憧れるのだろうか。もっとも、この日は歌詞を忘れて「ラララ・・・」とごまかしてVickyに突っ込まれていたのだけど。

 本編最後のフェイクなインタビューにしても、アンコール待ちのときの○崎○さよしのサンプリングにしても発想次第でこんなに面白いことが出来るんだということに挑戦していっている。それが実験とか前衛とかにならずに、全て分かりやすいエンターテイメントに昇華しているところ、そして自ら「嘘、おおげさ、まぎらわしい」と称し、それを引き受ける覚悟があるところに、このバンドの魅力があるのだ。真面目な人、シリアスなものがエンターテイメントより価値があると思っている人、素朴な演奏の歌こそが本物だと思っている人にとっては、このバンドを受け入れることができないかもしれない。だけど、打ち込みだろうがなんだろうが、爆音の中で踊った瞬間瞬間に真実は宿っていないのだろうか?心躍るメロディラインがずっと頭の中に残っているのはリアルじゃないんだろうか?ぜひ偏見を棄てて体験して欲しいバンドである。
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report by nob and photo by yusuke

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