Squarepusher Japan Tour 2004 feat.luke vibert,jamie lidell,saidrum,joseph nothing @ LAFORET MUSEUM ROPPONGI (15th May '04)
興奮はあった。パーティーは無かった。
ラフォーレミュージアム六本木という、私をはじめ多くの人がこの日初めて足を踏み入れたに違いない場所で、行われたスクエアプッシャー公演。一般的なクラブとは異なり、入り口手前に滝なんか流れている様子を横目で見ながら、最新作『Ultravisitor』での音響サウンド路線に合わせてこういうところにしたんだなと思い、アンビエントな空間を期待して入場する。
先ずは十一時頃にステージに立ったジェイミーリデルにちょっとした感動を覚える。例えるならばラップトップ時代のビズマーキーとでも言おうか、ノイズとまではいかないがハウスと言うには無機質という不思議なオケでエフェクトをかませた歌心(?)を披露する珍奇なステージは、次に控えるスクエアプッシャーに比べるとかなり満足度の高いものであった。
そして続くスクエアプッシャー。3000人弱は詰め込まれているであろう(この日のチケットは当日券合わせてソールドアウト)満員の観客は皆、彼に対する期待を声で表したが、それは長く続かないものだった。
1人でステージに立ったトムは、達人の域に達しているベースとシーケンサーだけをひたすらイジり回す。ツマミをひねって生まれるノイズサウンドは、私が公演前に抱いていた予想とは違うスクエアプッシャー然としたものだった。ロックバンドのライヴのような歓声はその轟々とした音の連続を前に、1人また1人と口を閉じていき、しまいには身動きすらとれなくなってしまっていた。これは彼のサウンドに対する楽しみ方の一つともいえるのだが、残念なことにスピーカーから出る音が驚く程に小さくて、意識をノイズの中に投影していくのはかなり困難なものであった。
もっとも、これはベースをもっと強調したいと思ったトム側の要請だったのかもしれない。この日会場にいた人間の多くがPAに対する不満と同じ位に褒めちぎっていたのが彼のベースである。”I Falcrum”などで打ち出される、一見乱暴なように見えて実は計算されているその構成力とテクニックはやはり他と比べようが無い程素晴らしいものだった。
さて、ノイズの連続に耐え切れなくなって一度フロアを抜けた際に強く感じたことだが、今回の公演について、私はいくつか苦言を漏らさなければならない。ロッカーやクロークが無いことも少々納得がいかなかったし、件のPAに対する不満もある。だがそれ以上にロビーが野戦病院のようになっていたのには閉口した。音の趣向からしてダウンする人間が普段より多くなるのは明白であったと言うのに、ここまで人を詰め込んでしまったのは果たしてどうだろうか。フロア内にい続けるというのもフラッシュライトが中心で基本的には真っ暗という環境がそうさせてくれないし…。このラフォーレミュージアムを選んだことは少し失敗だったような気がしてならない。
勿論フロアにいる人間の一部に見られるマナーも一因としてある。譲り合いに欠けるというか空気が読めないというか…私の付近で明らかにシラフではないと思われる集団が常識を欠いた行動を取り続けていたせいもあるのだが、トータル的に見て主催者やアーティスト側とフロアとの歯車が噛み合っていないと感じる時が幾度となく存在した。
“Come On My Selector”そして” A Journey to Reedham”という感動的な流れをフィナーレで披露し、満足してフロアから出た先に目にした足の踏み場も無いロビーの惨状…続くルークヴァイバートらもそれぞれに好演を見せたが、オーディエンスの視点から言えば課題も多く見えた一日であった。
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