SORROW @ Ebisu Milk (29th Apr '04)
『MILK CROWN』
|
今では伝説となったロックパーティー『696』発祥の地、恵比寿みるくでのライブにはメンバーをはじめ、特別な思いがあったはずだ。また、かつて『696』を地元で見た客が上京して、みるくで見るというのも特別だろう。いや、特別だった。何を隠そう俺もその一人で、数回見ているSORROWのライブはもちろん、とめどなく流れるロックンロールに、いつも以上に舞い上がっていた。
|
 |
MASATO脱退前のライブ映像が収められたDVD『Night of confusion』リリース記念のパーティで、MASATOに代わって入ったYO-HEYが叩く、というのは矛盾しているかもしれないが、そんなことはどうだっていいと俺は思う。SORROWは常に新しいことにチャレンジしながら、変わり続ける。そもそも、SORROWは川村カオリ個人のプロジェクトからバンドへ移行した時に「個人のありのままの姿を表現してくれればそれでいい」という所から動き出しているので、「脱退」の二文字にダメージを受けるよりは、様々な活動を経て自分の道を見つけ出したMASATOを祝福することのほうが勝ってしまう。金髪のトロージャンとなっていたMASATOの楽しそうな表情が、なによりSORROWというバンドを物語っていた。原点・ASSFORTの新しい形を探し、そして見つけた彼の生き方に異論を唱える者はいないだろう。
|
|
川村カオリが映画の撮影を終えて、メインの音楽活動へ戻ってきたことと、DVD『Night of confusion』リリースや新メンバーのお披露目が合わさった、SORROWの新たな出発。さらに冒頭でも触れた通り、みるくというホームグラウンドでのライブは彼らにとっても待ち遠しいものであり、ライブ前に楽屋へ挨拶にいったらば「早くライブがやりてーよー!」と無邪気な言葉が飛び出していた。
|
 |
 |
人が詰め込まれ、パンパンになったフロアには、やはりTシャツ姿のオーディエンスが圧倒的だが、鋲ジャンを着たままの者もちらほらで『爆裂都市』や『鉄男』の世界を再現しているようなハコの雰囲気にはこっちのほうが似合うかもしれない。そうこうしているうちにYO-HEYとYUICHIが現れ、はち切れんばかりの衝動をおさえながら、淡々と土台を固めていくかのようにリズムを組み上げていく。四人が揃って、一気に具現化される音像を待ちわびていたオーディエンスをじらしているが、それはステージ上の二人にとっても同じで「早く出てこいよ!」って気持ちだったのではないだろうか。
|
|
いよいよ川村カオリとMOTOAKIが現れ、新生SORROWがステージに揃ったわけだが、生まれ変わったという印象よりもYO-HEYが自然と溶け込んでいる印象が強かった。何回もセッションを重ねて、個性の集まりであるSORROWの中で自分を殺さずに表現する方法を身につけたとしか思えない。一曲目は彼の刻むビートから全てが始まる"Heaven's Door"。これが何よりの信頼の証だ。ベースとギターを導く導線をしっかりと構築し、サイコビリーのスラップ、パンクの性急なギターとハードロックの重さを兼ね備えたもう一本のギターが次から次へとデンプシーロールのようにフックを効かせて襲いかかってくる。異なる四つのラインが一点に集中し、それぞれの個性が削られることなくありのままの自分で向かってくるから、オーディエンスもありのままをさらけ出して暴れるし、歌うし、叫ぶ。一般論だとライターは落ち着いたところから冷静に見るもんなんだろうが、モッシュサークル→最前列へと移動し、柵がない事に嬉しさを感じてしまった自分はいちオーディエンス、冷静さなど持ち合わせておりません。一瞬の中に現在進行形を見いだし、等身大の姿で表現するほうが大切だと毎回SORROWクルーから感じ取ってきたわけで、それはステージの上でも下でも関係ない。思い切って行動を起こせば直接返事があんたのところに返ってくるのに、とシャイな人たちに言いたくなった。MOTOAKIはギターで空間を切り裂きながら、また、感触を確かめながら、オーディエンスの目を見て訴えかけてくる。川村カオリもストレートに気持ちを伝える事ができる数少ない人間だ。"Sunny Boy"では、川村カオリのグレッチから透き通った高音が発せられ、架空の映画のサウンドトラックにでもなったかのように自然と画が浮かんできた。それは悲しい映画だった。インタヴューの彼女「映像が浮かんで、主役が浮かんで…」の言葉を実感した瞬間だった。
|


|
終盤には立て続けに代表曲が演奏され、そして最後に世界の暗部をえぐる "confusion" で平和を訴える。フラッシュライトの明滅はマシンガンをぶっ放す兵隊をイメージさせ、疾走するメロにのせた歌詞はひちすらに痛く、MOTOAKIは醜い政治の断片を吐き捨てる。彼がギターボーカルをつとめる新バンド・SCREAM OF THE PRESIDENTS(名前からわかる通り政治や権力に対する皮肉がたっぷり)ではどんな言葉が飛び出すのだろうか。政治家の、嘘という絆創膏でガードされた治りかけの(つまり、忘れられそうな)かさぶたを剥がすような歌を期待したい。
|
|
一回でもライブがあれば、その経験や反省を糧にガラリと様変わりしていくバンドなので、毎回心地よい裏切りがある。今回は新聞でいう「号外」的なライブで、アルバム別に区切った選曲ではなかった。特に、SORROWの特異な要素の一つ、ウッドベースが使用される楽曲が多かった。『confusion TOUR』では、アルバム『confusion』をメインに打ち出すのは当然だし、メンバーも早く新曲を披露したかっただろう。それから一定期間置いたことによって、今まで発表した全ての楽曲に光が当たり、最良の組み合わせが出来上がったのだと思う。再びインタヴューの言葉を借りるが「次のアルバムでは基本形が出来上がると思う」という部分がまさに今で、実際近いうちにアルバム制作に取りかかるとのことだ。大いに期待して待っていよう、嘘偽りのない音を。
|
- セットリスト -
1. HEAVEN'S DOOR
2. GOD COMING
3. SHERRY
4. Gabriel
5. Gitanda
6. LA-ROCKA! LA-ROTA!
7. Sunny Boy
8. Baby Snake Alaska
9. HUSKY
10. TOKYO RODEO
11. DEATH ON SPADE
12. Lagrimas de Maria
13. Estados Unidos America
14. confusion |

 |
|
report by taiki and photo by hiroqui
|
|
|