BACK DROP BOMB @ ZEPP TOKYO (5th OCT '03)
お台場の風景を見ているとホッとする。レインボーブリッジを渡るときに、フジテレビや観覧車が見えてきて妙にワクワクする気持ちと共に、ガランとした空き地には理想を断念してしまった味気ない感じがある。その2つの感触は土地に根差した生活がない東京の郊外で生まれ育った自分にとって何故かしっくりくる。
バック・ドロップ・ボムは最も日本人らしいバンドである、と書いてもピンとこないかも知れない。歌詞は英語だし、和風なメロディがあるわけではないし、日本の伝統的な楽器を使っているわけでもない。ラウドでハードでヘヴィな音の中に、ヒップホップ、テクノ、ボサノバなどいろんなジャンルを吸収して溶け込ませている。そんな彼らがどうして日本人らしいのか?
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ライヴ中にふと思ったんだけど、70年代にハードロックを、80年代にヘヴィメタルを聴くような少年が今の時代の少年なら、このバンドを聴いているんじゃないかと思った。ハードでヘヴィな音が欲しい人や、音楽でガツンとやられたい人は、マッドカプセル・マーケッツとかこのバンドを聴くと思う。だけど、エアジャム系だし、早弾きギターソロはないし、いろんな音楽を取り入るスタイルなので、伝統を重視するハードロック/ヘビーメタルのマニアからは認められないだろうと思う。しかし、もちろん彼らはそんなマニアのために音楽をやっているわけではない。
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バック・ドロップ・ボムのライヴは始めから終わりまでフロアの大きな歓声に包まれ、盛り上がりまくっていた。自分の周りもモッシュまでにはならないけど、腕を上げ叫び歌い、踊りまくる人に囲まれていた。バック・ドロップ・ボムが出すの会場を圧する大音響を浴びて、お客さんがさらにエネルギーを返していた。いつものように曲と曲の間は、テクノ〜エレクトロニカなSEでつないでいって本編ではMCは無し。話したのは最後に「ありがとうございました」と最後の曲の紹介だけだった。
ルーツにこだわらずにいろんなジャンルを吸収するバック・ドロップ・ボムこそ、日本人らしい、本当の日本の伝統に忠実なバンドなのである。「日本の伝統」って古いものを大事にすることでなくて、外国からいろんなものを取り入れて、自分のものにしてしまう行為こそ、中国から漢字や仏教を取り入れた大昔からウオークマンやアニメやゲームの現在まで日本人の特技であって、そもそも「古い建物とかは大事に保存しなくちゃいけない」という価値観自体は明治時代にヨーロッパから輸入されたものだし、バック・ドロップ・ボムは本来の日本の伝統を受け継いでいるのである。
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本編の最後に向けて盛り上がっていく中、ハードでかつトランシーで狂ったように踊り、騒ぐ人がたくさんいた。根っこの無い者同士がつながるのは音楽しかないんだという強迫的ともいえるメッセージを、目に耳に体に注ぎ込むような迫力があった。そんなバック・ドロップ・ボムの音楽はお台場の風景に似ている(新しいアルバムのジャケットは近未来風の銀座だけど)。そして、それはワクワクするような楽しさと、根を持たないことの味気なさを同時に感じさせる。それが自分にとって心地いいのだ。
report by nob and photo by saya38
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