oasis, The Bees @ Lighthouse, Poole UK (23rd Jun '04)
コミュニケーション名人のヒーロー
オアシスについて語らせたら酒が無くてもその話題だけで一晩を越すことができる。そう言っても過言で無いほど自分にとってギャラガーズはヒーローだ。どんなくだらない記事でもNMEに彼らの名前があれば、買いたかったCDを諦めてそちらを選ぶし、どれだけ新譜が酷評されても金を払う価値があると思っている。『(What`s The Story?) Morning Glory』によって自分の生活の大半を音楽にシフトするようになってしまって以降、彼らの存在はデカく、盲目的信仰をやめることは無い。
しかし、ある時だけそれについて疑問を抱かざるをえない時がある。それは彼らが日本にやってくる時だ。別に福岡の人間ではないのでバンドとしての彼らに不満は無い。だが、いつもいつもそのステージは釈然としない気持ちを抱かせて幕を閉じてしまう。「この煮え切らなさはなんだ?」と思いながら…。
さて、2004年の初め頃オアシスは穏やかでない状況を迎えていた。はかどらないアルバム制作、ドラマーの脱退、消えないソロの噂などなど。すわ解散?という極論まで飛び出したもんだから「もう観られなくなるかも」という不安に苛まれ、俺は辞退の噂も飛び交うグラスとのチケットを即座に手配した。するとバンドは峠を越え、さらに今回のお披露目ライヴまで決まってしまった。
娯楽施設も皆無のつまらない田舎町ポール。小学校の体育館のようなライトハウスで開演を待つ間、前述の疑問に対しての知人のアドバイスが頭をよぎる。「現地でオアシスを見ると、それは解決できると思うよ。」
まずはコールドプレイのクリスマーティンをアルコール漬けにしたような男がボーカルをとる、エレキなゆず編成の二人組が程よくお茶を濁す。一曲終わるごとに(時として演奏中にも)気持ちがいいくらいのブーイングを浴びつづけた彼らは「ファック」とさわやかに言い放ち、足早に会場を後にした。
その緊迫した雰囲気をひきずって次に登場したザ・ビーズ。21世紀のビーチボーイズとでも言い表せそうな、綿密に作りこまれたポップサウンドがイギリスの各メディアでそこそこ評判を呼び、先日のワイト島フェスティバルなど今年のフェスティバルを回る彼らだがまだまだ新人。どうなることかとヒヤヒヤしていたが、バンドのグルーヴが持ち味の一曲目"No Atmosphere"がうまい具合にオーディエンスとコミットしたのだろう、この国には珍しい会場を温める本来の前座としての立ち位置を見事に演じていた。若さと渋みを兼ね備えたメンバーの笑顔を仰ぎながら、「フジの要チェックアーティストが一人増えたな」などと考える。
さあ…舞台は整った。ステージ前方を陣取っていた私も次から次へとやってくるガタイのいいラッズらに潰されていく。「オウェイシス!オウェイシス!」「乳首出せ!」「カーモンイングランド!」という怒号、回し飲みされる黒ビール…戦々恐々とした雰囲気の中、照明が落ち、先代ドラマーであるホワイティーのリムショットが戦いの火蓋を切る。
そう、出囃子はもちろん"Fuckin` In The Bushes"!!
「and you wanna break our wall down? Are you gonna' fucking try it? Well, you go to hell!」というボイスサンプリングからすでに大合唱という信じがたい世界に突入する。
正直、自分はもうそれだけで感無量になっていた。散々「セカンド以降はクソだ」「もう終わった」「ライヴが盛り上がらない」と日本で聞かされてきた自分の偶像が、メンバーが登場してもいないテープ垂れ流しの曲だけで大歓声に包まれているなんて!こんな嬉しいことってあるもんかよ…!
