第ニ回日本ロックフェスティバル @ 高円寺無力無善寺 (20th - 27th June '04)
「極楽に一番近いフェス」 - part.2 -
6月23日
KIRIHITO :
満員の客がドッと前方に詰め寄せる。酸素は次第に薄くなり、じっとしていても顔中に汗が浮き出てくる。人々が見つめる視線のその先で黙々とセッティングを行うKIRIHITOの2人。観客以上に汗を噴出させ相当につらそうな様子。だがいったん演奏が始まると、セッティングにかかった時間を払拭するがごとく、怒涛の音群を飛沫のように浴びせ掛ける。
ドラムの早川氏の背後からライブを臨むことになり、その迫力のドラミングの全貌を目の当たりにできたのであるが、早川氏の大樹のような巨体から繰り出される余りにしなやかで敏捷なプレイには、心底驚嘆させられっ放しだった。火の粉でも飛び散らんばかりの烈しいスティックさばきの中に、無駄な動きは一切なし。かたや、飄々としながらも緩急・剛柔入り乱れた手練の技を繰り出し、観客を乱舞させるギター&ヴォーカルの竹久氏のプレイも、毎度のことながら圧巻としか言いようがない。
この2人に加え、ゲスト・メンバーであろうか、サックス奏者のプレイも実に素晴らしく、もとからKIRIHITOのメンバーであったかのような存在感をもって、全く遜色なくKIRIHITOサウンドと融和している。なによりサックスの自由度の高い音色が、KIRIHITOのスペーシーでダンサンブル、かつ遊び心たっぷりな音の側面を一層増大させる結果をもたらしているのだ。熱さと酸欠のせいでヘトヘトになりながらも頭が、手足が、音のうねりに突き動かされる。ライブが終わっても、興奮と疲労のせいで暫くは茫然自失の状態のままだった。
The latest album is ライブ・シングル
こだま和文 :
登場した時点でひどく酔っているようで、足元もおぼついてない状態だったこだま和文氏。満面の笑みを浮かべ会場を見渡したり、水笛を鳴らしたりかなりご機嫌な様子。その無邪気な所作に思わず笑みがこぼれてしまう。もっと硬派な人だと認識していたので、その印象の落差にまず驚いた。こんなにラフでファンキーなおっちゃんとは!こだまさんの周りを取り囲むようにして連なる人々に対し、「よう来たね〜」という感じで表情をほころばせ、柔和な目線をなげかけている。
手にしたトランペットをおもむろに吹き始めるが、思ったようにいかないらしく「ちゃんと吹けないよ〜」と、これまた楽しそうに呟く。ろれつの回らない口調で「今日はビートはないけど…ビートはそれぞれの中にあるもんだから。」という内容のことを言ってた。酔っ払いの言うことは大抵訳が分からぬものが多いけど、こだまさんの言うことはよく分かる。うん、ビートはそれぞれの中で鳴らすものなのだ。
小さい頃教会の日曜学校に通っていて、その頃に習った賛美歌(?)を演奏する予定だったらしいがどうもうまくゆかず、マイク片手に「俺は今日はみんなと喋りたい。いい?」と尋ねるこだまさん。うなずく観客。まず、都営住宅で女子中学生が5歳児を突き落としたとされる事件のことを話し始め、「ほんとたまんないよな。」と幾度も呟く。そこからブッシュや戦争のことにも話が及び「俺は世界から全ての宗教がなくなればいいと思ってる。そうすれば戦争は起きない。」と語る。それにしても、ちゃんと観客の目をまっすぐ見据えて話す人である。こだまさんに手を伸ばせば届くぐらいの至近距離に位置していた私も、その眼力に射抜かれてしまった。とびきり優しいけど、こちらの心の内まで読み抜いてしまうかのような強力なまなざし。言葉を発せずとも目で会話しろと言わんばかりの、抜群の説得力を伴っている。こちらも思わずくわっと目を見開き、うんうん相槌を返す。
こだまさんの話をもっと聞きたかったのだけれど、終電が押し迫っていたというショボイ理由で止むを得ず無善寺を後にするしかなかった。残っていた人達は、こだまさんから一体どんな話を聞いたのだろうか?今となっては悔やむしか術はない。
The latest album is A SILENT PRAYER
report and photo by uko
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「極楽に一番近いフェス」 : (04/06/20 @ 高円寺無力無善寺) : review, photo by uko
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