button 日本のロック名鑑
feat. KIRIHITO / U.G MAN / ECD / MERZBOW / SxOxB
@ Shinjuku LOFT (21st Jan '04)


 音楽誌「indies issue」のライブ・イベントの第1回目となるのが、この日行われたイベント「日本のロック名鑑」。「indies issue」については、PUNK、HARD CORE、SKA COREなど年齢層の若いファンが多数存在すると思われるジャンルのバンドばかりを取り上げている雑誌、という思い込みが強くたまに立ち読みでパラパラ見るぐらいが関の山で、実際の話じっくり読もうと思ったことはない。しかしながらこの日の出演者のラインナップを見た途端、なんだかこの雑誌、侮れないなと強く胸に刻みつけた次第。KIRIHITO、U.G MAN、ECD、MERZBOW、そしてSxOxB。こんな贅沢すぎる面子が一同に顔を揃えるなんて!5年に一度、いや10年に一度あるかないかの名ブッキングである。こんなイベントを企画するだけで、もう既に「INDIES ISSUE」は、自分の中の雑誌ヒエラルキーの上位に食い込んだ。

 まずはKIRIHITO。もうかれこれ8年ぐらい、コンスタントにライブを見続けている数少ないバンドのうちの一つである。何度見ても全く飽きることがないというのが、自分でも不思議なほど。高円寺のライブハウス・20000Vの店長でもある早川氏によるスタンディング・ドラムと、GROUPのメンバーとしても活動中の竹久氏による足踏みカシオトーン&ギターという、恐らく世界を見渡しても同じスタイルをとるバンドは一つもないであろう、編成だけで既にカオティックなバンドだ。

 「おや?」と思うほど静かなトーンで始まったKIRIHITOのライブだが、幕が上がると既に彼らの世界は出来上がっていた。早川氏のドラムは、今にも血しぶきが吹き上がりそうなほどその体を打ち震わせ、竹久氏の高音/低音、日本語/英語が入り乱れた何とも形容し難い魅力を持つヴォイスと、グニャグニャと変幻自在の捻じ曲がった空気を生み出すギターが、まるで宇宙圏外に放り出されたかのような錯覚を与える。規格から大きく外れ、余りにも自由奔放にその触手を伸ばすそのサウンドと、己の意識とのズレが生み出す、痒いところに手が届きそうで届かないみたいな、一寸マゾヒスティックな感情がもたらす眩暈にも似た陶酔感に、気が付くとどっぷりと浸りきっていた。

 2番手は「ハードコア界にこのバンドあり」と呼称されている(と思う)UG.MAN。VOLUME DEALERSやGOD'S GUTSのメンバーも在籍し、やはりこのバンドも世界に2つとないストレンジなサウンドを放出している。ステージにはフードをすっぽりと頭からかぶり、SMの女王様のような仮面(金色ラメ)でキメたVOCALの河南氏。乱打されるリズムや掻き鳴らされる轟音の洪水の中で、不穏な絶叫が響き渡る。活動歴はかなり長いはずなのにその辺の若手バンドとタメ張れるようなフットワークの軽さ、サウンドのキレの良さ、そしてバンドが放出する甘酸っぱい空気に、思わず平伏してしまう。

 私が初めてUG.MANのLIVEを見たのは、8年ほど前のいわゆる「鹿コア」ブーム全盛の頃。得体の知れない「どうしてここまでやれるのか?」と疑問が沸かんばかりのパフォーマンスと、「でも、やるんだよ!」とばかりに己の恥部をとことんまで晒して、なおかつ楽しんでる、しかもいい歳こいた大人が!っていう絵ヅラがすごくショックだったのだけれど、その印象が現在となっても全く変化してない。そのうえ何故かサウンドとバンドが醸し出す淫靡度に拍車がかかっている気すらする。活動歴を重ねれば重ねるほどどんどん若返っていくような、驚異的な進化の道程を目撃できて満足。解散することなく絶対にこのまま続けて欲しいと心から願ってやまない。

 ライブ中盤にして、トリのような風格の漂う人物の登場。孤高の道を、拳を挙げて突き進むラッパー・ECDである。私が初めて彼のCDを聴いたのが1stアルバムがリリースされた1992年で、初めてLIVEを見たのがついこの間、2003年の春。その11年の時を埋めるかのように、その後彼の出演する殆どのLIVEに足を運んでしまった。初めてLIVEを見たとき、脳天を思いっ切り鉄槌でかち割られるかのようなショックを受けたのだ。久しぶりにヤバいもの見た、と思った。その衝撃はLIVEに行く度、度合いを増していく。ターンテーブリスト・ILLISHIT TSUBOIとともにステージに登場したこの日のECDのLIVEは、"言うこと聞くよな奴らじゃないぞ"から始まった。サンプラーを叩きながら、前方を見つめデモのために作られたこの曲を投げつける。「FUCK」「人殺し」「反戦・反弾圧・反石原」など、アナーキーな単語連発のこの曲。聴くたびに胸が熱くなる。好きなラッパーは何人か居るけど、これほどまでそのリリックが濃密に自分の頭に入り込んだことは、ECD以外に今までになかった。

