| チバが発した「ハロー!」の呼びかけに、全員で応える。いつまでもやまない歓声に被さって、初期ナンバー『ストロベリー・ガーデン』のリフが鳴らされた。自然に沸き起こる手拍子は、解散の悲しさをいとも簡単に叩き潰していった。次は一変してミッシェルがもっとも黒かった時代の曲がニ連発。『アッシュ』で不穏な空気を漂わせ、暴動に備えろ、と警告を発する。クハラのヴォーカルがよせてはかえす『フリー・デビル・ジャム』では固く握りしめた拳がそこらじゅうで振り回されている。武闘派ロックンロールはガソリンの香り。再び満タンになったところで『デッドマンズ・ギャラクシー・デイズ』デッド、とついたら舞台は宇宙だ。「銀河を突き抜けて 宇宙を手にいれろ」なんて‥ミッシェルガンならすでに手中にあるはずだ。おそらくこれは私達に与えられた命題なのだろう。 |
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続く『I was walkin'&sleepin'』、『ブラック・タンバリン』はいずれも初期ナンバーで、スネアが跳ね回るゴキゲンな曲であり、スーツが最も映える曲だ。見事に我々を六十年代後半のイギリス、カーナビー・ストリートへと連れていってくれた。『深く潜れ』ではウエノのベースラインが脇腹へと低く重いブローを放ち、レバーを突き上げる。悲鳴をあげながら誰もが自らすすんでサンドバッグとなっていく。終盤クハラがけしかけ、つんのめった展開へ持ちこむと、再びボコボコとあぶくのようにダイブが沸き起こる。 『カルチャー』でチバのがなり声にむせ返って、『ブギー』でカラカラ鳴いた。歌詞の通りに操られた時に己の無力さをあらためて知った。でも、気持ちいいからそれでいい。『赤毛のケリー』では一面ワインレッドに染まる。テレキャスターが先行し、やがて四つの音が合わさって体を貫いた。ダイナミックに、繊細に、悲しみにも似たベルベットの感触は、どこかに吹き飛んだはずの解散のニ文字を思いださせて、心を乱していった。『ゴッド・ジャズ・タイム』という名のロックンロールはしきりに重く鋭いパンチを繰り出して「感傷に浸るなよ」と言っていた、少なくとも私はそう感じたのだが‥。 |
| 頭上に漂う霧までもが確信に触れたことを察知し、震えた。同日発売のラストシングル『エレクトリック・サーカス』が塞がりかけた傷口をこじ開ける。耐えきれずに四人から目をそらしたとしてもスクリーンがある。私たちは見届けなければならなかった。息をすることすら放棄して、ひたすら深みへと潜り一瞬一瞬を脳裏に焼きつける。「澄みきった色の その先に散る エレクトリック・サーカス その先に行く」その先がどこを指しているのか、輪郭すらわからない。「夜になれば 花は咲く」が最後にはめ込まれ、そこに言い切れなかった思いを感じ、いったい私たちは何をすればいいのかとひとしきりうろたえた。 report by taiki photo by hanasan |
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