JACKSON BROWNE @ Bunkamura Orchard Hall (22nd April '04)
ひとりきりの夜に
「みんなをここで待っている。できると思うなら一人でやってごらん」。いきなり引用になったが、これはこの日も演奏された"フォー・エブリマン"の歌詞の一節だ。CDのライナーノーツによると、ジャクソンはこの歌について、「何もかも放り出してしまいたいと思ったことなんか何度あったかわからない。これはそのことを歌った歌だ」と語っている。仲間からいつのまにか離れてしまったように感じた夜、ひとりきりの部屋でこの歌を聞き、歌詞に目を通したあのとき、ぼくはどれだけ救われた気がしただろう。
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ジャクソン・ブラウンの音楽に心を捕らえられた人にとって、きっとそれぞれ忘れられない歌や言葉があると思う。ソロ・アコースティック公演ということもあってか、2曲を歌い終えた時点でジャクソンが会場からのリクエストを求めたとき、会場のいたるところから上がった声がそれぞれ違った曲目を叫んでいたことが、その何よりの証拠だろう。

ほとんど全ての曲目が観客のリクエストで決まっていくので、5曲目に早々と"テイク・イット・イージー"が演奏される。「気楽にやれよ。うまくいかないかもしれないし、うまくいくかもしれないよ」。
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いつも背中を優しく押してくれるこの曲。椅子席なのについ足でリズムをとってしまう。この後はメドレーで"アワ・レディ・オブ・ザ・ウェル"へ。音響がいい会場のせいか、音もクリアだ。歌のないところでは、ジャクソンが丁寧にギターをつま弾くさまがよくわかる。
ピアノに座って始まったのは、"ファーザー・オン"。少し音が外れたようなようにも感じたけれど、声のツヤは、『レイト・フォー・ザ・スカイ』から30年が経ったとは思えない。そのあとに"ロック・ミー・オン・ザ・ウォーター"、"レイト・フォー・ザ・スカイ"と続けられると、もう動くことすらできなくなる。スライド・ギターも、ハーモニーもない。圧倒的な説得力をもつジャクソンひとりの声だけで、歌の世界が紡がれていくのを目の当たりにするこの瞬間。本当に素晴らしい。
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休憩を挟んだ第二部で、ジャクソンは歌詞もコードもうろ覚えの曲に挑戦。ピアノでコードを確かめてからトライするも、途中で歌詞がわからずにストップ。あとで知ったのだけど、どうやらこれはジャクソンの盟友、故ウォーレン・ジボンの曲のカバーだったようだ。まるで、友だちの前で歌っているかのように、親密で、ほのぼのとした空気のまま進んでいくステージ。
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正直なところ、ジャクソンのことを「社会派SSW」として捉えていたぼくのような輩には、肩すかしを食らったところもあった。すべてを聞き取れたわけではないが、MCのほとんどが、つたない「アリガトウ」とそれぞれの曲へのコメント。ステージ横に置いてあるのは、上下逆さまの星条旗などではなく、ライブの合間にファンから受けとった花だった。
ソロ公演なのだから当たり前だが、ステージの上にあるは、ズラッとならんだアコースティック・ギターに、電子ピアノだけ。曲ごとにギターを選ぶジャクソンからは、つい曲が生まれてきたその瞬間を連想してしまう。ひとりきりの部屋で歌っているかのように、目の前の観客よりも、まず自分自身に歌いかけているようなジャクソン。深い慈しみの光のような"プリテンダー"、バンド演奏よりもずっと魅力的だった"ランニング・オン・エンプティ"を終えると、大きな拍手に包まれたまま、ステージを降りた。
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アンコールに選ばれた曲は、"ドクター・マイ・アイズ"。ここでは手拍子も起こって、陽気にお別れかと思ったその後だった。「これはぼくの国についての曲だ」。そう言ってジャクソンが歌いだしたのは、カントリーではなく、"ライブス・イン・ザ・バランス"と、"アイ・アム・ア・パトリオット"だった。
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report by rad and photo by keco
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