buttonデート・コース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン
@ Shibuya AX (15th Feb '04)

音楽の隠喩としての建築


■音楽を建築に喩えること。このデート・コース・ペンタゴン・ロイヤルガーデン(DCPRG)のような人数の多いバンドの場合、バンドのアンサンブルがそのまま構築のアナロジーとされてしまう。しかし、DCPRGの音楽は、そのような構築を解体するような、いわゆる脱構築、などと書くと全くもって凡庸極まりない言い方だけども、この日のライヴは、ファンク、ジャズ、ロックンロールを解体してDCPRG流に提示していたのである。

■毛皮(?)のコートを着た菊地成孔の指揮の元、ブラスセクションが短いフレーズを繰り返す、アバンギャルドでフリーキーなオープニングから、解体されたロックンロールに雪崩れ込み、メンバーのソロを回していく冒頭の流れが素晴らしい。菊地成孔は各メンバーにオーバーアクションで指揮をしつつ、自らキーボードを弾き、CDJでコスリを入れていく。フロアの雰囲気はレイヴパーティーに良く行く人が多い感じがした。それは、フジロックやメタモルフォーゼに出て野外レイヴ好きな人にはお馴染みになっているということもあるだろう。演奏がアガってくると腕を挙げ、歓声で応える姿は、そういうのに慣れている感じがした。音楽自体は変拍子で踊り辛いんじゃないかと思うのだけど、実際は体が動いてしまう(まさに、リズムの構造によって体が揺らされる力、ってやつですね)のだ。

■チューバ、トロンボーン、トランペット、ソプラノサックス、テナーサックスのブラスセクションに、ベース、キーボード、パーカッション(2人)、ドラムス(2 人)、ギター(2人)という編成でステージの中央に菊地成孔という布陣である。メンバーは皆テクニシャン揃いだけど、渋さ知らズやROVOでもおなじみ芳垣安洋のドラムはめちゃくちゃ力強く、かつテクニカルなスティックさばきで、この人は本当に凄い。

■この日はテレビ(CS)の中継があって、菊地は、権利関係で他人のCDいつものようにかけられない、とか(中継あるから)下手なことを言えないとか、メンバーにヨーロッパツアーが決まっている人がいるので今年のフジロックには出られないとかボヤきつつ、漫談のようなMCで笑わせる。メンバー紹介も丁寧にやっていた。アンコール時に「もし、このCDをかけて権利関係に問題があったら僕を羽交い絞めしてください」と"構造4-寺院と天国の構造"の前にかけた曲がロイ・オービソンの"In Dream"であった。しかもフルコーラス。

■楽しむこと、それ自体が政治的であるわけで、何よりも楽しむことが「戦争に備える」(DCPRG結成時のコンセプト)ことなのだ。既存の音楽を解体していくのも、演奏を楽しむ、聴くのを楽しむ、踊るのを楽しむでなければならない。このバンドにまつわる難解そうなコンセプトやタイトルと楽しむこと、現実の世界の動きと楽しむこととの緊張関係がこのバンドを際立たせているものになっている。何よりも踊るために。


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buttonphoto report (03/06/27 @ Shibuya Club Quattro) : photo by maikokko



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"3rd/ジェネラル・リプリゼンテーション・プロダクツ・チェーン・ドラスティズム"
"REPORT FROM IRON MOUNTAIN"
"シノ"
"DCPRG3/GRPCD2" (limited edition)


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