モノラルセンス、ミカゲ、ASTORO-B'、ザ・キャプテンズ @ 渋谷屋根裏 (31st Jan '04)
ギラギラ男子を見ていたら眩しすぎて目が痛くなった
この前、渋谷の屋根裏に行ったんです。ライヴハウスの。その日に行なわれたイベント名が「機人集団ケリラバ6」というタイトルだったんですけど、そんなことを知ったのは、この原稿を書く下調べしているときで、そのときはどうでもよかったんです。でも、そのタイトル名から想像されるようなイベントなわけで。地下のフロアに降りていく階段の途中からバスドラの4つ打ちが聴こえてきたんです。屋根裏に行くのに地下に下りていくってこれ如何に。扉を開けると、モノラルセンスが演奏していました。バスドラの音がデカくて、トランスと80年代のエレポップが合体したような感じです。メンバーはドラムとギターの2人なんですが、ドラムは多分ヤマハのDTXPRESS3というサイレントドラムを使っていました。サイレントドラムというのは自宅での練習用だとてっきり思っていたのですが、考えてみたら何もおかしくない、使い方次第でいくらでも格好良く見えると感じました。
バンドとバンドの間はTHE WHOの曲がかかっています。"ピンボールの魔術師"とか"バーバ・オライリィ"とかでした。そして次に出てきたのがミカゲ。ドラムはモヒカンでヴォーカル&ギターとベースの人は、昔の忍者系の特撮モノ(「仮面の忍者・赤影」みたいな。あ、古いっすね。でも、おれはリアルタイムじゃありません)のような雰囲気をちょっとだけ漂わせています。ステージの中央には寄席の出演者を書いてあるみたいな幕があって、そこには曲のタイトルが書いてあります。そのタイトルとは"忍法""皆殺し""キャンディ・キャンディ""エース""借金劇場""野良犬"・・・。音はガレージパンクと70年代ロックを合体させた感じで格好良いです。特に"キャンディ・キャンディ"は、あの「キャンディ・キャンディ」の主題歌をめちゃくちゃハードにしたものです。曲と曲の間でチューニングしているときには、ドラムの人が「不二子ちゃ〜ん」「お〜い銭形のとっつぁ〜ん」とルパン三世の真似をしてお茶を濁しています。アニメ好きであるのと共に、メンバーは30歳前後であると推測されます。そして、この日の一番は"借金劇場"で、レ○クとかア○ムとか、あらゆる消費者金融の会社名を連呼して、途中は「地獄地獄地獄地獄地獄・・・・・」と3人のアカペラ・ハーモニーのあと、ドラムの人が人形を取り出します。ひとつはヤクザ風の男、もうひとつは気弱そうな男で「おい、金返せ!」「すいません、もうちょっと待って下さい」・・・と、人形による迫真の演技。ドラムの人は借金まみれだそうで、なるほどリアリティを感じさせるのも納得です。
またバンドの転換時にはTHE WHOで"無法の世界 "とか"フー・アー・ユー"とか流れています。次のバンドはASTORO-B'というバンドなんですが、セッティングに出てきたメンバーを見て「ああ、このバンドもまた・・・」と思ってしまったんです。何せ、ギターは柔道着でデブ、ドラムはイエスキリストの格好をして、KISSのジーン・シモンズのように、目には星印が描いてあります。そして、シーケンサーをベースに生ギターと生ドラムを加えた演奏でした。そこに、シド・ビシャスの彼女だったナンシーと猫娘を足して2で割ったような女の子と、忍者が出てきました。忍者ってマスクとかはちょっとサイバー系入っていましたが、どう見ても忍者です。ついでに手からボワっと炎が何度か出ます。女の子はヴォーカルでハイテンションなアニメ声で、どう見ても日本人なんですが英語しか喋りません。忍者の方は、位置付けとしてはダンサーなんでしょう。ギターの人もデブのクセして激しい運動量でステージを動き回ります。このフロントの3人のおかげでかなり躍動感のあるステージです。途中、ミュージカルの「ジーザスクライスト・スーパースター」のパロディみたいなのもやります。ヴォーカルの子がハイテンションなままに「アワ・リーダー・ジュードーマン!」とギターの柔道マンを紹介すると、腰の低い大阪商人みたいな姿勢で「ええ、どうもアストロ・ビー申します。好きな食べ物はヒラメのエンガワ、嫌いなものはリンキン・パークでございます・・・」とローテンションなMC&ボヤキに突入です。