button V∞REDOMS @ Ebisu Liquidroom (8th Aug. '04)

「オレンジ色の発光体」
 LIQUIDROOMのバーカウンターで煙草をふかしていると、突然「ヒューッ!」という歓声が挙がった。時計は丁度、開演時間の8時を指し示している。慌てて手にしていた煙草を揉み消し、会場に入った。前売りチケットが即日SOLD OUTだったという事実を証明せんばかりに、ぎっしり満員のオーディエンス。舞台上を一心に見つめる無数の人々の目からは、過剰なまでの「期待」感が溢れ出ている。無論、私もそのうちの一人に含まれていた訳なのだが、これほどまでに「期待」が膨れ上がっていると今度はその空気の重圧に押し潰されそうになってくる。「みんなもっと肩の力抜いて見ようぜ〜」と思う一方で、ボアは自分が想像している以上の「何か」をもたらしてくれるはずだ、という手前勝手な願望がふつふつと沸き立つ。胸の鼓動が全く止められない。

 ボアのライブを見るのは約8ヶ月ぶりのことである。2003年の大晦日、横浜で行われたカウントダウン・イベントに出演したボアのライブは、サウンド的には申し分なく素晴らしいものではあったが、演奏時間自体が短かったせいもあり、終了後は一抹の物足りなさが心に残った。だからという訳でもないが、このライブが行われることが決まったときの喜びは、格段のものであった。東京でのライブ、しかもワンマン、そのうえ7・7や8・8などの数字のゾロ目が好きなEYEらしく、8月8日午後8時開演。「こりゃ絶対ヤバいことになる!」とその時点で妄信。そりゃ、リラックスして見れる訳がないのだ。

 そうこうしているうちに会場に入ってから15分ばかりが経過。ステージ上にEYEが登場した。両手には水晶玉のような透明の球体を握っている。それをEYEが前後左右にブンブン振り回すと、ビューン!とかビーッ!などというノイズ音が鳴り響く。過去に初めてこの楽器(?)を見たときは

 全くの無色透明だったはずだが、この時はオレンジ色の光彩を放っていた。EYEの身体の動きに合わせ、手の内にある球それ自体がまるで意識を持っていて呼吸するかのように、濃淡をつけながら鮮やかに光り輝くさまが幻想的だ。伸縮自在に体を動かすEYEの姿は、手にはめたゴム手袋の中にバイブレーターを仕込み、全身を激しくグラインドさせながらノイズ音を放出していた、かつてのハナタラシでのライブの姿を想起させる。時代を経て、音やスタイルは変遷しても、本質的な部分では全く変わってはいないようである。時折マイクを通してない生の声で雄叫びを上げるEYE氏に、観客からも大きな歓声が沸き立つ。まだ他のメンバーも登場しておらず、演奏らしい演奏も始まっていないというのに、この尋常ではないほどのエネルギーの交歓は何事だろう。

 楯川、ヨシミ、ATRの3人のドラマーがステージに現れ、円形にセッティングされたドラムセットに着席。観客がドッと前方に押し寄せる。激しさを増しながら打ち鳴らされるドラムの響きに合わせ、徐々に身体が突き動かされていくのを感じる。ミキサー、ターンテーブル、シンセなどを操るEYEの指揮に合わせ、幾重にも覆い被さっていくリズム。その得も言われぬ至高のグルーヴを創出する6本のスティックが、自分の脳内の快楽中枢をも連打しているかのよう。 大地を揺るがすほどの強力な音の振動に、もはや破裂寸前の観客の熱狂。大挙して前方に押し寄せる人々の波にもみくちゃにされながらも、必死の思いでステージ右端の柵の位置を確保し、体勢を整えながらライブに挑んだ。

 聴き入れば聴き入るほど頭がこんがらがってしまうような、複雑に入り組んだアレンジ。過去のライブで何回か聴いたことのある曲をプレイしてるはずなのに、「あれ?こんな曲だったっけ?」と幾度となく思わされる。目にも止まらぬ速さで驚異的な手数を繰り出しているメンバーの所作が、太鼓の音のみで会話を交わしているかのよう。そのせいか激しく緻密な音塊の中においても、緊張感は余りなく始終緩やかなムードが渦巻いているように感じられた。

 後方のスクリーンには動物の群れやミステリー・サークル、太陽のコロナ、ピラミッド、渡り鳥etcの映像が次々と映し出される。ボアと交互に見比べていると、その演奏が何か人智を超えたもののように感じてくる。たとえばナスカの地上絵とか、前方後円墳とか、ストーンヘイジとか、古代遺跡を目の前にしたときの、一瞬クラッと意識が彼方に遠のくあの感じ。年代や次元を超えた一個の奇跡が、視覚を通して脳下垂体に与える衝撃と畏敬の念。それと同質のものをボアに感じる。今この瞬間、LIQUIDROOMの上空を、UFOの大群が押し寄せてきたとしても、何ら不思議とは思わないだろう。ともかく得体の知れない大きな力がボア・コンボの中心部から、大量に放散されていた。

 中盤、EYEがステージ前方に立ち、またも生声で絶叫を繰り返す。最初何と言ってるか聞き取れなかったのだが、どうやら「サーーーーーーーン(=SUN)!」と叫んでいることに気がついた。そのバックのスクリーンには、オレンジ色に光輝く太陽の映像。両手を大きく広げ、身悶えながら「サーン」「サーン」と繰り返すその姿は、まるで太陽と一体化しダンスしているかのよう。それに呼応するヨシミの歌声は、陽光を受けキラキラ反射する水面の様に、狂騒と静寂の狭間で悠然とたゆたっていた。

 ブレイクの合間、シーンと静まり返っている会場に向かい「静かすぎるで!ほんまに!」と笑いながら言っいたEYE。すぐに「EYEちゃーん」と野太い声援が飛び交う。それまで必死の思いで一音一音を噛み締めようとするあまり、頭の中を支配していた緊張感が一気に弛緩していくのを感じた。

 最後の曲を終え、 「有難う」と両手を合わせお辞儀をしながら立ち去るEYE及びボアの面々。拍手は当然鳴り止まない。数分が経過しアンコールに応え、再びステージに登場したEYE。その頭には、ベトナム風の編笠を被っている。続いて登場した他のメンバーの頭にも同様の帽子が。屋内なのに暖かい陽射しが照らしつけているかのようなムードが漂うなか、演奏が再開する。本編と同様の激しいリズムを主体としたサウンドオとは趣を変え、ヨシミの弾くキーボードのゆるやかなメロディーを基調にした、絶妙なチルアウト・サウンドが耳に溶け入ってくる。湖面を小舟でゆるやかに漂流しているような、まったりとしたムードが会場全体を覆い尽くしていく。ヨシミの足踏みベース・ペダルや鍵盤ハーモニカの音色も、サウンドをより色彩豊かで有機的なものにしている。 絶え間なく生命の営みを続ける果てしない大地の息遣いの様に、ボア・サウンド内では太陽が昇り、鳥がさえずり、雲が流れ、木々が揺れ、雨が降り、花が咲き乱れ、濁流が流れたり、噴火したり、隕石が落ちてきたり、大地が避けたり…と、眼前で目まぐるしく風景が移ろい変わっていくようだ。全身に音がみなぎっていく。静かに演奏を終え、にこやかな笑顔を振りまきながら去っていくメンバー達を見送った後、その余韻を噛み締めるかのように暫くの間、まんじりとも動かずステージを眺めている人が何人もも居た。
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