Jack Johnson / Donavon Frankenreiter @ Namba Hatch (4th Aug. '04)
『波の音が聞こえない』
去年の朝霧ジャム。土曜日の朝からずっと曇り空で、周辺の牧場の牛たちのために零時以降の音出しはしない取り決めの、最後のアクトだったケミカル・ブラザーズでとうとうスコールのようにバシャバシャと降ってきた雨。日曜日は雨こそなかったもののずっと曇り空だったわけだが、お昼頃、ちょうどドノヴァンのステージのときにだけ雲が晴れ、ずっと厚い雲に姿を隠していたシャイな富士山が、ドノヴァンの伸びやかで屈託のない演奏に誘われるかのように、晴れやかに顔を除かせたのがなによりも印象深い。当の本人はステージでことあるごとに「Beautiful day !!」と繰り返していた。輸入盤すらまだリリースされていなかったドノヴァン・フランケンレイターが、すでに築き上げていたトリップ・サーファーとしてのユニークな地位としてではなく、ミュージシャンとして日本でブレイクした瞬間は、そんな美しい日曜日だったのだ。
朝霧ジャムの直後にやはり親友ジャックと東京、大阪と回ったように、今年はやはりともに出演したフジロック・フェスティヴァル直後のツアー。ただ会場は前回のクアトロから一回りも二回りも大きくなっている。それはビルボード誌でアルバムチャートをトップまで駆け上がったジャックとともに、ミュージシャンとしてのドノヴァンの評価も、この一年で確かなものになった証しだろう。満員になった難波ハッチのお客さんにはとくにフジロック後夜祭といった雰囲気はなくて、年期の入った40代、50代の年輩のサーファーにも支持の篤いジャックとドノヴァンなのだけれど、この日集った9割9分の若い男女の客層を見ると、結構特定のファッション誌の名前が上がるかもしれない。
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朝霧ではバックにドラマーを従えただけのシンプルな構成で、逆にその伸びやかで弾むような、明るく奔放な演奏がとても印象的だったのだけれど、今回はドラム、ベース、フェンダー・ローズ+メロディカというバンド構成。音数が増えた分、いい意味でラフなんだけれど、とてもしっとりと落ち着いた演奏を聞かせてくれた。これはジャックにしてもそうなのだが、下手に音数を増やすよりも、ジャックがアンコールで一人、静かに弾き語りを聞かせてくれたように、よりシンプルなスタイルの方が彼らの人柄がストレートに滲み出て、音楽をより味わい深いものにしているような気がする。常に波の音がサウンドトラックにある生活をしてきたジャックとドノヴァンが、そんな生活を犠牲にしてまで自分のバンドを率いてツアーに明け暮れるなんて期待していないし、恐らく本人も僕らも望んではいないのでは、とも思うのだ。
この日のハイライトは、ジャックのセットにドノヴァンが、まるで隣の家に遊びに来たかのように姿を現して歌った"Free"。ちょうどステージのバックには椰子の木のシルエットが映し出されていたのだが、やっぱり屋内の小屋よりも波の音が聞こえる場所か、せめて自然の光やサンセットが見えるところで聞いてみたい。ドノヴァンはフジロックが終わった月曜日に、湘南でライヴを行ったらしいけど。見れた人は羨ましい限りだ。
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mag files :
photo report (04/08/06 @ Shibuya AX) : photo by keco
『波の音が聞こえない』 (04/08/04 @ Namba Hatch) : review and photo by ken
photo report (04/09/30 @ Shinsaibashi Club Quattro) : photo by ikesan
photo report (04/09/29 @ Shinjyuku Liquid Romm) : photo by maikokko
夏はまだこれから... (04/09/29 @ Shinjyuku Liquid Romm) : review by chihiro, photo by maikokko
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