buttonIGGY POP & the stooges @ Shibuya AX (22nd Mar.'04)

例外的ヒーロー


 息も白く雨が降る東京、この日の最高気温は5℃。渋谷axのエントランスを通るや否や、熱気でメガネが白く曇ってしまった。なるほど、開演五分前のロビー左手にあるバーカウンター&喫煙所にはものすごい数の人達が彼の登場を待ちわびている。その中にギターウルフのセイジにシナロケ、チバユウスケなどなど(元ブランキーやハイロウズ、ゆらゆら帝国の面々もいたらしい)、「ロックンロール」という言葉をステージで口にする権利を持った人々の姿も多数見られ、この日のAXはまるでロッカーズ総決起集会とでも例えられそうな光景である。
 今日はどうしてもこの公演に足を踏み入れたい。そもそもの発端は去年のフジロックで、オレンジコートのペインキラーを観に行こうとボードウォークを歩いていた時、木々の間から見えたホワイトステージに立っている男、それがイギーポップだと気付くのには少し間があった。なぜなら、前かがみでマイクに向かう彼の姿がとてもエネルギッシュで若々しく、最初私は「あんなハツラツとした青年がこんな時間に...?」などと考えていたからだ。歌っているのが"Search & Destroy"と気付き、ようやく彼の正体が判明した時は本当に驚いてしまった。彼を若者と最初思ってしまったのは、勿論視力が悪いせいではない。

iggy pop
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「ロックは死んだ」と言われて久しい今、果たして彼はいかにして生き長らえているのか。どうしてもそれを確かめたくて、私はやってきた。渋谷axのフロア、私の横はロッククラシックス談義を繰り広げ、今からステージに立つ男達に過ぎた青春を投影しようとしている四十代男性ズ。イギーが、ストゥージーズが彼らの思い出話のツマとなるだけの存在となるかどうか...普段のライヴとはまるで異なる期待を私は抱いていた。
iggy pop
 で、「STOOgES」のネオンが光り、現れたイギー。これがとんでもない。ロン兄弟やベースのマイク・ワットらが年相応に老け、安定したテクニックを披露するのとは対照的に、ローライズに上半身裸のいつもの出で立ちで軽やかにステージ上を動き回り、しなやかに体をうごめかせる彼。98年の豊洲に比べれば確かにいささか年を食ったようにも見えはするものの、その体に電気信号を送って動かしているそのエンジンが未だ快調であることを証明している。マイクスタンドやモニター手前の板が彼の手で次々と破壊されていくという痛快活劇は、近年のKISSのステージングのような定番アクションとは一線を画している。
矢継ぎ早に曲が叩き込まれ、"I wanna be your dog"が聴こえてきた時、私の隣を皮ジャンで御馴染みの某アーティストが喜び勇んで通り過ぎ、前方へと突き進んでいった。イギーの魂はオーディエンスをも突き動かしてしまうらしい。勿論私も同様に「YOURRRR DOG!!!」と声を上げる。"No Fun"や”Fun House”が衰えなど一切見せず、新鮮に響いてしまうのだから体が止まることなんてありえない。紫色の霧に包まれているかのような妖艶さと暴力的歌唱スタイルが届ける13曲の本編は、驚くほど一瞬で終わってしまった。

iggy pop
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「次は新曲だ。世界で最初にここで披露するぞ!」と言い、アンコールの際に過去の曲と何ら遜色のないイントロと共に"Idea Of Fun"が鳴らされた時なんて、エネルギーを維持するだけでなく次のステップまでも歩まんとするイギー・ポップにただただ感服である。貫かれていているバイタリティの器の大きさは、我々の想像を凌駕するものに違いない。
 このライヴの前、日本を代表するコメディアンが天に召されたが、彼は死ぬ前に自伝を書き上げ、「人生をまとめる時がきた」とつぶやいた。また、「色あせるのならばいっそ燃え尽きた方がいい」と言ってショットガンに手をかけたカート・コヴァーンのケースもある。絶大なエナジーを表現する者達は、いつしかその維持自体が命題となるものらしい。だが、イギーはそんなことまるで考えていないようだ。オーディエンスのノリが彼の期待に応えなかったのか中指を立てた彼の姿に、永久不変の闘志が満ち満ちて、皮ジャン野郎の拳は挙げられる。未来すら感じさせる彼のステージ、そんな夜が終わるのは、まだまだ先の話だろう。 iggy pop
-- setlist --

1.LOOSE / 2.DOWN ON THE STREET / 3.1969 / 4.I WANNA BE YOUR DOG / 5.TV EYE / 6.DIRT / 7.REAL COOL TIME / 8.NO FUN / 9.1970 / 10.FUN HOUSE / 11.SKULL RING / 12.ROCK STAR / 13.ELECTRIC CHAIR

-- encore --

14.LITTLE DOLL / 15.IDEA OF FUN / 16.DOG / 17.(NOT RIGHT)


report by ryoji and photo by mari

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