buttonKenji Endo @ Shibuya Club Quattro (3rd June '04)

35年間変わらず輝く「よろこびのうた」


遠藤賢司_Kenji Endo
  エンケンは今年35周年目ということで、そのキャリア、経験が凝縮されたライブだった。演奏全てにそのキャリアを感じ、一番すごいと思ったのが、きっと何も変わってないんだろうなと思わされたことだ。同じ場所から、いつまでも同じ音を出していて、でもバラエティがものすごい豊か、その豊かっていうのは、人間てやつの引き出しがどのくらいあるか知っていて、それを使いこなそうとしている、そんな人だった。 遠藤賢司_Kenji Endo

  赤の背中からの照明をバックに歪んだギターで、エンケンが歌い始める。詩の朗詠ともラップとも取れるようなトーンで、エンケンは赤裸々に唄う。

   その唄とバックの赤の照明が混ざった世界が、ひとつの風景を僕に連想させた。それは70年代のフォーク世代が歌っていた、貧乏でモノは買えないけど、こころは輝いてて、でも貧しい現実はいつも厳しい・・・かぐや姫の「神田川」のような背景で、そのときの恋愛の唄がはじまる。男と女が出会って離れる、たったそれだけのことのなかに、どれだけそれに真剣で、切実で、そして2人はお互いにお互いを無知だったのか、なぜ2人は離れたのか、離れてどれだけ切ない思いをしたのか、そんな厳しい現実を歌う。この唄も(男と女が)離れた当時に歌っていたら、そのときの様子、テンション、こころの衝撃を客観視しきれてなかったり、いい思い出だけが残っていたりなど、どこか「甘ぬるさ」が残ってたりするものだけど、35年経った今、詩こそ変わらなくても、歌声のヒリヒリとしたテンション、それらから生まれてくる場の空気、雰囲気が、その当時の記憶をさらに鋭く描写されている様に感じさせられる。まるで晩年になってから鬼のような冷静な視点で書かれた、若き頃の自身の恋愛話をモチーフにしたツルゲーネフの「初恋」のようだと感じた。

  この眼力、描写はベテランならでは。大人になった今だからこそ、当時の「いのち」がどれだけ必死であり、無知でもあり、真剣であり、妥協が無かったり・・・そしてそれらがどれほど美しかったのか・・・そのような「いのち」が、歌声のテンションと、場の空気、雰囲気で表現されていた。
遠藤賢司_Kenji Endo

  ゲストとして参加したミュージシャンと同時に、ライブ自体の構成もすばらしかった。各ミュージシャンが一人ずつステージに現れ、まったく違うテンションのジャムが繰り広げられた。ベースのトーベンがアコギでベースを弾き、エンケンと魂が一緒になったかのようなジャム、佐久間が笛をとってイマジネーション豊かな曲、デュレイがかった歪んだギターで世界を破壊していくような曲、元はっぴいえんどGuitarの鈴木のファンキィでアツイロックなフレーズとのジャム・・・、すべてがそれぞれの世界を持っていて、エンケンでそれらがひとつの線につながっていた。

  エンケンのステージは、時間を超越したところに存在する。20代半ばの僕が、渋谷でちょっと買い物をしてから・・・そんな今の時代にいるという感覚をあっという間に、おそらくは70年代ころ?の世界に引き寄せられる。厳密に言うならその世界は70年代ですらなく、いつどんな時代になってもエンケンがギターを弾けば、エンケンが生きているなかで感じたその瞬間になる。red hot chilipeppersのギタリスト、John Fruscianteは曲についてこう言っている。「俺にとって曲は時間軸とは離れた3次元の世界にあるんだ」エンケンのライブもまさにそんな感じだった。MCでも「その瞬間を再現しようとひとつの核が見えればいい曲だと思うんです」みたいなことを言っていた。
遠藤賢司_Kenji Endo

  そのような切実張り詰めたテンションだけではなく、もうブリバリボリなロックンロールも披露してくれる。気がついたらさっきは一人ずつステージに出てきた各ミュージシャン総出でロックンロールが始まる。エンケンが激しくまた盛り上がる。ステージから降りて、背中に小さいアンプをしょってそこから音を出し、僕の隣に来てくれた。(目があったりしてないのだけど)僕の存在を雰囲気で察したといった瞬間、背中を仰け反らしチョーキングをかまされ、僕はエンケンに「超ファンキィ!」と絶叫してしまった。そんなテンションでエンケンは客フロアを徘徊していた。最後がものすごくロックンロールで終わるのかと思いきや、また自身のルーツであるかのようなブルース弾き語りでエンケンのステージは幕を閉じた。

  凄い、凄すぎる。遠藤賢司の35年目のステージは、よろこびのうたを変わらず歌い続けたら、続けられたらどうなるのか、その答えでもある気がした。遠藤賢司はその形を「純音楽」と名づけたが、僕にはその音色は、命が与えられて絶え間なく輝くよろこびのうたに感じる。
report by taku and photo by hanasan

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The official site of

Kenji Endo

http://www.enken.com/



live schedule : (予定)
7/16 (fri) : Kichijoji Star Pine's Cafe
7/23 (fri) : Koenji Show Boat
8/1 (sun) : Folk Jamboree 2004 in Iwamizawa, Hokkaido
8/28 (sat) : Kawasaki Shimin Museum
*詳しくはこちらでご確認ください。


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遠藤賢司

"東京ワッショイ" (傑作中の傑作です)



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Kenji Endo

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