「殺すな!」と声高らに連呼するECDと、それに呼応するかのように前傾姿勢で激しくレコードを擦り続けるILLISHIT TSUBOI。この日は他にも"ROCK IN MY POCKET"や"貧者の行進"など、生で聴くと失禁寸前のナンバーをプレイ。TSUBOI氏のプレイも興に乗り、遂にはレコードを叩き割るという暴挙に!ちなみにこの人は過去に、ターンテーブルを破壊→トーンアームだけでノイズを作り出し、そこにECDがラップを乗っけるという、スリリングにも程がある即興プレイも行っている。終盤での圧巻のインプロヴィゼーション"RUDE BOY SUTRA"では、レコードから鳴り響く強烈にディストーションがかかったヴォイスのうえに、ECDの呻き声を振り絞るようなSAXが覆い被さり、まるで燃え盛った炎を鎮火するかのように、じわじわとその場に浸潤していくのが感じられた。そして最後は「外へ遊びに行ってきま〜す」という曲頭のサンプリングが印象的な"大脱走"で幕を閉じた。真の意味で路上に根ざすラッパー、ECD。その懐は余りにでかく拳は強固、そして足取りは誰よりも軽い。

 秋田昌美によるMERZBOWの登場に、会場は沸き立つ。かなりの注目度のようだ。私はと言えば、その時点でかなりの疲労感を催していたこともあり、ノイズは真剣に聴くほどのもんじゃないしなぁ…なんてかんじで後ろの方で見てたのだが、MERZBOWの予想を遥かに上回る圧倒的な音の濁流に、あっさりと飲み込まれてしまった。ともすれば足が地面にくっついているのさえ不安になるような意識のよろめきを感じながら、一方でははっきりと覚醒している自分も居る。破壊、雑音、金属的などいわゆるノイズ・ミュージックにつきまとう単語の類は、不思議と思い浮かばなかった。寧ろ轟音の中にも繊細さや土着感をも嗅ぎ取れてしまう、通り一辺倒じゃない音のうねりに心地良さすら覚えてしまった。この凄まじいサウンドが、たった一台のラップトップで生み出されていたとは到底信じ難い。

 そしてトリはSxOxB。TOTTSUANの死、NAOTOの加入&脱退などを経てなおその人気は衰えることなく、むしろより拡大しているかのようだ。私はNAOTO時代のSxOxBしか見たことがかったけど、新ヴォーカリスト・Etsushiの咆哮からは、前代・前々代のカリスマ・ヴォーカリストをも凌駕するかのような力強さを感じた。以前はどことなくシリアスな雰囲気が漂っていたような気がするサウンドも、この日見たLIVEではそれが払拭され、オーディエンスなどおかまいなしに飄々と、自分たちの演りたい音を疾風迅雷のごとく吐き出していたような印象を持った。「世界最高速」と呼ばれていたSxOxBだけど、やっぱり「高速」じゃなくて「光速」なんだなぁと改めて実感。ハードコア、グラインド・コア、デス・メタなどをごった煮にした、一筋縄でいかないエクストリーム・サウンドにただただ圧倒されてしまった。

 「オルタナティブ」という言葉がもはや形骸化してしまった現在において、この日の出演者達は偏狭な価値基準ではとても太刀打ちできない、唯一無二のサウンドとヴァイブスを激しく噴出させていた。万人受けはしないだろうが、まさしく真の意味でのオルタナティブなアーティストと言えよう。ちなみにこの模様はDVD化されるらしいので「indies issue」は必買!
report by uko

buttonmag files :


The official site of KIRIHITO

unknown

*HAYAKAWA, drummer of KRIHITO

KIRIHITO works ;
チューニング・ショック
suicidal noice
DOKURO
DA.VI.DE.BO

The official site of UG.MAN

unknown

UG.MAN works :
"シンデレラ" (compilation 1 track)

The official site of ECD

http://www.avexnet.or.jp/ecd/

ECD works :
"ECD/MASTER (CCCD)"
"BIG YOUTH (CCCD)"
"SEASON OFF"
"スリル・オブ・イット・オール"
"MELTING POT(メルティング・ポット)"
"ECDのリミクスィーズ(1)" (MAXI)
"ホームシック"他多数


MERZBOX works :
"MERZBOX" (完全生産限定50枚組BOXセット)
"Last of the Analogue Sessions" (UK import)
"Alec Empire vs. Merzbow : Live at the Cbgb's NYC" (UK import)
"Merzbow/Pan sonic : V" (US import)
"Merzbow/Jazzkammer : Live at Molde International" (UK import)
"Dharma" (US import)
"Live Magnetism" (UK import)他いっぱい


The official site of SxOxB

unknown

SxOxB works :
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