button TELEVISION @ Shibuya AX (25th Sept '03)

-- 印象派 --TELEVISION

 外は雨。普段ならどうにも気が滅入ってしまうが、彼らにはふさわしい天気だと感じ、まったく気にならない。この日渋谷AXに足を向けた人間は、テレヴィジョンのギターの音色が潤んでいることぐらい知っている。

 客層はニ十代から四十代半ばぐらいで、スーツを肩に掛けたおっさんもちらほら。彼らはかつてニューヨーク・パンクとCBGBに憧れた少年達だと「勝手に」決めつけ、昔の姿を想像し変わりようを密かに楽しむ。
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 そうこうしているうちに会場は暗転し、観客が声をあげる。それをまったく気にせずに、ゆらりゆらりとテレヴィジョンの面々が現われ、持ち場につくやいなや黙々とチューニングにいそしむ。これが長いんだ、長過ぎていつ演奏が始まったのかわからなかった。私だけじゃない、会場内の誰もが騙されていた。一弦のEからB、G、D、A、六弦のEまでを順番に弾いていただけのはずが、いつの間にかヒ−リング・ミュージック風のセッションにすりかわっていて、心地よいグルーヴを生み出していた。観客は考える暇を奪われ、流れにまかせて漂うしか術はなかった。とんでもない裏切りが行われた瞬間に、その場にいれたことが無性に嬉しい。
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 ただ、面白いことに観客に思考を取り戻させたのもまた、チューニングだった。曲が変わるごとに行われるこの儀式は「次は何だろう?」と思わせるには十分すぎてたまらない。

 テンポを速めればストロークス信者も取り込める『VENUS』、トム・ヴァ−ライン のヴォーカルが危うい『SEE NO EVIL』や『FRICTION』といった1stアルバム『MARQEE MOON』からの曲は、やはり胸を熱くさせるが、それ以外の曲はカオスに満ちたイントロに始まって、美しいメロディに落ち着いていく展開が多く見うけられた。ライブが進行するにつれて、ある疑問が頭をもたげてきた。本当にこれはパンクなのか? プログレではないのか? 正常と異常の間を彷徨うトムのヴォーカルを聞くうちに、1stのジャケットに見られる生気のない写真までも思い浮かべてしまい、後者をさらに後押しした。

 最後はもちろん『MARQEE MOON』でシメ。山あり谷あり、この曲の構成がそのまま今回のライブをあらわしていた。
report by taiki and photo by ryota

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