Theatre Brook @ Shibuya O-East (1st June '04)
向かう道は前にだけ在る
ギターのペダルを踏む音まで聞き取れる。静寂の中灯るロウソクは、「野蛮なローソク」にかけてか平和の象徴か。「TYPHOON SHELTER」、息をひそめるように聴き入る。それが終えると、予告通り勢い良く走り出した....
theatre brookの魅力といえばやはり陽性のダイナミズムだろう。死、絶望を匂わせるフレーズの裏にも、それにより生を確かめようとするような力強さを見出せる。ベストアルバム発売時、再び「ありったけの愛」がヘビーローテーションで掛かっているのを耳にし、そのスケール感に改めて心が動いた。佐藤タイジが「道」、と言えば平原に伸びる道が、「太陽」、と言えば強烈な陽射しが現れる。多くのアーティストが口にしても想像のものでしかない光景が、肉体で感じられるのだ。
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ステージでは間髪入れずベスト、『The Complete Of THEATRE BLOOK』の曲が飛び出してきていた。ギターだけでなく、声の感覚的な自在さに驚く。今まで女性コーラスと思い込んでいた箇所もタイジ(しかも大部分は恐らく表声)によるものだった。
今回のTシャツはWAR IS NOT OVER。と、くれば当然反戦的な面を強調しない訳がない。トークで暴走の兆しが見えるとゲストの玲葉奈にサラッと遮られ、代わりに仕切られていた。(ウケた)トークでかなり美味しいとこ取りの「ファミリ!」と紹介されていた彼女は3曲参加。これまで失礼にも容姿と声の好い女性、という印象以外なかった。持ち歌の上手いのは当然とし、アンコールでの「SOULDIVER」。もう一人のゲスト、森敏之を含めた全員での絡みの中で特に、シンガーとしての彼女の力量を感じた。 |
タイジの弾き語りとゲストとの時間が過ぎれば疾走を再開する。ベースの中條卓の「静」がより佐藤タイジの「動」を際立たせる。ロックでインストゥルメンタルに自分が惹き付けられる事は滅多にない。そして「無実の子」で一幕を終えた。
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多分衣裳を変えて出て来るだろうとは思っていた。汗で遠目にも肌が透けて見える程貼り付いていたから。アンコールの彼はTシャツ、短パン、プラス...キャップ。わたしの勝手な佐藤タイジ像がやや崩れる姿で登場。大して気にする隙もなく進められる。なぜここまで走るんだろう、走れるんだろう。2時間55分。最後まで激しく、何度も髪を乱しキャップを落しながらプレイし続けた。
軽く放心状態。あれ、「心臓の目覚める時」はやったっけ?ああ、じゃあまた次に懸けようか。
「ドレッドライダー」のバイクにはあたり前のようにバックギアはない。この先ずっと必要としないで。大きな愛を抱えてこの世界を走っていって。道は前に続いている。 |
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report by chihiro and photos by hanasan
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2004
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