MOGWAI @ Shibuya AX (5th November '03)
スチュワートに敬意を表して
轟音で思い出すのは、92年のジーザス&メリーチェインの来日のときで、キーンとした音が2日くらい耳から取れなかった。そして10年以上経って渋谷のAXである。前座のenvyは、ヴォーカリストのデス声を掻き消すようなギターノイズが会場を満たす。マイナーコードを基本に哀愁を帯びた感触はシューゲーザー華やかなりしころのスローダイヴ(知ってます?)を思い出した。ブッシュの演説をサンプリングしたりという批評精神を持ちつつ、最後に残るのは、音の圧力のすさまじさとギターの残響音だった。 |
そしてモグワイ。セットチェンジの間、ローディが神経質そうにギターやベースをチェックして20〜30分は待っただろうか。まずは"Yes! I Am A Long Way From Home"で肩慣らしという感じ。そして"YOU DON'T KNOW JESUS"で鳴らされた轟音に歓声が上がる。渋谷AX全体もビリビリ振動している。その轟音の渦の中にいると、ギターやベースやそれらのアンプだけでなく、PAシステムも会場そのものも、音を発するもの全てがモグワイの楽器として鳴り響いていると感じるのだ。これは耳で聴くものでなく体全体で体験するものだ。
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モグワイの曲はどれもこれも似たような構成で、とろけるようなベースの音で始まるか、洞窟の水の滴りのようなギターのアルぺジオか、キーボードの白玉で始まるかの違いであり、たまにヴォコーダーを通したヴォーカルが聞こえてくることもあるくらいなんだけども、それは轟音に至るまでのプロセスを手を変え品を変えてお客さんと作り上げているのだ。同じ構成であるがゆえに、長い間熟成された酒のように彼らにしか出せない味わいになっている。 |
アンコールは、まず"Christmas Steps"。轟音が銀色の紙吹雪みたいにキラキラした音になって天井から降ってくるようだ。ラスト"Mogwai Fear Satan"の静から動へ、スイッチが入ったように最後の轟音が鳴らされた瞬間、そして照明が轟音と完璧にシンクロしてステージが最大限に明るくなった瞬間、この日、何度目かの鳥肌が立っていた。ギターのノイズによって、弦の振動、エフェクターがそれを増幅し、アンプが鳴り、PAシステムが会場全体を震わせ、フロアから歓声があがる・・・と、さまざまなものが混ざりあい、音楽とそうでないものとの区別がつかなくなったところ、そこがモグワイの目指す地点なんだろう。そこはあらゆる対立点が消え、気持ちいい空間だけがそこにあったのだ。
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ライヴが終わって帰路につくとき、耳鳴りがこびりつくこともなく、スッと消えた。だけども鳥肌がたった瞬間のことは覚えている。モグワイは耳に優しい轟音というべきか。92年のジーザス&メリーチェインもこの日のモグワイもどちらも代え難い体験だった。耳に残るか体に残るか、10年の時を経てギターノイズも進化したということなのだろうか。 |
-- set list -- (原文のまま)
(小さい文字で)toyko 1
LONG WAY
JESUS
HUNTED
HELICON 2
FLIES
I KNOW
HAPPINESS
HELICON 1
2 RIGHTS
RATTS
XMAS STEPS
SATAN
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 report by nob and photo by keco |
関連files :
photo report : (03/11/6 @ Shibuya AX) : photo by maikokko
photo report : (03/11/5 @ Shibuya AX) : photo by keco
スチュワートに敬意を表して : (03/11/5 @ Shibuya AX) : review by nob, photo by koco
photo report : (03/11/10 @ On Air Osaka) : photo by ikesan
illustration report : (03/11/11 @ Nagoya Bottom Line) : illustrated by chika
no title (01/4/25 @ Akasaka Blitz) : review by nob, photo by nishioka
ロックの"先"に見えたもの (01/4/28 @ Osaka Big Cat) : review by ken, photo by ikesan
圧倒的な轟音の緊張感 (01/4/28 @ Osaka Big Cat) : review by ikuyo, photo by ikesan |
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