そのMCで明らかになったのは、柔道マンは昔、イカ天バンドのサイバー・ニュウ・ニュウのメカ・エルビスだったとのことです。若い人には分からないでしょうが、昔、イカ天というアマチュアバンドのオーディション番組があって、そこからブランキー・ジェット・シティとかビギンとかフライング・キッズとかたまとかマルコシアス・バンプとか出たんです。ちなみにGLAYも番組に出ていました。なんか2004年にサイバー・ニュウ・ニュウという言葉を聞くとは思いませんでした。驚きです。まあ、でもこのASTORO-B'、パンキッシュで笑いがあって好きですね、こういうのは。最後は、リマールの"ネヴァーエンディング・ストーリーのテーマ"をめちゃくちゃパンクにした演奏でブッちぎってました。
そして、またTHE WHO・・・と思いきや、南沙織の"17歳"が流れてきます。次は平山美紀の"真夏の出来事"、郷ひろみの"男の子女の子"、天地真理の"一人じゃないの"と筒美京平先生の名曲が立て続けにかかります。ザ・キャプテンズの登場です。最後のGSバンド、ザ・キャプテンズが如何に凄いかは、以前にも書きましたが(-->こちら)この日は、前回を遥かに上回る出来で、演奏の充実振りもさることながら、フロアの熱狂振りも凄まじいです。ヴォーカル&ギターの傷彦のスタア性にヤラれた女子が最前列を陣取っています。この日も傷彦が「一目あったその日から、恋に花咲くこともある。最後のGSバンド、キャプテンズ!」とコールしてスタートです。強烈なドライブ感の"夕焼けサンドビーチ"から始まります。「オイッ!オイッ!」という掛け声が、ほとんどパンクのようなテンションで発せられるのです。次の"恋するマタドール"はGS的な世界とフラメンコとかのスパニッシュな世界との融合です。それは傷彦だからこそ成り立つ演劇的な世界でもあります。"黄昏流星群"を経て、タイガースの"シーサイドバウンド"への微妙なオマージュとなっている"青春ゴーゴゴー"、そして時速30キロで疾走する恋の物語"恋のゼロハン"の間奏では、傷彦が「もうすぐ、君の誕生日だね。プレゼント何が欲しい?」と語りかけ、フロア最前列に陣取っている女の子の一人に耳を近づけて、うなづいたあと「何?傷彦が欲しいって!?僕も今同じことを考えてたよ!」と言うのです。こんなクサい台詞を堂々と言えるのも、傷彦のスタア性ゆえでしょう。最近、magに「キラキラ男子を目撃せよ!」というタイトルの原稿が載りましたが、傷彦はキラキラどころか、輝きすぎて目が痛いくらいですよ、奥さん。誰が奥さんだか知りませんが。まあ、ザ・キャプテンズについては男のおれが書いても今ひとつ説得力が無いんで、今度、女の人からのレポートを期待したいところ。本編最後は森田公一とトップ・ギャラン"青春時代"にターボチャージャーをつけて加速させたようなような"恋は赤道直下"で幕でした。もちろん傷彦だけでなく、他のメンバーも頑張っていて、ギターの「ささやかなカリスマ」ヒザシがさりげなくタッピングとかしていて、GSの時代にそんな奏法があったけ?というのをさりげなくやっていたり、「やさしさそのもの」テッドと「若干20歳の暴れ太鼓」ヨースケのリズム隊がめちゃくちゃ強化されて、そこいらのガレージパンク・バンドよりもドライブ感があってめくるめく快感が味わえます。これで終わりしたが、もちろん、納得いかないのがフロアです。次のバンドが控えているというのにアンコールに応えて"お前一番星"を演奏し、加山雄三の"君といつまでも"のインストヴァージョンをBGMに去っていきました。
最後は、航空電子というバンドでしたが、仕事のあとに、こんなに濃い〜いバンドを立て続けに観ると気力が衰えますね。メンバーはクラフトワークみたいなシャツにネクタイ姿で、電子音が混ざりながらのパンクをやっていて、ヴォーカルの人は福山雅治と南原清隆を足して2で割った感じで、笑顔が印象的でした、くらいしか書けません。どうもすいません。
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mag files :
GSを知らない子供たち (03/10/9 @ Shibuya Nest) : review by nob
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