SPACE COWBOY @ GAN-BAN NIGHT SPECIAL [BREAK ON THROUGH] vol.1, Nishiazabu SPACE LAB YELLOW (28th May '04)
「煌き」
2002年から2003年初旬にかけて、1枚の12インチが多くのDJを魅了した。スペースカウボーイ"I Would Die 4 U"は、ダフトパンクの"One More Time"センセーション以降「猫も杓子」もといった具合にフィルターディスコハウスが質を問わず大量にリリースされたあの頃、食傷気味になっていた我々にプリンスの同タイトル曲にオモチャのようなサウンドとビートを付け足すという王道で、駄目押しのように届けられた。
しかし、このトラックはそんな事情を構うことなしに売れた。売れまくった。元ネタが既に名曲なのだが、その理由として最もふさわしいのはやはりこの曲が持つ「キラキラ感」というものがずば抜けていたからに違いない。パーティを楽しむ純粋な気持ちに共鳴するこのトラックは、例えばDJ Kentaroのショーケースでピーク時に必ず使用されるなど、数々のイベントにてフロアの人間を笑顔にしたのだった。
そんなパーティタイムの立役者ことスペースカウボーイが、レコードショップ岩盤の取り計らいを経て日本にやってきた。日付が変わる頃にイエローに到着したのだが、入り口は長蛇の列。fujirockers.orgにて岩盤側から話を聞いていたが、まさかこれほどとは...と、この夜を皆が待っていたことを知って驚く。中に入れば両手を伸ばせないほどの混雑振りにまた驚きだ。 ==> 関連記事「燃えろ岩盤イズム」
そういえば面白いことに気が付いた。螺旋階段からフロアを眺めれば、その客層が実に幅広いものだということが分かる。いかにもクラブ通ってます的なレディー(黒ビキニなんていうセクシーさんもいらっしゃいましたよ!)の隣でいかにもなロッキンガイズが頭を振っている。音が一貫しないオールジャンルイベントというものは得てしてサウンドごとでフロア客総入れ替えという悲惨な光景が起こりがちだが、クラブフィルターっぽい純テクノなトラックにもニルヴァーナの"Come As You Are"(dirty funker rmx)にも諸手を挙げて迎えているというこのイベントはちょっと珍しい。スペースカウボーイがそれだけ広く指示を受けているのか、それともオーガナイズ側のアティチュードがうまく浸透しているのか?まあ何にせよ楽しいことはいいことだ。熱気がカベやパイプに結露を起こさせるほどのフロアを抜け、ドリンクをもう一杯いこうか。
午前1時近く、ビートを足したコールドプレイの"Cloaks"がかかっている辺りで一際大きな歓声が挙がりはじめる。どうやら我々のお目当てが準備を始めたようだ。予定時間を少々過ぎてからスペースカウボーイがスタートした。アルバム『Across The Sky』からの四つ打ちトラックを、ライヴエレメントの"Be Free"など彼の楽曲と同じテイストのもので補強しつつ繰り広げられた二時間は、近年稀に見るアゲっぷりを展開したのだった。先月行われたBODY&SOUL(いささか趣向は違うとはいえ)のように押し付けがましいくらいの愛などではなく、フロアから自然発生するあの至福へのポジティビティはもう筆舌しがたい。ライトでフロアを照らした時に見えたあの一帯の笑顔の素晴らしさといったら!そんな気持ちを代弁したかのような後半”Funky Love”の長いタメ、そしてアンセム”I Would Die 4 U”のカタルシス時なんて、頭上を熱気の霧が覆っていたし、狭い螺旋階段の踊り場すらダンスフロアに変えてしまっていた。それだけにラストの強引な終わらせ方は???だったのだが、それは「フジロックでまた会おう!」という彼の発言に免じよう。いやー、いい夜だった。
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煌き (04/05/28 @ Nishiazabu SPACE LAB YELLOW) : review by ryoji
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