NINJA TUNE feat. Bonobo / Kid Koala / Coldcut / Hexstatic and Jason Swinscoe @ Shibuya O-EAST (2nd Apr '04)
名レーベルが魅せたパーティーの真髄 part.1
音楽再生のメディアをCDよりレコードに頼ることの多い人間は、レーベルをかなり気にする。なぜならレーベルカラーというものは、どれだけジャンルを細分化してもジャストに説明ができない音やビートの特徴をある程度示すことができるからだ。例えばミニマルテクノの12インチだと、レコ屋スタッフの推薦文に「***(レーベル名)##番!」と書いてあることが多い。ロックに馴染みのある人ならご存知のグランドローヤルにクリエイションレコードも然り、また歴史のあるところではアップルやスタジオワンなどもそうだろう、その名前を聴けば大体その音のイメージと言うものが記憶の倉庫から引っ張り出されてこないだろうか。レーベルとは音の種類、サウンドテイストの趣向の保証書みたいなものである。
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今も脈々と続くクラブシーン。週末のクラブは今日もにぎやかで、あらゆるビートが人々を踊らせる。しかし、哀しいかなパーティーピープルという人種は常に敏感で、季節の移り変わりのように新しいジャンルを迎え入れては過去のビートを振り返らない。ダンスミュージックはその名の通り、ダンスの音楽であることが第一条件なので、ビートとメロディー以外の付加価値を見出せるロックなんかよりもずっと新陳代謝が激しい。
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次から次へと誕生し、それと同じくらい消滅していくレーベル群の中において「愛されて十年以上」という稀有な歴史を持つレーベル、それが今回ジャパンツアーを行うUKブレイクビーツの代表格、ニンジャチューンだ。COLDCUTを始め「一人ずつ来ても大箱埋められんじゃねえの」的メンツで参上した逆輸入ニンジャ達のパーティーを今日はレポートしたい。
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- Kid Koala -
日付が変わった頃O-EASTのフロアに入ったが、既にBONOBOが終了していてショックを受ける。個人的に期待度ナンバーワンだった彼を最初に持ってくるほど今日は豪華な面子なんだよな...と自分を励ましていると、ステージ上の声高なDJも、私をヒップホップに導いたBeastie Boysのクラシック”So Watcha Wnat”の即興リミックスで慰めてくれた。会場前方を囲むように配置された四つのスクリーンに、心優しいその人−KID KOALAの名前が現れた。
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歴史あるモントルージャズフェスティバルにも出演した経歴を持つ彼は、2台のDJミキサーと3台のターンテーブルという、一般人には文字通り手に余る機材をフルに駆使活用させながらマイクでオーディエンスを煽り、常人には真似できないターンテーブリストとしての手腕をこちらの驚きなどお構いなしでひょうひょうとこなす。BJORKの”Human Behaviour”を声ネタに使って即興でブレイクビーツトラックと混ぜ合わせるその斬新なアイデアと音の違和感の無さを聴くと、2 many DJ`sが近年流行らせているマッシュアップソング(ヒップホップのアカペラなど、声ネタを全く違う曲のトラックと混ぜ合わせて新しい曲を作ったもの)がガキの遊びにしか聞こえなくなってしまいそうだ。
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ターンテーブル秘術を惜しげもなく披露し、会場全体が賞賛を送りたくて仕方がないというのに「セットは終わったけど10分も時間余ってんだよねー」とそのアーティスト名に恥じないノホホンとした発言をし、おもむろにカンペを取り出してカタコトで「イマ、カラ、ボクノオカアサンノ、スキナウタヲ、カケマス」と、6000円と言うチケット代を払ってやってきた人間を前にして何をするんだと会場を微笑みの渦に巻き込む男の不思議。が、「一体なんなんだよコイツ!」とゲラゲラ笑っていた私の笑顔は、そのまま彼がプレイした”Moon River”(映画『ティファニーで朝食を』の代表曲)のスクラッチ満載二枚使いで消し飛ばされた。最後にもう一度、「一体なんなんだよコイツ...!!」。
満足感に包まれはしたが、「もう腹いっぱいですわ」なんていってなどいられない、次に待ち受けるのはCOLDCUTなのだから...
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report by ryoji and photo by ken
なお、写真は4/3の大阪公演を撮影したものです。
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