buttonMOSTNOTORIOUS Vol.16
feat. あぶらだこ
NO-TALIN'S(遠藤ミチロウ+石塚俊明+坂本弘道)、MOST
@ Shinjuku LOFT (22nd Feb '04)

地下(アングラ)集会


三途の川での石遊び - あぶらだこ -
 あぶらだこの混沌とした世界には本当にまいった。初っぱな篳篥の音に惑わされつつも、リズムを作り出すかたく張ったドラムの乱打とベースの悶えた音からタイトでしまりのいい肉感を存分に感じ、サイケ的なアグレッシブさを兼ね備えたギターが、輪をかけてバンドに広がりをもたせていたのを肌で感じてしまった。それを表情一つ変えずに色付けしていく、限り無く張りつめた精神世界を持つフロントマン・長谷川裕倫の表も裏の声さえもつかうヴォーカルに終始歯車を狂わされ続け、カオスが満ち、それがやがて舞い上がっては雲散霧消する様をありありと見せつけられた。

 先日見たサヨコオトナラのサヨコ(ex.ゼルダ)もそうだったが、長い音楽活動をしていれば、それなりに変化がある。過去の音像とは直接的には結びつかないまでも、様々な紆余曲折をへて進化したバンドであるあぶらだこに『GREAT PUNK HITS』(徳間ジャパン)の面影のみを追っかけていた自分に腹が立った。

 洗濯機からのびる排水ジャバラをグリリッと捻ったようなノイズに、ひねくれたバンドのあるべき姿を感じ、思わず納得してしまう。だが、長谷川の表情からはそのギラついた眼に射抜かれてしまった俺がビビったのか、何も読み取れなかった。仮にそうでないとすれば、無関心を装っているのか、それとも無の境地なのか。MCというガイドもなかったということは、音でアピールするのがバンド、という意味があったのかもしれない。

 あぶらだこには、天国とも地獄とも形容しがたい、言うなれば生と死の狭間に放り込まれた感じがしましたね…。


我自由丸(がじゅまる)の・声高らかに・火花散り - NOTALIN'S

NOTALIN'S
 会場が暗転し、フロアに流れ出したのはミチロウが高校時代にハマったという、ドアーズの『The END』だった。幕(スクリーン)があがり、アコースティックギターを抱いてステージに姿を現わしたミチロウは、サングラスのせいか三池崇史監督に見えた。アフロを揺らし、エフェクトを大胆にかけまくるチェロ奏者・坂本は渋さ知らズにゲスト出演経験もあるお人。見た目、石塚はどっしり構えた職人気質だが、実はex.頭脳警察、一旦羽目を外したら手がつけられない位に壮絶な修羅場を見せてくれるだろう。個性が強すぎる人間が集まってできたNO-TALIN'Sは「スリーピース」のくくりにおいても、他に類を見ない雰囲気を臭いたたせていた。
NOTALIN'S

 ミチロウ自身が「一番NO-TALIN'Sらしい曲」と語って演奏した "我自由丸 (がじゅまる)" はフォーク調の、心が洗い流される曲だ。坂本の手にはチェロ ではなく片刃のノコギリがあり、横山ホットブラザーズ(お笑いトリオ) のように曲げ、弓で擦って音をだしていく。普段ならば「お〜ま〜え〜はぁ〜 ア〜ホ〜かぁ〜」とついつい口にしてしまうはずだが、その時は「横山…」など 頭の片隅にも無かった。基本のリズムと、美しいメロと、ノコギリのオクターブ という概念がない世界に、ただただ揺さぶられるだけだった。
 「ギュワーン」という歪んだ、伸びのある音がところかまわず乱反射しはじめ、それの主成分がチェロであることが驚きでならなかった。さらに、ドラムの堅実なビートが、ジャカジャカ鳴らされるギターが、底辺から絞り出すミチロウの荒々しい声が、よってたかって体を突き刺す。今まで様々なオーディエンスを圧倒、罵倒、沸騰させてきたミチロウの不変の輝きは、プラグを抜けば実はアコースティック、といういささか大人しい編成を忘れさせるほどにいきり立っていた。

NOTALIN'S
NOTALIN'S
 続いて演奏された "父よ、あなたは偉かった" ではミチロウが「愛国幻想! 愛国戦争!」「僕には一片のユートピアも残されてはいないのです」と歌う。強烈な歌詞に気をとられている間にも、暴れだした石塚の破天荒なドラミングと、坂本が操るチェロとエフェクトに、ミチロウが打楽器のように打ち鳴らすギターから生み出されるグルーヴは二転三転し、加えて、ミチロウの声は断末魔か、詰まった掃除機のような叫びとなって轟く。三人が好き勝手暴れているようでいて、すべてを超越した部分で繋がっている。それに…グラインダーを使った火花は圧巻だった。ただのパフォーマンスではなくて、マイクに近付けて音もひろっている。(これはやはり写真を見たほうが早いでしょう。はい、ドーン!)
NOTALIN'S  ラストはボブ・ディラン "Knockin' on heaven's door" 。ベーシックな演奏にそれぞれが立ち戻るが、歌詞は違う。ミチロウらしい毒気たっぷりで荒っぽい言葉に作り替えられている。「おまえは独りで死ぬのか 象のように隠れて死ぬのか…」詩集を買ってみようかな、そんな気にさせた。

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