こみ上げてきた感情だけで窒息しそうな自分にオウェイシスは、そしてイギリスはさらにそのボリュームを上げろと催促する。サンキューの一言も笑顔も見せない、あのブッチョーヅラでもってリアムが曲名を吐き捨てるように告げたのは、よくクライマックスに使われてきた"Rock`n`roll Star"だった。鳴り物入りで加入したリンゴ・スターの息子は、先代の重戦車みたいなドラミングではなく、初代ドラマー・トニーの軽やかさを受け継いだみたいで(ヘッポコさは幸い継承されなかった)ファーストアルバムの重要な要素である疾走感が巧みに表現されていた。という感想は後付けで、加入決定後ひたすらに練習を繰り返したのだろうと分かる、ぎこちなさも感じさせるビートは"Morning Glory"では若干違和感を感じたことを告白したい。もちろん強すぎる主観からに過ぎないけれど。
だが、そんなこと構ってなんていられない。異常ともとれるフロアの盛り上がりは一体なんと表現したらいいのだろう…。将棋倒しから立ち上がればまた逆方向に倒れ、スピーカーのリアムの声を全く聴こえなくさせる雄叫びのような大合唱を周り全員がしているカオスそのもののライヴハウス、まるで自分を97年の天神山にタイムスリップさせたかのようだ。
そして、(まさかの)新曲が会場をクールダウンさせ、そのままバラード"Stop Crying Your Heart Out"が鳴る。ビシャビシャのTシャツ姿であたりを見回せば、そこには今まで嵐のようだったキッズがまるでウィーン少年合唱団に立ち尽くしてシンガロングしている。それをブルーの照明が間接的に照らしていくもんだから、俺はうっかり涙を垂らしてしまった。
本場で観るオアシス…それは日本のそれとは完全に趣が違う。アンコールで"songbird"の時、おそらく日本のライヴでは見向きもされないものになるだろうこの牧歌的な歌が、ここで(後のグラストでも)ハイライトの1つになっていた。その時初めて私はシンガロングの一体感、それこそがオアシスの作り出せる至高の空間であり、このバンドの最高の魅力なのだと気付いた。
音楽好きのイギリス人とオアシスの話をする際、ほぼ必ずといっていいほど「アレはガキが聴くもんだからなあ」とソフトに否定したがる傾向がある。洋楽至上主義を唱えていた自分と照らし合わせた上で考えると、オアシスはあまりにもありふれている故に反発してしまいたくなるらしい。これは我々がサザンオールスターズに辟易していると言いながら、ビーチに着けば口ずさみたくなるようなものと似ている。このステージで披露された2曲の新曲が全くといっていいほど歓迎されなかったように、彼らの音楽的進化など誰も望んではいない。それはこの世界一のシンガロングバンドの宿命に違いない。
それを踏まえた上でもアンコールの名曲の連発はやはり格別で、オアシスファンとしては少し哀しくもあるが、誰もが歌っているこの光景を見回せばそんなことなど些細な悩みにしかならない。こんなサイコーの曲を彼らが持っていて、それをこうして共有することができる。そう感じていられるだけで、このバンドをいつまでも自分にとって欠かすことのできないものに位置付けていけられる。"Don`t Look Back In Anger"のこっちのライヴではおなじみとなったオーディエンスとノエルが交互に歌うやり取りに、またもダーダー泣きながら、俺はここに来たことを本当によかったと思っていた。
終演後、ライトハウス近くのバーで地元アーティストが"Live Forever"を弾き語りしていた。決して上手くは無かったが、バーの客の大合唱は通りをはさんだバス停にまで響き渡っていた。これでいい、これがいいのだ。
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[ setlist ] :
Fuck`n In The Bushes
Rock`n`roll Star
Bring It On Down
Supersonic
Morning Glory
Columbia
A Bell Will Ring
Stop Crying Your Heart Out
Little By Little
The Hindu Times
Cigs& Alcohol
Live Forever
The Meaning Of Soul
Acquiesce
Champagne Supernova
[ Enchore ] :
Songbird
Wonderwall
Don`t Look Back In Anger
My Generation
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mag files :
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photo report : (02/10/02 @ Osaka Jo Hall) : photo by ikesan
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Disc review : Standing on the Shoulder of Giants by Oasis : review by baby-uncle
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