button Fall Out Boy @ Shibuya Club Quattro (28th June '04)

飽きないパワー・ポップ



 久しぶりのクアトロに足を踏み入れると、すでにライヴが始まっているのかと思うほどの大音量で、ポップ・パンクのBGMが流れていた。どれもこれも何度も聴いた馴染みの曲ばかりだし、すべての曲に懐かしさすら感じているのに、どのバンドの曲だか思い出せない。誰だっけ・・・?パンチラインが始まるまでの間、ブリンク以外のバンドは、思い出せずじまい。けっこう好きだった曲ばかり流れていたのに、こんなに簡単に忘れてしまうもんなんだ・・・。
Fall Out Boy
 そんな思いにふけっているとBGMがフェイドアウト。ようやくライヴが始まるかと思ったら、ステージに現れたのは、黄色のジャージに赤いパンツのおじさんだった。沖縄出身の「ルンルンきんじょう」だって。知らないね、誰も。このおじさん、突然CMソングを歌って会場を沸かせていた。ノリのいい若者たちは、ドンキの歌でも大いに盛り上がっていた。こんな予想もしなかった前座のウォーミング・アップが終了して、いよいよパンチラインが登場。

 パンチラインというバンドは、フォール・アウト・ボーイのオープニングで初めて知ったバンドだった。スマッシュのバンド解説によれば、mp3でいくつかの大御所バンドを押さえつけ、約1ヶ月もの間1位をキープした、と。物凄いことになりそうだという触れ込みは、ライヴを見る限り、どうやら誇張ではなさそうだ。スタート直後のオーディエンスのシンガロングを聴いたら、知らないのはもはや自分だけなのかもしれないとすら思う。オーディエンスの盛り上がりは、物凄いとしか表現のしようがない凄まじさ。メンバーも、それを見て「スゴイ、スゴイ」と日本語で連発。弾け飛ぶポップなメロディが、清々しく包み込む。オーディエンスの想像以上の熱気と楽しんでいる姿で、ステージ上のボルテージも急上昇。キャッチーなメロディに溢れた彼らの曲は、始終スタミナ満タンのオーディエンスを飛ばし続けた。パンチライン終了後に、最前線で暴れまくっていたと思われる男の子が後方に非難してきて一言、「ヤバイよ、楽しすぎる!」。この言葉にパンチラインのライヴのすべてが集約されているのだった。
Fall Out Boy  セット・チェンジの間のBGMは、mxpxで始まり、ブリンクやNFG。NFGに至っては、みんなが一緒に歌う声まで聴こえた。BGMですら今にもモッシュやダイヴが起こりそうなほど、場内は小休憩どころか、パンチラインからの熱気をキープし続けていた。そんなところに、またしてもルンルンきんじょうが登場した。オーディエンスのノリはイマイチ。二度目はない。前説は諦め逃げるようにフォール・アウト・ボーイを呼び込む。でも、もうちょっと見てみたいと思ってしまう。このおやじ、何者なんだ!フォール・アウト・ボーイは、スクラッチのきいた意外なBGMに乗せて登場した。その途端、前方へ人が流れ込み、フロアは一気にピーク時超満員電車状態になった。指を突きたてシンガロングするオーディエンスの姿、これ以上ないほどのモッシュの渦にもまれるフロア。どの曲でも聴こえてくる合唱。”Calm Before the Storm”や”Dead on Arrival”のキュンとくる切なさたっぷりのメロディが琴線に突き刺さる。”Where is Your Boy”は歌いだしから大 合唱。

決して満員とは言えないクアトロでフォール・アウト・ボーイと一緒に歌うその歌声は、どこの大きな会場のどんなにメジャーなバンドのそれにも負けていないように思えた。自分と同じように彼らをいいと思う人がこれだけいるだと思うと、嬉しくてたまらなかった。フォール・アウト・ボーイの曲はクセになるメロディ・ラインとポップすぎないロックとハードコアをミックスさせた、どこか今のパワー・ポップ・パンク勢とは一味違うサウンドだ。シカゴ出身だからか、お気楽さよりも知的さが滲み出ている。そんなふうに思うのは、彼らの曲のタイトルが長くて難しいから、か?それだけじゃないが、常に暖かなほかの地域の人たちとはどこか少し雰囲気が違う。キリッと引き締まった、ポップさに走り過ぎないシリアスな雰囲気もある。
Fall Out Boy Fall Out Boy  ハードコアに雄たけびをあげるピート(b)のシャウトは、際立ったキャッチーなメロディの中でも全然違和感がない。ライヴの最後は、ベースをローディに預けて(彼がピートの代わりに演奏)マイク片手にステージど真ん中を陣取り、シャウトしまくっていた。その姿はまるでロリンズ・バンドさながら。ヴォーカルのパトリックはキュートなルックスで、ちょっと高めの彼の声は、ハードさを和らげている。そして肩まで伸びた柔らかそうなキラキラ金髪で一番真面目でおとなしそうに見えるアンディ(d)は、ステージに上がるとすぐにTシャツを脱ぎ捨て上半身裸になり、ハードなビートを叩きだす。そのビートがキッズの神経を刺激して弾けさせる、彼らの曲の要にもなっている。ギターのジョーは、コマのように回り、スーパーボールのように飛び跳ね、一時も動きを止めることなくギターをガンガンかき鳴らす。メンバーの演奏している後ろで空手着(?)にハチマキ姿の外人と、同じく空手着を着た狼の一騎打ちが始まったが、その意味するところなど考えるだけ無駄なのか。そんなドタバタ劇も含むパワフルな彼らのパフォーマンスは、見ている人を思いっきり引き込む。

 その激しい動きっぷりは目を見張らせるものがあった。荷物も投げ捨てて、モッシュの中に飛び込みたい衝動に駆られるライヴは、久しぶりだった。

 パンチラインもフォール・アウト・ボーイも日本語を一生懸命に覚えて、オーディエンスとコミュニケーションを図っていた。自分の話す英語が早すぎないか気にしながらも、たくさんオーディエンスとの会話を楽しんでいた。ライヴ終了後、階段を降りてロビーにいくと、出番を終えたパンチラインがとびきりの笑顔で出迎えてくれた。これからフォール・アウト・ボーイも交えて、下りて来るファンと気さくに話をしたりするんだろう。せっかくだから少し話でもすればよかった。そんな後悔を引きずりながらも、とても弾んだ気分でクアトロを後にした。次に新しいアルバムか再来日でまた彼らと会えるのが今から楽しみだ。メジャーのバンドもいいけれど、これからもこういう新しいバンドを見つけてどんどん追いかけていくぞという野心に駆られたのであった。
Fall Out Boy

- setlist -

01.INTRO
02.OPENER
03.DEAD ON ARRIVAL
04.CALM BEFORE
05.NOBODY PUTS BABY
06.HEY CHRIS
07.CHICAGO
08.HOMESICK
09.PATRON SAINTS
10.NEW SONG???
11.WHERE IS YOUR BOY
12.LOVE WILL TEAR
13.SATURDAY

*原文のまま。
*NEW SONGはやらず。
Fall Out Boy

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