Rickie Lee Jones @ Osaka Big Cat(25th Mar.'04)

道しるべ


 会場に入った瞬間、ほとんどの場合に見られる、目に染みるあの感覚が全く無い。飛び込んで来たのは「No Smoking!」そうか、白い煙が立っていない...少し冷たい空気と人の声が混ざり合うそこに私の居場所は無い。しばし、外に出ることにした。

 灰皿の回りには、見えない壁の中に詰め込まれた人達が肩をちぢこませて安らぎを吸い込む。必要の無い人達にとっては迷惑な話だろうが、私にとって体内を汚されるこの瞬間こそが至福の時なのだ。
Rickie Lee Jones

 自分に素直であることと我儘に生きることの狭間に迷い込んだ私に、見つめ直す強さをくれた曲達、そして、くしくも、その頃の彼女の年齢にようやく並び、彼女からもらった憧れの年代へのスタートラインにスタンバイしたこの年に彼女に会える必然を噛み締める。

 6年ぶりのオリジナルアルバム『The Evening of My Best Day』は、ピート・トーマスなど、あのエルビス・コステロ班とタッグを組んだらしく、目の、いや、耳の離せない1枚だけに、気分も盛り上がる。
 Rickieらしい演出なのか、はたまた、やはり彼女らしい気まぐれなのか、開演が30分程延びるらしく、私達はお茶でも飲みに行くことにした。取ってつけたようなオーガニックカフェで飲む豆乳コーヒー。身体に良いのだろうが、決して美味しいとは言えないヌルンとした苦味が舌に絡み付くそれは、10年程前初めて耳にした、Rickieの歌声の耳に纏わりつく感触を鮮明に思い出させてくれる。美しいとは言えないが、耳から入った彼女のスラリと伸びた手で脳みそを優しく撫でられるような、時折、指先で弾かれるかの刺激が癖になる。あの歌声は変わらず私の頭を撫でてくれるだろうか?自由奔放よ...などと言ってのけながらも、人を惹き付けて止まない魅力は変わらないだろうか...

Rickie Lee Jones
Rickie Lee Jones
 会場では待ちきれないお客さんがリッキーコールを繰り返す。45分程過ぎた頃、ようやく彼女が姿を現した。薄暗い照明にギターを持った彼女が佇んでいる。少し斜めにズレたマイクに向って歌い始めたその声は一瞬静まり返ったフロアーに響き渡り、やがて、歓声に飲み込まれていく。

 微笑みを浮かべながら、それこそ全てを抱き寄せるように歌い、空気も時間も鼓動も息使いさえも彼女中心に動いている。じんわりと上がり出した回りの人達の体温に、コートを脱がされる。

 1曲1曲ギターを持ち替え、時に気まぐれに歌いだす彼女の両脇から挟むように置かれたドラム、ベース、キーボードにサックス等...ギターを弾くその指に重ねられる音達に、もう、何の説明も要らないだろう。

 太陽を中心に回る惑星。その姿、歓声、弾かれる音...彼女より自由に、より奔放に今を生きていた。
 何曲が私の頭を通り過ぎただろう、あまりに熱い。リッキーが笑いながら言う「座って聴いてくれていいのよ!」(のようなこと...)そうしたい、是非、そうしたい。まさか空調まで止めているのだろうか、彼女の脳みそを撫でる声、噎せ返る体温達、残り少ない酸素...。

 ステージでは、ギターを渡すサポートのスタッフさんに「次はやっぱりこれをやりたいからアコギの方を持ってきて!」のようなやりとりが数度繰り返され、歌の度にアイコンタクトでセッションのようだ。次はピアノ弾いてOKかしら?オウ!それならこっちのを使いなよ!!のようなやりとり等、何が飛び出すか予測不可能なステージで和気あいあいね、などと気を抜き目を閉じていると、遠く遠く薄れて行く感覚に襲われていく。明らかに足りない酸素を力いっぱい吸い込みながら足元がふらつき始めた頃、Rickieは笑顔とともに手を振りながらステージを去った。

Rickie Lee Jones
Rickie Lee Jones

 Rickieを呼ぶ声と歓声が止まないフロアーのドアが開かれ、酸素が入ってくるのを感じる。深呼吸を繰り返し意識がはっきり私を取り戻す。恐らく、彼女が奏でたい曲達を彼女は奏でていったんだろうという満足感のような実感に包まれる。セットリストは意味が無いだろう...

 会場を出て本能で向かう所はただ一つ、煙が身体中を這い回ると、血液がようやく流れ出した。

 言葉なんて要らない、私から出て行く白い雲がふわふわ風に吹かれて消えていく。今日も生きてるんだなあと思えることが少し嬉しかった。お腹が空いたら大好物を食べよう、眠たくなったら目を閉じよう、そして、大切な人にくっついてみよう...。そうして今日もまた生きていこう。私らしく。
report by sora and photo by ikesan
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button時間は止まったままだった : (04/03/26 @ Shibuya Orchard Hall) : review by joe, photo by saya38
button年齢を超えられる人もいる : (04/03/26 @ Shibuya Orchard Hall) : review by nob, photo by saya38
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button道しるべ : (04/03/25 @ Osaka Big Cat) : review by sora, photo by ikesan
buttonタイムスリップ...あの頃の私に出会えた夜 : (04/03/25 @ Osaka Big Cat) : review by kami, photo by ikesan
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The official site of Rickie Lee Jones :

http://www.rickieleejones.com/



The latest album

"Evening of My Best Day"

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DVD

"Wiltern Theatre"

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VHS

ライヴ1992
アコースティック・ライブ
〜ネイキッド・ソングス

the first album

"Rickie Lee Jones"

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previous albums

『Live at Red Rocks』 (US import / UK import / 国内盤)
『It's Like This』 (US import / 国内盤)
『Traffic from Paradise 』(US import / 国内盤)
『Pop Pop 』(US import / UK import / 国内盤)
『Ghostyhead 』(UK import / 国内盤)
『Naked Songs 』(US import / 国内盤)
『The Magazine 』(US import / 国内盤)
『Pirates 』(US import / 国内盤)
『マイ・ファニー・ヴァレンタイン 』(国内盤)
『Flying Cowboys 』(US import / UK import / 国内盤)
compilation etc

『めぐり逢えたら - サントラ - 』(国内盤)
『デュエット』(国内盤)
*ロブ・ワッサーマンのアルバムで、『枯葉』を歌っています。。
『ビーティン・ザ・ヒート』(国内盤)
*ダン・ヒックス&ザ・ホット・リックスのアルバムで、ゲストとして歌っています。


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buttonno title : Banda Bassotti (11th May. @ Osaka Big Cat)

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