buttonBen Harper & The Innocent Crimiinals
@ Nagoya Diamond Hall (2nd Mar '04)

愛と思い出の夜 - part2 -


Ben Harper
名古屋―

 この都市のオーディエンスというものは、酒やドラッグに感情の起伏を頼らず、またステージ鑑賞を社交場にしないことで様々なアーティストから優秀と評価される日本の観客の中でも極めて素直な人種であると私は断言する。「ロック不毛の地」と不名誉な言われ方をするその所以は、「我々は中途半端なものには見向きもしてやらない」という姿勢が、チャートも含めてニュース性に乏しかったり曖昧なサウンドしか出ないミュージシャンの巡業の売り上げにダイレクトに反映された結果が誤解されたものと知っておいておいてもらいたい。
 そんな名古屋人からベンハーパーは熱い声援で迎えられた。その凄まじさは登場からしばらくアコースティックギターの音色が完全にかき消されていたほどである。まあこれは彼らのレコードにそれだけ多くの魅力が詰まっている証だが、イノセントクリミナルズとベンハーパーのケミストリーがレコード音源よりもさらにビルドアップされた楽曲を次々演奏することで、それはさらにとんでもないものへと変化していったのである。一曲目からイノセントクリミナルズが間奏時に強烈な演奏を叩きつけ、その曲を終えると間をおいて「すげえッ!!」という声が出たかと思えば、続く"Excuse Me Mr."ではイントロを聴いた時点で「待ってました!!」、そして曲間にフアンネルソンがジャズピアノのようにベースをうごめかして再度「すッげー!!」...頑固者達は彼らのプレイに心を開き、名曲やテクニックに対して相応の歓声を上げ続けていった。 Ben Harper
Ben Harper
Ben Harper  こんな風に書けばロックバンドのショーのようだが、会場は一貫して横揺れ。レコードと違って限られた楽器構成の環境と、東京と比べると広がりに欠ける感のある音響システムがうまい具合に彼らに内在する魅力を引き出して、まさに生演奏と呼ぶに相応しい温かみのあるグルーヴがこの日の基盤となっていた。彼らの楽曲の中でも一際エッジの効いた"Ground On Down"からレコードと違ってオルガンの音色から始まり、ギターやベンの声も「泣き」モードだった個人的ベスト"When She Believes"のセットが違和感無く繋がったのはそのせいだろう。

 また、彼らは特にMCでコミュニケーションをとることはなかったのだが、会場に殺伐さは存在せず、ステージに灯る大きなロウソクの火のゆらめきのような雰囲気が漂っていて、このステージがおよそ二時間にも及ぶ長丁場だということにライヴ中気付くことはなかった。

Ben Harper  俺と一緒にこのステージを味わっている友人との関係みたいに、親しき間柄には余計な言葉を必要としなくても精神レヴェルで通じ合う何かスピリチュアルなものが存在する。ベンハーパーのステージにはいつもそれと似たものがある気がする。ツアーごとに新しい変化を持ち込んで、その音楽的引き出しを自在に操る実力は確かなものだし、毎回粒ぞろいの名曲を置いている彼らのレコードを何から聴き始めればよいかという質問を受けると、俺はいつも困ってしまう。

 そんな完璧なアーティストであるにもかかわらず、ライヴにはいつも切実な思いを抱かせずに「さあ、今日はどんなプレイを見せてくれるんだ?」と言う気持ちで目を向けてしまうのは、彼のサウンドの空気なのか、はたまた音楽に対する彼の愛情がにじみ出ているからなのか...何はともあれ、彼の登場と同時に起こったあの盛り上がりの声が示す通り、それを会場の皆が同じような思いを抱いていることだけは確かだ。

 同郷の自分ですら、本当に今回の名古屋の盛り上がりようには驚きを隠せなかった。都会以上にヒットチャートばかりがヘビープレイされているこの地において、これほどの愛情を受けてステージに立つアーティストがかつて存在しただろうか?終演後、満足な笑みを浮かべて友人と顔を合わせる。また一つ、俺のダイアモンドホールに新しい伝説が生まれた。
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